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「クルマ離れ」でもディーラー客は増加? 自動車業界の本当の課題は「CX」だ

ドライバーのイメージ

ユーザーの車の買い方が変わってきた。ディーラーの役割も変わってきている。

mangostock/GettyImages

EV化、自動運転、ライドシェアサービスやカーシェアサービス……自動車業界は今、大きな変化を迎えている。そしてもう一つ、いつの間にか大きく変わっていたことがある。ユーザーの車の「買い方」、逆の視点から見ればディーラーの役割だ。

重要性を増すディーラーの役割

かつて車の購入と言えば、ディーラーのセールスマンがユーザーの自宅を訪問していた。「え、昭和の話?」と思う人もいるかもしれないが、2000年代に入っても、実は4割以上が「自宅や職場など、 店頭以外で商談していた」というデータがある。

ユーザーが車を買い換える時も、顔なじみのセールスマンに連絡すれば、セールスマンがお勧めの車種のパンフレットを持ってやってきた。いや、むしろユーザーが買い替えを言い出す前に「そろそろ買い替えの時期です」とセールスマンが案内していた。

JDパワーの調査結果

J.D. Powerの「日本自動車セールス満足度調査(SSI)」と「日本自動車サービス満足度調査(CSI)」によると、車の購入に際して、主な商談場所としてディーラー店舗に出かけているユーザーは2001年が57%だったのに対して、2017年は84%と、大幅に増加している。

試乗体験の勧めも2001年は44%に対して、2017年は71%。以前は家にやってきたセールスマンと話をし、セールスマンの勧めで、特に車に試乗することもなく車を購入していたのだが、今は試乗が当たり前。

そして新車の納車場所をディーラー(販売店)にした人は、2001年は40%と半数以下だったのに対して、2017年は73%。多くのユーザーがディーラーで車を受け取っている。つまり、ディーラーが今、ユーザーとの重要なタッチポイントになってきているのだ。

「予約ありき」というユーザーの消費行動の変化

ユーザーの消費行動はどう変化したのか? 顧客満足度調査の専門機関として、50周年を迎え、自動車に関する数多くの調査を実施してきたリサーチ会社、J.D. Power日本法人のオートモーティブ部門 執行役員の木本卓氏は言う。

J.D. Power日本法人のオートモーティブ部門 執行役員の木本卓氏

J.D. Power日本法人のオートモーティブ部門 執行役員の木本卓氏。

「メンテナンスなどサービス入庫の予約をするユーザーも2001年には64%だったのに対して、2017年には96%になっています。つまり、ほとんどのユーザーが予約をしてからディーラーに向かっています。考えてみると、飲食店にせよ病院にせよ、いま私たちは“予約”をするようになっていませんか?」

予約するということは、その対価として何らかのサービスの提供を期待しているということ。ディーラーは顧客体験(カスタマーエクスペリエンス=CX)を高める絶好の場所になっているのだ。

「自動車は耐久消費財です。保有期間は近年、ますます長くなり、平均すると7年、長ければ10年近く乗るユーザーも増えています。車検などメンテナンスでブランドとの接点は増える一方です。その状況をどう上手く体験価値の向上に活用していくか、これはディーラーやメーカーの大きな課題になっています」

CX向上への取り組みはユーザーに企業やブランドの「ファン」になってもらい、長期間、できれば一生涯を通して顧客となってもらえるかを左右する。日本車はそのクオリティを高めることで顧客をつなぎ留めてきた。しかし、ユーザー側にとっての「価値」の主戦場が別の部分に移ってきた、と木本氏は言う。

工業製品としての差別化はもはや困難

「クルマの品質については、グローバルで見ても以前ほどの大きな差がなくなってきています。どのメーカーの、どの車を選んでも、日常的に使用する分には大きな違いはありません。クルマがエンストすることなど、今の時代には稀有な事象となっています。

つまり、基本性能での差別化は困難になっており、デザインや装備の質感、操作性などが差別化ポイントとなってきています」(木本氏)

もちろん、日本車メーカーもこうした部分への取り組みを進めている。しかし、まだまだメーカーとしての考え方、「ものづくり」の視点が強い。工業製品としての車のクオリティが第一義になっている。


工場のイメージ

Monty Rakusen/GettyImages

木本氏が示唆するのは、工業製品としてのクルマの品質は、もはや100点に限りなく近づいている、ということだ。これから多大な投資をすべき部分は98点の改善ではなく、まだ80点しか取れていない部分を95点にすることではないか、という指摘だ。

「投資をどの分野に振り分けていくか。その判断において、日本のメーカーには海外メーカーとは異なる傾向が見られます。 メーカーやクルマに対する評判の多くは、今、クルマの品質もさることながら、お客様に対応したセールスマンやサービススタッフの良し悪しによるところが大きくなっています。

購入を検討している時、商談、納車、6カ月点検、1年点検、車検など、ディーラーがユーザーに対してアクションできる機会は実はとても多いのです。インターネットでの口コミも自動車購入の大きな決め手になっています。

一方、クルマに関する“サービス品質”はメディアには取り上げられにくい。業界の課題として、情報密度とユーザーの購買行動との間に、一種のかい離があります」(木本氏)

ユーザーがクルマに求めるものとは?

自動車業界を俯瞰して見てきた立場として、木本氏は「IT化の取り組みをもっと推進するべきだ」と言う。

例えば、メンテナンス時の予約は増えているが、その手段はまだ電話がメイン。今やカー用品チェーンでは整備のネット予約は当たり前だ。ディーラーとのサービス品質にある種の逆転現象が生じている。

「ウェブサイトやアプリで予約できるシステムがあれば、本来は来店時の対応をもっとスムーズにできるはず。『いらっしゃいませ』ではなく『○○様、いつもありがとうございます 』と言えるはずなのです。実際、高級車ディーラーの中には、来店時にクルマのナンバーを読み取り、来店者を把握するサービスを導入している店舗もありますが、まだレアケースです。本来は全ての自動車ディーラーが取り組む価値のあることです」(木本氏)

製品だけではなく、製品を通した体験を提供する時代へ

カスタマーエクスペリエンスの改善という視点は、J.D. Powerが行う5つの主要調査のうち、「購入経験の満足」を示す「日本自動車セールス満足度調査(SSI)と「アフターサービスの満足」を示す「日本自動車サービス満足度調査(CSI)に関係する。

「例えば、SSIとCSIで高評価を獲得しているレクサスは、セールスマンとアフターサポートの連携を近密にしたり、日本の伝統的な礼儀作法などを取り入れるなど、顧客体験の向上に取り組んでいます。それがクルマ自体の品質はもちろん、SSIやCSIでの高評価に直結しています」(木本氏)

顧客体験(CX)の高さという面でみるとディーラーはホテルなどのサービス産業と比べるとまだまだ弱い。メーカーの直営ではないという構造的な問題はあるものの、勉強会を行って他業種の接客の様子を学んでいるディーラーも出てきている。

顧客体験を高めてきている自動車メーカーはどこなのか? それはなぜなのか? J.D. Powerの業界ベンチマーク調査は、そうした観点でも読み解くことができる。

jdpower

(文・中山智、写真・岡田清孝)

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