メルカリ山田会長が語る「世界進出の先鞭に」——1社が成功すれば状況は変わる

フリマアプリ「メルカリ」の世界累計1億ダウンロード突破を発表した2017年12月20日、山田進太郎会長(40)が、Business Insider Japanの取材に海外展開への思いを語った。日米英の「まだ3国しかサービスしていない」と話す山田会長。メルカリがグローバルになることで、世界はどのように変わっていくのか。

メルカリ山田さん

2013年7月の創業から4年半で、日本有数のユニコーン企業に成長した「メルカリ」。山田会長がメルカリで描く世界とは。

お馴染みの黒いパーカーで現れた山田氏。日本で過ごすのは年間の半分ほど。「3分の1はUS、あとはそれ以外」、そんな生活を送っているという。メルカリは2013年のサービス開始後、2014年にアメリカ、2017年にイギリスに進出。米欧でアプリのダウンロードランキングの上位になった。国内では、2017年12月に金融関連の新規事業「メルペイ」や研究開発組織「R4D」を立て続けに設立した。

C2Cを普及し、途上国を先進国の水準に

Business Insider Japan(BI):今や日本有数のユニコーン企業と言われるメルカリですが、シェア自転車や金融にも進出しました。次々新規事業を立ち上げる展開に、「メルカリ経済圏」という言葉も生まれてます。“経済圏”で山田さんは世界の何の問題を解決しようとしているのですか。

山田進太郎氏(山田):世界の国々で人々が豊かになろうとしているが、資源は限られていて、全員が先進国水準の生活はできません。スマホが登場した時に、いずれ誰もがスマホを手にすることになる、スマホで人々をつなげることで、資源をもっと大切に使えるのではと思ったんです。個人と個人をつなげて、「エンパワー」するという可能性を追求できるのではないかと。

BI:山田さんはメルカリの創業直前に世界一周旅行をされてます。その体験で感じられたことですか。

山田:もともと旅行が好きで、それまでの東南アジアなどによく行っていたんです。前の会社(大学卒業後に設立した「ウノウ」をZyngaに売却してできた「Zynga Japan」)を退社して、また会社を作ろうとしたのですが、一旦起業したらなかなか長期で遠方にいけなくなるだろうと思って。

これまでの旅行とか仕事とかで、いろんな人と接したのですが、どんなに努力しても環境によって活動が制限されている人がたくさんいました。生まれる国が違うだけで、海外旅行することすら難しかったりなど、教育も十分に受けられない新興国がある。そんな中で、私はたまたま日本に生まれ、恵まれた環境がある。だったら、それを生かして何かやりたいと思ったんです。

そんな思いを抱えて2012年に帰国すると、日本ではスマホが爆発的に普及していました。いずれ私が新興国で見てきた人たち全員がスマホを持つ時代が来るなと直感しました。個人同士が物がやりとりできるサービスを作れば、今は貧しい人たちも先進国水準の生活ができるようになるかもしれない、そう思いました。使命感というより、自分がやることで少しでも歴史が変わる、それくらいのことができたらいいな、と。

メルカリ山田さん

世界一周の旅をした後、メルカリを創業した山田会長。

野球の野茂、サッカーの中田になれたら

BI:今世界にはユニコーン企業(評価額10億ドル、(約1132億円)超)が約250社あると言われます。そんな中でメルカリは数少ない日本企業です。なぜもっと日本で増えないのでしょうか? このことをどう見ていますか?

山田:日本のインターネット業界で海外で成功した事例はまだないし、成功できると思っている人は少ないかと思います。どこか1社が成功すれば、「うちも」と後に続く企業は出てくると思う。野球の野茂英雄さん、サッカーの中田英寿さんみたいな人が出てくれば、状況はガラッと変わる。

インターンシップにきている学生を見ていると、私の20代の頃からは考えられないほど視野が広かったり、英語が普通に話せたり、ネイティブに海外で戦える人がたくさんいる。どこかが海外で成功すれば、ほかが追随するので、うちがその先鞭をつけたいんですよ。

米国進出「まだ4年?」「もう4年?」

BI:フリマアプリにとどまらず、金融の新規事業「メルペイ」や12月に発表した研究開発組織「R4D」など、活動の幅を広げています。メルカリは、今後、何の会社になっていくのでしょうか?

山田:私自身、アメリカの最前線でやっていて、まだ(新たな価値を生み出す)マーケットプレイスを世界中に広げるというミッションの一部にいると思ってます。まだ3国しかサービスをしていないので、メルカリが世界的なマーケットプレイスになることにまずはフォーカスしています。

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出典:メルカリ

BI:アメリカでは2016年に国内のApp Store無料アプリダウンロードランキングで3位になり、ダウンロード数は3000万を超えています。アメリカ進出は好調と捉えていますか?

山田:まだ試行錯誤している段階だが、数字は伸びているし手応えは感じています。ただ、経営陣が海外進出にコミットしているところは(他との)違いかな。会社としては、ミッションに「世界的な」と入っているので、海外進出は最優先という合意が社内にあります。社員もそこに惹かれて入社してくるので、「アメリカがちょっと調子が悪いからやめる」となれば、会社の存在意義がなくなります。(フリマ事業を)「4年もやっている」か「まだ4年」と見るか。いきなりは成功せず、何年もやっていたら、突破口が見つかり成功するケースが多いと思う。大成功までは手綱を緩めないと決めてます。

ミッション

新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る

BI:グローバル展開していく上での「ハードル」は?

山田:グローバルスタンダードに対応できるか、ということ。日本人だけでは難しいので、マネジメントを含め、日本語が話せない外国人も含めて日本でも採用しています。グローバルでのコミュニケーションは時に軋轢も産みますが、日本にいても会社としてはグローバルでなければ。各国の「あうんの呼吸」を言語化しないといけない。

現地でもかなり強力に採用を進めています。 組織だけがローカルで、プロダクトだけグローバルになるのはありえません。 これまで日本人中心のチームであるがため、ある種、失敗もしてきました。現地採用を進めた結果、人材の質、量ともに格段に上がってきました。

GOT(Global Operations Team)

メルカリのグローバル採用や語学教育、異文化コミュニケーションのセミナーを担うチーム。メンバーは、アメリカ、イギリスなどの多国籍な出身者で構成している。日本語が話せない、日本文化に馴染めないメンバーらを支援する。

BI: 逆に日本企業であることの強みは?

山田:日本のメーカーは研究部門が強く、これまではそこで新しいブレイクスルーを起こしてきました。車なら低燃費などの技術を開発したホンダがアメリカで成功するなど、日本は圧倒的なテクノロジーのアドバンテージがある企業が海外で成功してきたと思っています。

日本国内だけを見れば、力技でなんとか(市場の開拓が)できる部分もゼロではありませんが、グローバルは市場の大きさから言っても、技術に投資してプロダクトを大きくしないといけません。実際、AIやマシンラーニング(機械学習)の活用が、出品率やマッチング率の改善に効果をあげています。この分野にしっかりと投資していきたいと思っています。

「大企業のメルカリ」に気付かなかった2017年の反省

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2017年は、メルカリで現金が出品される問題が発生した。

BI:現在の人員体制は? 技術ファーストという方針から言って、エンジニア中心ですか?

山田:全社員約600人のうち半数がカスタマーサポート、残り半数のうち約160人がエンジニアです。

BI:アプリの規模からすると意外とエンジニア部隊がコンパクトではありませんか?

山田:自分たちはまだまだ小さい会社で、あれもこれも、と攻めの開発をしてきました。

ただ、2017年前半には現金が出品されていることが問題視されるなど、プラットフォーマーとしてもっと責任と監視をすべきという指摘も受けました。自分たち以上に、世の中の見られ方は「大企業のメルカリ」になっていて、それは自分たちの注意が足りなかったなと気付かされ、反省点でもあります。

2017年は、メルカリに現金やチャージをしたSuicaが出品され、出品者が逮捕される事件が起きた。12月にメルカリは仕様を変更し、本人情報登録を必須にするなど、盗品を含め、不正出品を抑制する対策に打って出た。

山田氏の“口説き文句”は。ポリシーは無理をしないこと

BI:アメリカ法人の役員に元FacebookのVPが就任して話題になるなど、メルカリに集まる人材にスタートアップ著名人が多いことが話題になってます。どうやって人材を集めているんですか。

山田:Google、Facebook、Airbnbなどがなぜいい人材を採れるかというと、自分が成長できそうとか、すごいエンジニアがいて一緒に面白い仕事ができる、という環境があるからです。技術に投資し、一人ずつ「いい人」が入ってくることで、あの人と働きたいという人(正の循環)が出てきます。

BI:入社した人たちに取材すると、山田さんからの「口説き」文句で決めたとも聞きます。人材を口説く時の決めゼリフがあるのですか?

メルカリ山田さん

メルカリに転職した転職した人に取材をすると、「トップの視座が高い」「進太郎さんが好きで入った」など、山田会長の情熱や人柄への支持を口にする。

山田:会社として「したい」ことがある前提ですが、その人が何をやりたいかをすごく重視しています。人を誘う時には、まず相手に「何がやりたいの?」と聞きます。それが会社とぴったりと合う時に、「こういう機会があるけど、どうですか?」と言うようにしてます。

初めにこっちが何をしたいかを話してしまうと、相手がちょっと違ってもこちら側に寄せてしまうじゃないですか。誘導したり無理矢理感があったりすると、結局、お互いに上手くいかない。

「やらない」はあえて言わない。忖度は可能性を摘む

BI:事業や展開を検討する中で、「絶対にやらない」と決めていることは ?

山田:絶対にやらないことはあえて言わないようにしてます。「忖度」という言葉が日本でも流行ったわけですが、経営陣が気軽に「やらない」と言うと、「そういうのはやらないのね」と社員が忖度して、会社の可能性が摘まれてしまうと思うんです。可能性を決して排除はしない。今はその時ではなかったとしても、状況が変わったらやりたいことはたくさんあります。

BI:メルカリは2018年にも上場すると言われています。必ずしも上場はメリットばかりではない中で、山田さんは上場するメリットは何だと思いますか。

山田:2017年に(会社やサービスについて)いろいろご指摘を受けました。企業がある程度、大きくなると社会的な責任が出てきます。 単純に自分たちのお客様と自分だけでなく、社会的な一部に組み込まれ、社会の公器になります。株式市場にいることで、適切な会社へのフィードバックが受けられると思っているので、しかるべき時期が来たら上場した方が良いと考えています

(取材:伊藤有、浜田敬子、構成:木許はるみ、撮影:今村拓馬)


山田進太郎やまだ・しんたろう):1977年生まれ。早稲田大学在学中に、楽天で「楽オク」の立ち上げなどを経験。卒業後、ウノウ設立。 「映画生活」「フォト蔵」「まちつく!」などのインターネット・サービスを設立。2010年、ウノウをアメリカのソーシャルゲーム会社「Zynga」に売却。2012年退社後、世界一周を経て、2013年2月、メルカリを創業、代表取締役会長兼CEO。

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