最強の相続税対策「生前贈与」教育、住宅、子育て特例を知って賢くもらう

サラリーマン世帯の家計に忍び寄る増税の足音。

庶民にとってささやかな生活防衛策の一つが節税だ。特に親から子、親から孫へと贈与を行えば、お金が必要な世代を有効に援助できるだけでなく、死亡して相続が発生した時に相続税を減らすことができるかもしれない。「生前贈与」は最強の相続税対策といわれるゆえんだ。家族が集う年末年始だからこそ、どう活用したらいいのかじっくりと話し合っておきたいものだ。

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「生前贈与」を検討すれば親、子、孫が将来を話し合ういい機会になるかもしれない。

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「相続税なんてお金持ちにしか関係ないでしょ」と思っているあなた。それは全くの間違いだ。

2015年から相続税が大幅に増税されたことで、対象者(亡くなった人から見た数)が一気に2倍に増加、2016年分は10万5000人に上った。年間130万人が亡くなっているので、実に8.1%を占める。「都心に戸建てを持っていたらまず対象になると考えていい」と多くの税理士は声をそろえる。

生前贈与のメリットはそれだけではない。

誰に贈りたいか自分の意思を明確に示すことができ、贈られた人も必要なときにお金をもらえば大助かりとなるのだ。

ただし、贈与税が課せられないのは年間110万円まで。これが一般贈与と呼ばれるものだ。それを超えると金額によって10〜55%の8段階の税率が課されるので注意が必要だ。親が20歳以上の子や孫に贈る場合は税率が優遇されるものの、思いのほか高率なことは知っておくべきだ。つまり、計画的に贈与をしていかないと、節税効果も薄れてしまう。ちなみに、贈与税はもらう方が払わねばならない。

祖父母から孫に贈る教育資金

とはいっても、贈与は国を挙げての後押しがある。亡くなってからお金が渡るのではなく、生前に必要な世帯にお金が回ることで消費が活性化すると考えているからだ。

そこで、贈与を考える上でぜひ検討してほしいのが、「教育資金の一括贈与」「結婚・子育て資金の一括贈与」「住宅資金の贈与」の3つの特例だ。いずれの使い道もまとまった資金が必要なため、年間110万円では足りないという人におススメだ。

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まず、教育資金から説明しよう。この特例は、2019年3月末までの期限付きで設けられたもの。所定の手続きを踏んで銀行に口座を設ければ、親から子、親から孫などに1500万円まで非課税で贈ることができる。教育資金の中には入学金や授業料、通学定期代、留学費用が含まれるなど使い勝手がとてもいいのが特徴。塾や習い事も500万円を限度に非課税となる。

その一方で、贈られる側の子や孫が30歳未満でなければならなかったり、30歳になって使い残しがあれば贈与税が課税されるなど注意は必要だ。もっとも有効だと考えられるのは、おじいちゃん、おばあちゃんから孫への贈与。子どものいる家庭にとって、教育資金は頭の痛い問題だけに、将来の選択肢も含めてみんなで話し合う、いいきっかけになるはずだ。

マイナス金利で苦境が続く金融機関の経営にあっても、専用商品である教育資金贈与信託の人気はすっかり定着。

「増加のペースはさすがに落ちましたが、まだまだ問い合わせも多く、関心が高い状態です」とある信託銀行の社員は語る。2013年に取り扱いを開始して以降、2017年3月末時点の累計で契約数は17万8000件、金額(信託財産設定額)は1兆2000億円にも上っている(信託協会調べ)。

結婚・子育て支援は人気薄

続いて、結婚・子育て資金を見てみよう。この特例の期限も2019年3月末まで。

使い道は挙式費用や新居の住居費、出産費用や不妊治療費など幅広く、子や孫などの贈与される人の年齢が20歳以上50歳未満なら1000万円まで非課税だ。これも銀行での手続きが必要で、50歳になって使い残しがあれば贈与税が課税されるというのも教育資金と似ているが、一番の違いは相続税の扱い。

お金

贈与で生きたお金の使い方を検討してみては。

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仮に贈った人が、子や孫が50歳になる前に亡くなった場合は、使い残しが相続税の対象に繰り入れられてしまうのだ。こうなるとせっかく節税したつもりが無駄になる可能性があることは頭に入れておくべきだ。贈る人の年齢や健康状態を考慮して実行に移すのがいいだろう。

こうした使い勝手の悪さが原因なのか、結婚・子育て支援信託は2017年3月末時点の累計で契約数は5136件、金額(信託財産設定額)は132億円と、教育資金と比べると低調なのは否めない(同協会調べ)。

大きなお金が必要といえば、家を買うケースを思い浮かべる人も多いだろう。そんなときには住宅資金贈与が使える。新築や中古の購入、増改築などに充てるため親から子や、親から孫などに贈れば住宅取得の時期や性能によって700万〜1200万円の非課税枠が上積みされる。適用期限は2021年12月末までだが、所得の制限などがあるので、関心のある人は調べてみるといい。

一般贈与や特例以外にも、贈与には死亡して相続が発生した時点で相続税でまとめて払う「相続時精算課税制度」というものがある。60歳以上の親が20歳以上の子や孫に贈るもので、贈る側1人につき累計2500万円まで非課税となる。ただし、この制度の適用を受けるには申告書の届け出が必要だったり、年齢の条件が付いたりしているので注意しよう。

一般贈与をするの際には、証拠を残しておくことも意識したい。

例えば、お金を贈って無駄遣いされたら心配と、預金通帳と印鑑を親が管理して、その都度渡していくのは駄目。名義預金とみなされて相続の際、財産に含まれてしまう可能性が高い。通帳や印鑑を渡した上で、実際に使われていることがわかるように記帳していけば心配はないはずだ。

ここ数年、贈与税の申告件数は50万件前後、申告納税額は2000億円前後で推移している。実際は、年間110万円以下の申告不要なケースがはるかに多いはずなので、贈与がいかに活用されているかうかがえるはずだ。

その一方で、税務署は毎年4000件弱の実地調査を行い、9割前後で申告漏れなどの違反を見つけている。つまり、「怪しい」と目を付けられたら最後だと覚悟しておいた方がいい。そうならないためにも、家族で一緒に話し合った上で、専門家などに相談してみてはいかがだろうか。

(文・田中博)

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