アマゾンと敵対するか、取り込まれるか —— 我々に残された選択肢は2つに1つ

アマゾンCEOジェフ・ベゾス氏

2017年、最大かつ最も攻撃的な動きは、アマゾンが137億ドルでホールフーズを買収したことだろう。

AP

  • 2017年、テック業界の大きなテーマは統合だった。だがM&Aという意味ではない。大企業が新たな分野に参入し、新しい市場を獲得しようとしているという意味だ。
  • 最も注目すべき事例は、アマゾンが137億ドル(約1兆5400億円)でホールフーズを買収したこと。
  • これにより同社は食品小売、宅配、さらには法人IT市場を破壊した。
  • 2018年は、アマゾン vs アマゾン以外の様相になりそうだ。

テック業界は小さく、ニッチなスタートアップについて語ることが大好き。だが現実では、テック企業の戦略は拡大を続け、できるだけ大きくなること。

大型買収、例えばブロードコムが仕掛けている1050億ドル(約12兆円)でのクアルコム(Qualcomm)買収や2016年のデルによる670億ドル(約7兆5000億円)でのEMC買収は、留まることを知らないテック業界の統合への熱狂ぶりを示している。

2017年、テック大手各社はさらにその勢力を拡大しようと試みた。FacebookはSnapchatの長所を徐々に取り込むことで同アプリに対する優位性を築いた。アップルは新しいiPhoneをリリースし、次の最先端技術であるAR(仮想現実)分野を押さえようとしている。マイクロソフトはアマゾン、アップルだけでなく、Slackのようなスタートアップにさえも攻撃をしかけ、グーグルは巨額の投資を行って自社のハードウェアを強化した。

だが、最大かつ最も攻撃的な動きは、アマゾンが137億ドルでホールフーズを買収したことだろう。この買収は従来の考え方では、テック業界の話ではない。だが食品小売業界を超えた波紋を生み出し、アメリカ経済全体を徐々にアマゾン vs アマゾン以外という図式に変えつつある。

ホールフーズ店内

Kate Taylor

最初の波紋は極めて明確だった。アマゾンはすぐにホールフーズで販売している商品を値下げし、クローガー(Kroger)などの競合企業にプレッシャーをかけた。クローガーは株価を下げた。現在、アマゾンはプライム会員を対象にさらなる値引きを示唆している。同社が与えるプレッシャーはさらに大きくなるだろう。

そしてあまり予期していなかったことが起きたが、振り返ってみると当然のことだ。アマゾンによるホールフーズの買収を受け、ターゲットウォルマートといった大企業がグーグル経由でのショッピングを可能にした。グーグルはアマゾンのメインのライバルとなりつつある。同様に、小規模な小売業者はInstacartのようなスタートアップにアプローチし、アマゾンのような即日配送サービスを開始した

さらには、ホールフーズ買収はクラウドコンピューティング市場にも衝撃を与えた。同市場はアマゾンウェブサービス(AWS)が大きなシェアを占め、巨額の利益を生み出している

ホールフーズ店内

Kate Taylor/Business Insider

ウォルマートは取引先にAWSの使用を止め、マイクロソフトアジュールやグーグルクラウドなどをサービスを使用するよう通告したと伝えられた。クローガーも最近、AWSの使用中止を検討した

つまりアマゾンは、2011年にグーグルがモトローラ買収に費やした132億ドルよりも少し多い金額で、食品小売業界、大手スーパー、さらにはエンタープライズIT業界までをも激変させた。

これはアメリカの経済界がいかにアマゾンの影響をシリアスに捉えているかを示している。アマゾンが動くと世界が反応する。2018年、アマゾンと敵対するのか、それとも最終的にアマゾンに取り込まれてしまうのかが明確になっていく。

[原文:The $13.7 billion Whole Foods buy has turned the whole world against Amazon — and we'll see the sparks fly next year

(翻訳:まいるす・ゑびす/編集:増田隆幸)

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