Adrain Chesser
- 写真家アドレイン・チェッサー(Adrain Chesser)は、現代に生きる狩猟採集民を10年近く追っている。
- 彼らは主にネバダ州、ユタ州、オレゴン州、カリフォルニア州にまたがるエリア「グレートベースン(Great Basin)」に暮らしている。
- 彼らは季節に応じて移動し、季節に応じた食料を得る。だがFacebookやブログなど現代社会とのつながりも保っている。
2007年、母親が亡くなり、つらい時期を過ごしていた写真家アドレイン・チェッサーはネイティブ・アメリカンの伝統儀式「ナラヤ(Naraya)」を訪れた。
チェッサーはそこで、フィニシア・メドラーノ(Finisia Medrano)、J.P. ハートソング(J.P. Hartsong)と知り合った。2人ともネバダ州、ユタ州、オレゴン州、カリフォルニア州にまたがるエリア「グレートベースン」で狩猟採集をしながら暮らしていた。
「野性的で自由な生活を送っていると聞き、衝撃を受けた」とチェッサー。
チェッサーは、シアトルから引っ越し、2人のもとを定期的に訪れるようになった。2人は同じように自然の中で自由な生活を送りたいと望む人々とグループを作り始めていた。間もなくチェッサーは、2人を含む現代の狩猟採集民と行動をともにし、撮影を始めた。期間は6年におよんだ。この経験が自分の人生を変えたと彼は語った。
チェッサーは、ネイティブ・アメリカンの儀式の研究者ティモシー・ホワイト・イーグル(Timothy White Eagle)の協力を得て、その経験を写真集『The Return』にまとめた。彼がBusiness Insiderに提供してくれた写真から、いくつか紹介しよう。他の作品は写真集、または彼のウェブサイトで見ることができる。
フィニシア・メドラーノとJ.P. ハートソングはグループのメンバーとともに、季節ごとに移動しながら暮らしている。
Adrain Chesser
自らをコヨーテ・キャンプ(Coyote Camp)と呼ぶこのグループは、数世紀におよぶ歴史を持つネイティブ・アメリカンがたどったルートを旅する。ルートは、その形から「ザ・フープ(The Hoop、輪)」として知られ、アイダホ州、ネバダ州、カリフォルニア州、オレゴン州を通っている。
Adrain Chesser
彼らは、昔からその土地で採れる食べ物の収穫時期に合わせて移動する。春と夏にはブレッドルート(breadroot)、カマス・ルート(Camas root)、ビタールート(Bitterroot)などの根を、夏の終わりにはベリー類を、秋にはどんぐりを採集する。
Adrain Chesser
キャンプを率いるフィニシア・メドラーノは、トランスジェンダーの女性。グレートベースンに住むネイティブ・アメリカン、ショショーニ(Shoshone)族の長老から大地と調和して暮らす方法を教わった。
フィニシア・メドラーノ。
Adrain Chesser
メンバーの多くは思いのままにグループに出入りしているが、J.P. ハートソングは、ほぼ常にグループと行動をともにしている。
J.P. ハートソング。
Adrain Chesser
コヨーテ・キャンプのメンバーは、馬か幌馬車に乗って移動する。
Adrain Chesser
彼らは地球と調和して暮らすための信条をいくつか掲げている。「地球とは共生関係にある」とチェッサー。
Adrain Chesser
最も大切な信条は、大地から「得るよりも多くを与える」。例えば、大地にまた新しい種が芽吹くことを確認してから収穫する。収穫と同時に、種をまく。
Adrain Chesser
彼らが暮らす土地には、国立公園や土地管理局(BLM)が管理する土地、所有者が滞在を許可した私有地が含まれる。写真は、土地管理局が管理するヴァージン・マウンテンズ山脈で撮影。
Adrain Chesser
ときには警官や自然保護官に退去を求められることもある。衝突を避け、素直に移動する。
Adrain Chesser
旅の途中で、モイラ(Moira)とレイ(Ray)という別のグループと出会った。
Adrain Chesser
モイラとレイは、ミルクと肉を与えてくれて旅の道連れにもなるヤギの群れを連れている。収穫期にはコヨーテ・キャンプとしばしば、労働と自然の恵みを分かち合う。
Adrain Chesser
コヨーテ・キャンプは狩猟採集生活をしているが孤立主義者ではないとチェッサー。メンバーの多くはFacebookやブログを使っている。
Adrain Chesser
メンバーは信条に沿って暮らそうとしているが、外の世界から物を買うことも少なくない。アルコールやたばこがやめられないのだ。「そのことが彼らを苦しめている。望んでいる暮らし方と矛盾しているから」とチェッサー氏は語った。
Adrain Chesser
グレートベースンでの暮らしはハードだが、コヨーテ・キャンプのメンバーはやむを得ずここにいるわけではないとチェッサー。「彼らはこのライフスタイルを選んだ。なぜなら現代的な暮らしよりも、もっと地球と調和して暮らしたいから」
Adrain Chesser
(敬称略)
[原文:Meet the contemporary hunter-gatherers who live off the land in the American west]
(翻訳:忍足 亜輝/編集:山口 玲子)