Chris Weller/Business Insider
世界11カ国で利用されているモバイル決済サービス「M-Pesa」は、利用者約3000万人のお金との関わり方を変えつつある。
ケニアでは、M-Pesaを利用して、数十万人が貧困を脱した。
「Pesa」は、スワヒリ語で「お金」という意味。ケニアのサービスプロバイダー、サファリコム(Safaricom)は10年前、東アフリカの国向けにM-Pesaの提供を開始。以来、対象地域に暮らす数え切れないほど多くの人々が、少額を送金できるこのモバイル決済サービスを利用している。
そしてこのサービスは、ベーシックインカムの社会実験にも活用されている。
M-Pesaが実際どのように利用されているのか、見てみよう。
チャリティー団体GiveDirectlyは、M-Pesaを使って受給者の携帯電話に直接入金している。アグリッパ・アギダ・オニウェロ・クリスポ(Agrippa Agida Onywero Krispo)氏も、こうした受給者の1人だ。
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40歳のクリスポ氏は、GiveDirectlyが行うベーシックインカムの検証実験に参加している。ベーシックインカムは、人々に無条件で一定額を支給する富の分配システム。
受け取ったお金の使い道は自由だ。クリスポ氏や他の村人たちは、2016年10月から毎月22ドル(約2500円)を受け取っており、2028年10月まで支給される。
M-Pesaの仕組みは、ペイパル(PayPal)やベンモー(Venmo)といった他の決済サービスと似ているが、スマートフォンや銀行口座は必要ない。GiveDirectlyが受給者の携帯電話に直接、月々の支給額を入金すると、受給者はアプリを使って引き出し、預金、送金ができる。
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GiveDirectlyからの入金(毎月5日~7日)があると、携帯電話を2、3回タップするだけで通知を確認できる。
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この画面でM-Pesaアカウントへの入金を確認できる。
周辺のさまざまな場所にM-Pesaのスタンドが設置されていて、取り次ぎのスタッフが処理を行っている。スタンドは人力のATMのようなものだ。
M-Pesaを同期できるのはユーザーの銀行口座のみという点が、PayPalやVenmoとは異なる。
クリスポ氏の携帯電話を見ると、最近の取り引きとして、8月にスタンドを訪れ、2250シリング(22ドル)を引き出したことが表示されている。
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実際のやりとりを見せてもらうため、GiveDirectlyのキャロライン・テティ(Caroline Teti)氏とともに、M-Pesaスタンドを訪ねた。
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写真のスタンドは、クリスポ氏の住む村から数キロ離れた場所にあるもの。彼らが普段使っているスタンドは、村の入り口、徒歩7分の場所にある。
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テティ氏は1000シリングをM-Pesaの口座に預け入れるという。
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システムは簡単だ。ユーザー(この場合はテティ氏)はアプリを開き、それぞれのスタンドに紐付けされたエージェント番号を入力、預け入れる金額を打ち込む。
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するとM-Pesaのスタッフの携帯電話に、テティ氏の1000シリングを預け入れるよう通知が届く。預金を引き出す場合も、同様のプロセスをたどる。
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取り引きには、少額の手数料が発生する。GiveDirectlyの受給者の場合、手数料は30シリングだ(GiveDirectlyは、支給分の2250シリングにこの手数料30シリングを上乗せした、2280シリングを毎月入金している)。
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入金処理が終わると、スタッフの携帯電話に、取り引きが無事終了したとの通知が届く。預金をしたテティ氏の携帯電話にも、入金完了の知らせが表示された。
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最後のステップは、意図的にアナログにされている。スタッフが取り引き内容を帳面に記録するのだ。犯罪を防ぐため、昔ながらの対策が必要となる。
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M-Pesaはケニア全土で利用されており、モバイルバンキングの約80%をM-Pesaが占めている。人々はこのシステムを、個人的な借金の返済から、日々の買い物、ギャンブルやスポーツイベントの支払いまで、幅広く利用している。
フルタイムで大きな組織に勤務するテティ氏のような人々にとって、M-Pesaは便利なツールだ。そしてクリスポ氏は、M-Pesaを使ったベーシックインカムの検証実験に参加したことで、人生が大きく変わった。
[原文:A mobile banking service is transforming how the poor transfer money — here's how it works]
(翻訳:忍足 亜輝/編集:山口佳美)