[レビュー]Mate 10 Proの「ライカ」カメラは本物か? プロカメラマンが試す実力

ファーウェイ Mate 10 Pro

12月1日に発売されたファーウェイの最上位機「Mate 10 Pro」。実売価格は量販店で9万7000円前後。

「ライカ」といえばカメラ好きなら誰もが憧れるドイツの名門カメラメーカー。2016年の「ファーウェイ P9」発売以降、ライカとのコラボによるカメラ性能を売りにしてきたファーウェイの最新作が、12月1日に登場した「Mate 10 Pro」だ。ここでは、「デジタルカメラとしてのMate 10 Pro」という視点から、カメラマン目線で「ライカらしさはどこにあるのか」という部分を見ていきたい。

ダブルレンズ

カメラ部の横に印字された「LEICA」のロゴがカメラ好きにはうれしくなる演出。

まず最初に目に付くのが、独特の発色だ。色乗りが良く鮮やかではあるが、決して派手過ぎはしない。銀塩フィルムで例えると国産のフィルムとは違うヨーロッパのフィルムの色合いのような重厚な印象を受ける。

Mate 10 Proの国内発表に先立つ11月、ファーウェイはライカ銀座店で共同開発についての記者説明会を開いた。そこで明かされたのは、初のコラボモデルである「P9」にライカ側が求めた写真画質がファーウェイが通常考えるスマホの水準を大きく超えていたということ。具体的には、光源の強さは通常の数十倍に対応できることや、色表現調整の基準となるカラーチップの再現度を用意した指定の140個すべてを認識できること、など難度の高いものだったという(当時、通常の社内基準では数十のカラーチップ認識でもOKとしていたそう)。

ライカ側はスマホのカメラとはいえ、それなりの水準を求めないと「ライカ」を名乗ることは認めないとこだわったわけだ。そうしたことを考えると、P9からMate 10 Proへと続く独特の発色にも、ライカが考える絵造りが反映されているのだろう。

ライカ銀座店のショーケース

ライカ銀座店のショーケース。単に看板コラボという訳ではなく、ライカの店頭での展示・販売もしている。ライカのスタッフによると、これは「P9」発売の頃から変わっていないという。

カラーモード「鮮明」の独特の発色

カラーモードには標準のほか「鮮明」と「ソフト」が選択できる。「鮮明」に設定すると色乗りが濃くなり(彩度も高くなるが))、さらに周辺の光量が低下し重厚感もより増してくる。

一般的に画面の外縁部のいわゆる「周辺光量低下」はレンズ描写性能としてはマイナスに捕らえられるが、インスタジェニックに写真を印象的に見せる絵造りという点で、個人的には好みだ。

それぞれのモードの絵作りがどう違うか、撮り分けてみたのが次の写真だ。

3つのカラーモード

カメラの3つのカラーモード。鮮明な色、ソフトな色で写真の描写はかなり変わる。


標準モード。

発色「標準」で撮影(タップすると無調整の撮影画像に遷移)。


鮮明モード

発色「鮮明」で撮影。青空の色をはじめとして、全般的にこってりとした色合いになっていることがわかる。単に彩度を高めただけではない癖のある絵作りがライカコラボの作り込みの部分だ(タップすると無調整の撮影画像に遷移)。


ソフトモード

こちらはソフトで撮影(タップすると無調整の撮影画像に遷移)。

レンズの描写性能は高い

写真の細部の解像感を見てみよう。ややシャープネスが強すぎるようにも感じるものの、細部まで精細に再現されている。一方、よく見ると画面周辺部でも像の乱れがほとんど無くレンズ性能の高さが伝わる。ライカブランドの名に恥じない描写だ。

解像感の作例1

解像感のわかる作例1。画面中心部はもちろん、周辺部でも像の乱れがなく高い解像感だ(タップすると無調整の撮影画像に遷移)。


解像感の作例2

解像感のわかる作例2。屋根周辺の丁寧な描写に注目(タップすると無調整の撮影画像に遷移)。

ファーウェイのカメラ機能で最も特徴的といえるのがダブルレンズ。最近のスマホカメラのトレンドとも言えるダブルレンズだが、ファーウェイは2015年6月に発売された「honor 6 Plus」でいち早く搭載していた(実はアップルがダブルレンズを初採用したiPhone 7 Plusより1年以上早かった)。

また一般的なスマホのダブルレンズのように「広角」と「望遠」レンズの組み合わせではなく、色情報を得る1200万画素のRGBセンサーと解像情報を得る2000万画素のモノクロセンサーを搭載するという点でも独自性がある。この2つのセンサーの情報を組み合わせることで、解像感の向上を実現しているという。

ダブルレンズスタイルのスマホでは欠かせない機能になった背景ボケ写真が撮れる「ワイドアパーチャ」機能も磨きがかかっている。背景ボケ機能を搭載するスマホは他にあるが、Mate 10 Proの「ワイドアパーチャ機能ではデジ一眼で絞り値を変えるような感覚で、背景のボケ具合いを撮影後でもコントロールできる。

デジタルエフェクトとはいえ表現はかなり自然で、光源が滑らかな円形にボケてくれる。「銘玉レンズ風だ」というと編集者に「言い過ぎではないか」と指摘を受けたが、ポイントはボケの形だ。ワイドアパーチャでは背景の光源がキレイな正円でボケるが、実際のレンズだと絞り羽の枚数や形状によっては、こんなキレイな円にはならない(5角形になったり三日月型になったりする)。そういう意味で、この背景ボケのエフェクトは、「狙って」やっているんじゃないかというわけだ。いずれにしても、特にSNSで見たときには、デジ一眼で撮影したと錯覚させるような印象的な写真に仕上がるのは確かだ。

wide

ワイドアパーチャで撮影した写真は、後からピントの合う範囲やピントの位置を変えられる。左がボケ最小、中央が看板にフォーカスしたもの、右が背景の建物にフォーカスしたもの。

モノクロモードの画質を見る

カメラ撮影を仕事にしている人間としては、モノクロ写真にも注目したい。モノクロセンサーを搭載しているおかげで解像感に加え明暗差の階調も豊か。光を影の陰影だけで表現するモノクロ写真もってこいの描写だ。

モノクロモード

浅草の風景。日差しの強い晴天での撮影だが、白とびは無く軒先の暗部の階調もつぶれずに再現されている。

操作性を見ると、カメラ好き向けのマニュアル機能が充実しているのも特徴だ。カメラ任せのフルオートのほかに、ISO感度やホワイトバランスなどを自分で設定できる「プロモード」が画面をスワイプすると現れる。

細かいことだがプロモードで設定を変更するときのカチカチといった操作音は、実際にダイヤルを回しているようなアナログ感覚を意識させる。街中で撮影していると、シャッター音(電子音ですが)も銀塩のM型ライカの横走りシャッターを模していることに気づく。こういうコダワリはライカを触ったことがある人なら思わずニヤリとしてしまうだろう。

Mate 10 Proのプロモード

画面をスワイプすると”プロモード”に切り替わり、各種設定をマニュアルで操作できる。

「ワイドアパーチャ」と「プロモード」が併用できない点や、正確な露出を判断するために撮影画面にヒストグラムを表示して欲しいなど、いくつかの要望はあるが、実際に撮ってみるとスマートフォンのカメラとは思えないほど楽しんで撮影することができた。

画質の良し悪しは数値で表せるような絶対的な正解があるわけではない。けれども、独特の色合いや解像感、ボケ味などから写真の映りに真正面から取り組んでる熱意は伝わってくる。このこだわりこそが、長い歴史持つ名門カメラメーカー「ライカ」の絵造りなのかもしれない。

(文、撮影・岡田清孝)

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