太陽系外惑星のイメージ画像。
ESO/NASA
- NASAはGoogleの協力を得て、太陽に似た恒星の周りを公転するい2つの新しい惑星を発見した。
- そのうちの1つ、ケプラー90i(Kepler 90i)は、恒星ケプラー90の周りを公転する8つ目の惑星として発見された。つまりケプラー90には、太陽系と同じ8つの惑星があることが判明した。
- 探査機ケプラーが集めた太陽系外惑星のデータを研究する天文学者らは、GoogleのAIを使って、新しい惑星を発見した。
NASAとGoogleは12月14日(現地時間)、「大きな発見」について発表した。別の太陽系が8つの惑星を持っていることが判明したのだ。
ケプラー90と呼ばれる恒星と、その周りを公転する7つの惑星については、すでに把握されていた。だが、Googleが開発した新たなAIソフトウエアを使って、学者らは古いデータに埋もれていた8つ目の惑星、ケプラー90iを発見した。
ケプラー90iは、高温の岩石惑星と考えられ、地球から2545光年離れた、恒星ケプラー90の周りを公転している。GoogleのAIは機械学習によって、探査機ケプラーが収集してきたデータをふるい分け、8つ目の惑星を発見した。探査機ケプラーは、過去数年間、宇宙望遠鏡で15万個の恒星を観測し、遠く離れた未知の惑星を探し続けきた。
ケプラー90iは恒星ケプラーの第3惑星(内側から3番目の惑星)で、14日間でケプラーの周りを1周する。ケプラー90iの地表は極めて高温で、生命が存在する可能性は低い。
「ケプラー90iは、行ってみたいと思える場所ではない」と今回の発見に携わったテキサス大学の天文学者アンドリュー・ヴァンダーバーグ(Andrew Vanderburg)氏は記者発表で述べた。
太陽系とケプラー90惑星系の比較。下が太陽系。
NASA/Ames Research Center/Wendy Stenzel
ヴァンドバーグ氏に協力したGoogleのソフトウエアエンジニア、クリストファー・シャリュー(Christopher Shallue)氏は、天文学者らはこれまでに、探査機ケプラーが収集したデータのうち、3万5000の強い信号については精査してきたが、脆弱で信頼性の低い信号は除外してきたと語った。
それらの脆弱な信号をGoogleのAIは分析した。そして、ケプラー90iを発見した。
「我々が開発したものは、天文学者のさらなる発見を手助けするツールだと考えている」とシャリュー氏は述べた。
ヴァンドバーグ氏とシャリュー氏は、もう1つ、新しい惑星を発見している。ケプラー80g(Kepler-80g)だ。ケプラー80惑星系は、生命の存在が期待されるトラピスト1惑星系(Trappist-1 system)と似ている。
AIを使った今回の分析以前、NASAは探査機ケプラーによる2回の探査ミッションによって収集されたデータを調査し、4000以上の候補の中から、219個の惑星を発見した。NASAが探査機ケプラーのデータから見つけた惑星の数は、トータルで2525個となった。そのうち10個は地球と同じサイズの岩石惑星と考えられ、地球外生命が存在する可能性がある。
NASAは未知の惑星を、いかにしてググったのか
新しい惑星を発見するために、ヴァンドバーグ氏とシャリュー氏は、すでに天文学者が分析済みのデータをGoogleのAIに読み込ませた。約1万5000件のデータについて、「これは惑星」「これは惑星ではない」という分類を行った。
GoogleのAIは、人間の脳の情報処理を模したソフトウエアを使って、惑星の分類を自己学習した。いわゆる畳み込みニューラルネットワーク(convolutional newral network)と呼ばれるシステムだ。
シャリュー氏は、この新しいシステムにまだ良い名称はないが、Googleが開発した画像内の動物を判別するシステムに良く似ているとBusiness Insiderに語った。
NASAとGoogleは、この新たな技術は将来、天文学者がさらなる太陽系外惑星を発見する手助けとなるだろうと語った。今回、AIが調査した惑星系はわずか670。だがケプラー宇宙望遠鏡は15万の惑星系を観測済みだ。
ヴァンドバーグ氏は、ケプラー90の周りにはまだ未知の惑星が存在すると考えている。
「もし、8個で全てだとすれば、むしろ驚きだ」とヴァンドバーグ氏は語った。「太陽系のように、8つの惑星を持つ恒星は本当に特別な存在なのだろうか? おそらく、もっと多くの惑星を持つ恒星があるだろう。太陽系は宇宙では普通の存在と分かるはずだ」
AI天文学の時代が到来
TESSミッションのイメージ画像。
NASA's Goddard Space Flight Center
GoogleのAIは天文学者に取って替わるのだろうか? NASAはその心配はないと語る。
NASAエイムズ研究センターでケプラー計画に携わる科学者ジェシー・ドットソン(Jessie Dotson)氏は、ニューラルネットワークにデータを投入する前に、天文学者によるデータの分類が必須となると語った。このプロセスを経て初めて、AIは新しいデータを分析する方法を学習し得る。
「天文学者がいて、はじめて機能するものだ」とドットソン氏。
「このピース(天文学者)を取り除くことはできない」
今回の調査に参加していないマサチューセッツ工科大学の惑星科学者サラ・シーガー(Sara Seager)氏は、今回の分析に足りないものがあるとすれば、アルゴリズムが十分に機能するための分類済みのデータが少ないと語った。
「研究チームがAIの自己学習のために使った探査機ケプラーのデータは、何年もかかけて精査されたのち、自動判別のレベルに達した」とシーガー氏はBusiness Insidereに語った。
「また実際は、人間がすべてのデータをチェックしなければならないでしょう。何を探しているかが分かっていなければ、何も見つけることはできません」
だが太陽系外惑星のデータも増え続ける。
シーガー氏は、NASAの次世代宇宙船による太陽系外惑星探査、いわゆるTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)ミッションに携わっている。太陽系外惑星を探査するために、夜空に輝く星のうち最も明るい20万の星を観測し、ケプラーの探査データを補完することが目的。最短で2018年3月に打ち上げられる予定だ。
[原文:NASA has Googled the stars — and found new rocky planets in a 'major discovery']
(翻訳:忍足 亜輝/編集:増田隆幸)