「なぜ日本ではセクハラを笑ってスルーするの?」留学生が見た“異様な”光景

2016年秋から2017年初夏にかけて首都圏の大学に1年留学した中国人女性、王夢夢さん(23)がバイト先での「嫌な経験」について、「日本の人がどう思うのか、聞いてみたい」とBusiness Insider Japanに文章を寄せた。バイト女性の肩や腕を触る店長に恐怖を感じたが、それ以上に理解できなかったのが、触られても、笑っていなす同僚たちの態度だったという(王さんの文章は、文意を変えない範囲で、自然な日本語になるよう編集しています)。


私は日本留学時代、ショッピングセンターのフードコートでアルバイトをしていました。店長は何度か替わりましたが、そのうちの一人は、女性を触ることが好きなようでした。

店長は同僚たちがお皿を洗っているとき、肩や背中、お尻をぽんぽんと触ることがありました。同僚はいずれも、若い主婦です。彼女たちは触られても笑っていて、怒らなかったので、私はそれを異様に感じました。

セクハラ

肩をぽんぽんと軽く叩く行為。やってる方はコミュニケーションのつもりでも相手はそう受け止めていないこともある。

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必要もないのに、女性の体を触るのは変ではないですか。私は子どものころから、「自分の体を大事にしなさい」と教えられたけど、同僚女性たちは、嫌ではないのでしょうか。

中国人の友達に話すと、「そんな職場は辞めたら」と言われたけど、ちょうど3カ月の研修期間が終わり、せっかく仕事を覚えたので、我慢することにしました。

その後、私も触られました。最初は腕を軽く。店長は「あ、ごめん」とすぐに言ったので、「やめてください」と言えませんでした。それからしばらくして、今度は背中を触られました。私が全身震えていたのに気付いたのか、店長は「本当にごめんね」と笑いながら言いました。私は何も言えず、それからはできるだけ店長を避けました。

ある日、店にゴキブリが出ました。殺虫剤をゴキブリに噴射していたとき、背中をなでられるのを感じて、思わず大きな声で叫んでしまいました。振り返ったら店長でした。

その場にはバイト女性が2人いましたが、皆、笑っていました。私がゴキブリに対して声を上げたと思っていたようでした。けれど、私はもうその場の空気もどうでもよくなって、「触るのはやめて」と小声で言いました。とても緊張して、敬語を使うのも忘れてしまいました。その場の雰囲気は急に冷たくなり、皆黙って仕事を再開しました。私も、ゴキブリの死体を捨てに行きました。

飲み会

飲み会などで肩やひざを触られて、「本当は嫌だけど、面倒なやつだと思われたくないのでスルーする」との声は多い。

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雰囲気を壊したけど、これでもう触られることはないと安心しました。「この子、空気読めない」と思われているかもしれないけど、私はどうせ外国人ですから。

ところが翌日、また店長に腕を触られました。今度は何も言えませんでした。同僚の女性は触られても何も言わないし、私が嫌がっていても助けてくれなかったです。

ある夜、日本人大学生と2人でシフトに入ったとき、この話をしたら、その学生は「それは自分から見るとセクハラだけど、日本ではよくある話」と言いました。後日、別の日本人学生に聞くと、「他の女性が何も言わないなら、仕方ないですね」との返事でした。

理由は分かりませんが、その店長は数カ月で辞めました。新しい人は女性を触る人ではなかったので、私も楽になって、中国に帰国するまで、そのバイトを続けられました。

けれど最後まで理解できなかったのは、触られる側の女性たちが嫌ではなかったのか、なぜ、何も言わないのかということです。

彼女たちはお尻を触られても笑顔で振り返って、「何ですか? びっくりした~」と答えます。私だけ嫌だと言うのは、とても無力に感じました。


触られて何も言わないのは、“軽い女”

王夢夢さんの文章をさまざまな人に読んでもらった。40代の筆者にとって、それは「一昔前はどこでも見かけた光景」であり、「店長はセクハラとの認識はないんだろうな」とも感じた。「触られた他の女性たちもそれを分かっているから、事を荒立てずに笑って済ます」「けれど、内心では気持ち悪いと思っていることも多い」ことも、肌感覚で知っている。ただ、その“肌感覚”は外国人に押し付けてはいけないものだろう。

同じ中国人の陳慧さん(26)。中国の大学を卒業し、今は日本で働く。

「中国でもこういうボディタッチはないわけではないです。私の経験ですが、自動車免許の教習所で、教官が必要もないのに、膝に手を置いてきたこともありました。でも、嫌なときは嫌と言います」

日本の牛丼チェーンでアルバイトをしていたミャンマー人留学生(23)は、全く同じ経験をしたという。

「私も店長に触られました。母国では、仕事の場で体に触れることはありません。もし触られて受け入れるなら、『自分は軽い女です』と言っているのと同じです。怖くて、すぐにバイトを辞めました

大学時代に来日し、そのまま20年以上日本で暮らす40代の鄭さんは、「王さんの気持ちはよく分かります」

「私も日本に来てすぐまだほやほや20代の頃、バイト先の店主の方に肩を触られて、とても嫌でした。我慢できず、店のおかみさんに愚痴ったら、ぴたっとなくなりました。でも、おかみさんは笑ってましたね。文化の違いを感じました」

「面倒なやつと思われたくない」 日本人女性の本音

実際、「触られることへの嫌悪感」は、文化の違いなのか。また、触る場所によって、セクハラかコミュニケーションの線引きがされるのか? 日本人女性にも聞いてみた。

30代前半の会社員、田中さんは、王さんの文章を読んで「耳が痛い……」と一言。

私も会社でボディタッチは基本スルーしてしまっています。“めんどくさいやつ”と思われたくないので。内心は社会的に抹殺されてほしいと思うほどに嫌です。けれど、自分のこういう行為が社会の勘違いを呼んでいるのかもしれないですね」

東京在住の会社員、里奈さん(30)は、

「20歳前後の頃は、年上の男性から頭ポンポンされるのが気持ち悪くて仕方なかったです。ただ私もやめてくださいとは言いませんでした。若い女子を褒めるときは頭ポンポンしとけ、とどこかにマニュアルがあるんでしょうか……」

日本で会社員を経て、今はアメリカで働く時田雅子さん(44)は、両国の違いを説明する。

「日本は無意識の男尊女卑がなかなか消えないですね。私も面倒だったから触られようが、飲み会で抱きつかれようがスルーでした。けど、アメリカの今の会社では、管理職がセクハラで即刻クビになりました。アメリカは問題も多い国だけど、その点は本当に厳格ですね」

一方、金融機関で総合職として働く翔子さん(40代)は、「女性管理職も増えてるので気をつけないと……」と話す。

「私と同世代の女性で、若い男性に仕事を頼むときに『おねがぁ〜い』と言いながら腕をつかむ人がいて、当事者の男性はひそかに嫌がっていました。性が違って年齢や職位が上だと変な意識が働いてしまうのでしょうか?」

40代の会社員、村上さおりさんは「ていうか今でもこんな人がいるんですね、びっくり」と一言。

「自分も新人の頃、手をなで回されたり、飲み会で後ろから抱きつかれたりしたけど、当時は何も言えなかったです。今なら盛大に騒ぐけど、そうできる頃には触る人はいない

さおりさんはこう続ける。

「仲間意識のある先輩や同僚なら、肩や背中を触られても平気なんですよ。男性同士で肩組むような感覚と同じで。でも肩を触ってもいい関係性なんて、明確な線引きはできないから、触らないことです」

(文中一部仮名)

(文・浦上早苗、王夢夢)

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