2018年に注目すべき世界の8つの脅威

金正恩氏

KCNA via Reuters

2017年は、世界の安全保障問題に関するさまざまな予測が現実になった1年だった。

年末に差し掛かり、2018年は何が起こるのだろうと考えている人も多いだろう。

アメリカのシンクタンク「外交問題評議会(CFR)」は先週、2018年に注目すべき世界の主な脅威を公表した

このリストを作成するにあたり、CFRは専門家30人を対象に、2018年に発生もしくは激化しそうな紛争をランキング形式で尋ねた。その中で、最も注目を集めたのが、以下の8つのリスクだ。その多くにアメリカが関係している。

来年もトランプ大統領の外交手腕が問われそうだ。


アメリカ、北朝鮮、その他の周辺国が関係する武力紛争

朝鮮人民軍

朝鮮人民軍の創設85周年を祝う軍事演習。

Reuters

予想通り、リストのトップは北朝鮮だ。

金正恩氏にそのミサイル計画をあきらめる様子は見られない。発射実験はますます大胆さを増し、強い言葉で全面戦争を警告する。朝鮮半島の緊張がこれほど高まるのは、恐らく1950年代以来初めてのことだろう。

イランと、アメリカ及びその同盟国の武力対立

イラン軍

イラン・イラク戦争の記念式典で行進するイラン軍(2011年9月22日、テヘラン)。

Reuters

CFRは、イランによる地域紛争への関与、イエメンのフーシ派やレバノンのヒズボラといった武装組織への支援が、対立の原因になり得るとしている。

最近ではトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めると述べた後、イランは「抵抗組織」を支援する考えを示しており、イランとの対立はこれまでになく深まっているようだ。

アメリカの主要インフラやネットワークを狙ったサイバー攻撃

米軍のサイバーチーム

テキサス州サンアントニオにある、ラックランド空軍基地に置かれたオペレーションセンター。

US Air Force photo by William Belcher

CFRは当然ながら、アメリカに対するサイバー攻撃に最大の注意を払うべきだと述べている。

2017年には、世界中の政府機関や銀行、軍事施設などが、イラン北朝鮮ロシアのサイバー攻撃の標的となった。アメリカの国家安全保障局(NSA)への攻撃も目立ち、サイバー攻撃は来年も注目すべき脅威と言えそうだ。

NATO加盟国とロシアの軍事的対立

ロシアの軍事パレード

ロシアの軍事パレードに登場した、中長距地対空ミサイルシステムS-400(2015年5月9日、モスクワ)。

Reuters

NATO加盟国とロシア間の軍事的対立は、意図的かどうかに関わらず、解消されたことがない。

2017年だけを見ても、ロシアは未承認の南オセチアの国境を密かにかつ違法に拡大し、死者1万人以上を出しているウクライナのドンバス地域の内戦を支援し続けている

これらの国はNATO加盟国ではないが、シリアがロシア軍最大の焦点でなくなった今、ロシアが東ヨーロッパに触手を伸ばすのは時間の問題だと見る声もある。

南シナ海の領有権問題をめぐる武力衝突

抗議集会

フィリピンのマニラにある中国領事館の前で、抗議活動をする学生たち。

Reuters

南シナ海の緊張は、高い状態が続くだろう。

CFRは、中国と、その領有権を争うブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムなどとの対立は、無視できるものではないと言う。

中国は近年、台湾に対する行動発言を強めており、日本もこれを懸念している。

アメリカとその同盟国における、多くの犠牲者を伴うテロ攻撃

悲しむ遺族

アメリカのフロリダ州オーランドで発生した銃乱射事件で亡くなった兄弟を悼む遺族(2016年6月20日)。

REUTERS/Carlo Allegri

こうしたタイプの攻撃は今年、特にヨーロッパで頻発した。アメリカでも、複数のテロ攻撃が発生している。

CFRは、テロリストは外国人の可能性もあれば、地元出身者である可能性もあると言う。特定のイデオロギーに賛同しているものの、テロ組織とはつながりのない者が実行するローンウルフ(一匹狼)スタイルの攻撃にも、注意すべきと見ている。

直近では、ニューヨーク市で今月、パイプ爆弾を使った爆発事件が起きている。

シリア内戦の激化

握手をするシリアのアサド大統領とロシアのプーチン大統領

ロシアのプーチン大統領を歓迎するシリアのアサド大統領(2017年12月11日、シリアのフメイミム空軍基地)。

Associated Press

ISIS(イスラム国)がその勢力圏をほぼ全て失ったことで、シリア内戦は終わりに近づいているように見える。だが、ISISとの戦いは、死亡者数十万人を出したこの内戦の一部でしかないことを覚えておかなければならない。

CFRは、アメリカ、ロシア、イランを含む内戦の外部関係者の間で、高い緊張状態が続いていると指摘する。

シリア軍が国内の他の地域で反政府組織を叩いたときに何が起こるのか、シリア政府がアメリカの支援するシリア民主軍にどう対応するのかは分からず、アメリカの反応が新たな火種となる可能性もある。

アフガニスタンの不安定化

アフガニスタンの特殊部隊

ヘルマンド州のキャンプ・ショラブ(Shorab)で訓練をする、アフガニスタンの特殊部隊(2017年8月27日)。

AP Photo/Massoud Hossaini

CFRは、反乱活動を強化するタリバンと、アフガニスタン政府の崩壊の可能性を特に懸念している。ISISもアフガニスタン国内での活動をアピールしている

こうした動きを受けて、トランプ政権はアフガニスタンの駐留米軍の数を数千人規模で増やしている

その努力が実るか、アフガニスタン政府の崩壊を先延ばしにするだけかは、時が経てば分かる。

[原文:The 8 biggest global threats to watch in 2018

(翻訳/編集:山口佳美)

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