中国で急拡大する無人コンビニ市場。頭打ちEC大手と既存小売りの激戦に

「無人化」は2017年、日本と中国の両国で小売り分野のキーワードになった。ただし、日本が人手不足への対応策として、レジや受け付け業務の無人化を進めているのに対し、中国は新規事業あるいはイノベーションの実験場としての位置づけが強い。

無人コンビニのスタートアップ「繽果盒子(Bingo Box)」は2016年8月に1店舗目をオープン。その後、わずか1年余りで広州、大連など約30都市、200店舗体制に成長した。その後、ECや小売り大手も無人コンビニに相次ぎ参入。多くはまだコンセプト段階にあるが、本人認証や商品識別、データ分析などで最先端の技術が導入され、投資家から大量の資金が流入している。

今回、「2018年秋に5000店舗体制」を掲げるBingo Boxの上海の店舗を訪ねた。

上海市・楊浦区のBingo Boxはフランスのスーパーマーケット「オーシャン」の敷地内に設置されている。

外観

暗くなってから訪問したため、見つけるのに苦労した。


入り口はロックされており、WeChatアプリを使って開錠する。

まず、アプリを起動してQRコードをスキャンし、公式アカウントをフォローする。公式アカウントに電話番号や名前を入力して登録。その後、公式アカウントでスキャンを選び、QRコードを読み込むとドアのロックが解除される。

友人から「無人コンビニはただの大きい自販機だ」と聞いていたので、あまり期待はしてなかったが、想像以上の品ぞろえだった。

店内


たくさんのお菓子、

お菓子


韓国や日本の物もある。

韓国製品


缶、ボトル飲料、乳製品も豊富。

飲料


価格は通常のコンビニと変わらない。

つまみ


調味料や……

しょうゆ


日用雑貨も一通りそろっている。

日用品


日本の? お菓子を買うことにした。

お菓子


こちらがセルフレジ。

レジ


バーコードを読み取らせ

レジ風景


数量と価格を確認し、商品を登録する。

レジ画面


一連の流れはこんな感じ。

決済方法はアリペイ(支付宝)かWeChatPay(微信支付)を選択する。仕組み自体は、日本でも見かけるセルフレジと変わらない。

Bingo Boxのテクノロジーにそう驚くものはない。セキュリティーが強化された、自分で精算するコンビニといった感じで、総菜など温度や品質管理が必要な商品は取り扱っていない。

一方、他社の無人コンビニは、より高度なテクノロジーが導入されている。アリババが2017年7月に披露した無人コンビニ「淘珈琲」のコンセプト店は、顔認証やセンサーを取り入れ、客が商品を手に取ったりかばんに入れる動作を認識、支払いゲートを通過するだけで決済が完了する。また、最大50人まで同時に買い物できるという。

中国飲料最大手の杭州娃哈哈(ワハハ)集団も6月、無人コンビニ進出を発表。アリババ、深蘭科技と提携し、無人コンビニ「Take Go」を3年で10万店舗、10年で100万店舗展開するという壮大な目標を掲げている。Take Goは手のひら認証で入店し、「淘珈琲」と同じように商品を持って、出口で手のひらをタッチすれば、自動的にアリペイなどの決済口座からお金が引き出される仕組みになっている。

アリババに次ぐECサイト2位の京東集団も10月、無人コンビニと無人スーパーの2つのブランドで、無人小売業への参入を発表した。

先駆者のBingo Boxも顔認証や、カメラを内蔵し顧客データを収集できるスマート商品棚を開発中だ。

二けた成長続く中国コンビニ業界

無人コンビニに注目が集まるのは、複数の要因がある。

コンビニ

中国では小売業が低迷する中、コンビニだけが高成長を続けている。

TK Kurikawa Shutterstock

まず、スーパーや百貨店が苦戦する中国の小売業界において、コンビニだけが高成長を続けていること。中国連鎖経営協会がまとめた「2017中国コンビニ発展報告」によると、2016年のコンビニ業界の成長率は13%、市場規模は1300億元(約2兆2000億円)に達し、新規出店数、売上高ともに二けた成長だった。

EC市場の頭打ちが近づいているのも関係している。

中国信息通信研究院によると2017年1-10月の中国の携帯電話出荷台数は前年同期比8.3%減少した。農村部も含めてスマホが中国全土に普及し、オンラインショッピング人口も天井に到達しようとしている。アリババ、京東などEC各社は、海外顧客の獲得や、小売り企業の買収など、「越境」によって成長を模索している。無人コンビニは、IT技術に強みを持つEC企業にとも相性が良い。

また、中国にはまだ全国を網羅しているコンビニチェーンがなく、コンビニに転換が見込める家族経営の小さな商店が数多くあるのも、異業種から参入しやすい理由だろう。

24時間営業、多機能化など小売り業界のイノベーションをけん引し続けてきたコンビニ業態。中国では今後、AIやビッグデータ、フィンテックなど次世代技術の実験場としての役割が強まりそうだ。

(文・浦上早苗、盛軼倫、撮影・盛軼倫)

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