炎上上等フェミニスト勝部元気が語る「#MeToo 騒動」、燃えてもたたかれても一切気にならない

勝部氏

電通勤務時代のセクハラ体験を告発した人気ブロガーで作家のはあちゅうさんには、過去の「童貞いじり」発言への批判が殺到している。セクハラを告発する#MeTooにつきまとう被害者たたきとも言える炎上騒動を、火の粉を物ともせず、Twitterやコラムで斬り続ける人物がいる。フェミニストを標榜する、コラムニスト・社会起業家の勝部元気氏(34)だ。

これまでもネット上での発言が物議を醸し「炎上芸人」と揶揄もされてきたが、その立ち位置はブレることはない。

男性がフェミニズムを掲げれば、確実に浮く日本社会。ストレートのセミロングヘアに脱毛は欠かさない王子様的ルックスで、力による支配と抑圧に挑む、勝部元気とは何者なのか。

被害者叩きの根底にある女性蔑視

「男性はよく『娘ができて初めてセクハラや性暴力の被害者女性の気持ちがわかるようになった』と言いますが、私は言いたい。妻は大事ではなかったのですか、と」

静かな声でそう語り始めた勝部氏は、一見、痛烈な発言を繰り返す社会派コラムニストには見えない。

耳には8つのピアスが光り、えんじ色のベルベットのジャケットからのぞかせた白いシャツのえりは、ボタンを2つ目まで開けている。

Twitterで炎上を繰り返すのも、批判を恐れない物言いのせいもあるが、そのどこか中性的なルックスや不思議な佇まいが、「ひとこと言いたい」欲望を掻き立てるのかもしれない。

ただ、冷静にその言葉に耳を傾ければ、論理は極めて明晰だ。日本において痴漢やセクハラといった性被害が語られてこなかったことについて、勝部氏はこう指摘する。

「日本の女性は、性的な被害に声を上げることを、よしとされてこなかった。多くの妻は夫にすら、話してもわかってもらえないと、あきらめています」

そんな中でも意を決し、声を上げた女性に対する被害者叩きの構図をこうみる。

「根底には、女性蔑視があります。多くの日本男性には、女性に聖女であってほしい、自分の意見を主張したり怒ったりしないでほしいという願望がある。それにそぐわない、声を上げる女性は『正しい女性ではない』と感じて、アラを探したくなるのでしょう

なぜ、女性蔑視は生まれるのか。

勝部氏

炎上は一切、気にならない。

「恋愛で振り向いてもらえない男性がショックを受けるあまり、『振り向いてくれない女性が悪い』という論理のすり替えもあるでしょう。そういう男性は女性の拒絶に耐えられない。それほどまでに、自己肯定感が低いのです。女性の承認がなくても、人としての自分に自信を持てれば、女性をヘイトする必要はない」

「男子たるものこうあるべき」という価値観がいまだ根強い中、多くの男性は、 性別役割分業から解放された関係を想像できず、 熾烈(しれつ)な競争社会を生きている。そこに、女性活躍推進やテクノロジーの進化による大きな変化の波も押し寄せ、男性もさまよっている。

可視化されたピラミッド

こうした背景に加え、「社会のピラミッド構造がある」と、勝部氏は分析する。

「自分がピラミッドの下にいると感じると、さらに下をたたくことで自分を肯定しようとするのでしょう。 海外と比べて年功序列の傾向や同調圧力の強いムラ社会の傾向にある日本は、その圧も強いのだと思います 」

現代でこうした風潮が強まるのは、「SNSが普及発達したことで、ピラミッド構造が可視化され、不安やコンプレックスを生んでいます。自分を苦しめているのはピラミッド型の権威主義なのに、その権威主義を捨てられないジレンマに陥っている」

ジレンマに陥るのはもちろん、男性に限った話ではない。#MeTooの告発者を非難する声は、男性に止まらない。レイプ被害を実名顔出しで告発した伊藤詩織さんは、告発に対する否定的な声は、女性からも多く寄せられたことを取材などで明かしている。

「“名誉男性”(男尊女卑的価値観を持つ男性側に同調する女性)は、波風立てないで競争社会で生き残ってきた。#MeTooで競争ルールがガラッと変わってしまう可能性があるので、 既得権益なしでは今の位置を守れないと感じている人ほど、否定的なのでしょう」(勝部さん)

自分は誰かを支配する必要ない

ジェンダーがらみで断定調の発言を繰り返す勝部氏の元には、アンチの声や批判が殺到することは日常茶飯事だ。

それについては、こう言う。

私はピラミッドから遠いところにいて、全くその序列にアイデンティティーを依拠していません。だから、お前が弱者だ、弱者による弱者のヘイトだ、上だ下だと叩いてきても何も思いません。自己肯定感が高いので、誰かを支配して自分に自信を持つ必要がないのです

炎上や孤立を一切恐れないというフェミニストの勝部元気は、いかに育まれたのか。

勝部氏

子ども心に、母親の考え方の背景には、社会の構造があると考えた。

女は男よりも稼いではいけない?

東京都中野区生まれ、埼玉育ち。3人兄弟の長男。小学生時代は「みんな一緒に」の雰囲気が苦手で、休み時間にひとりで図鑑を読んでいるような、物静かな少年だった。

「親は基本的に放任で、全て自分でやる習慣がついていた。こうしなさいは一切なかったので、なんでも自分でできるという自己肯定感がありました」

ただ、母親の姿に「ある種の疑問」があったのは事実だ。

「九州生まれの母は封建的な考えも残っていて、女は男より稼いではダメだからと、収入をセーブしていました」

家計は決して楽ではなかったのに、母親はパートタイム程度の働き方だ。

子ども心に「能力があるんだからフルタイムで稼げばいいのに」と思っていた。

ただそこで母親の問題は社会構造にあると考えた。

「出産後に女性が働き続けられない社会に問題がある。親も一人の人間だからと、恨みはありませんでした」

今思えば、それは最初のスイッチだったかもしれない。

女性は諭吉と結婚するのか?

高校は共学になったばかりの元女子校の特進クラスで過ごした。大学は一浪して早稲田大学社会科学部に進学。叔父から送られたパソコンにハマり、インターネットの世界を回遊するうちに、当時一世を風靡(ふうび)したミクシィで、コミュニティーをいくつも率いるようになる。

勝部氏

インターネットは同じ考えの人を集めることができる。

「恋愛などをテーマに複数コミュニティーの参加者を合わせると約100万人いた。ネットを使うと、同じ考えの人をこんなに集めることができるんだと実感しました」

次のポイントは学生時代の彼女にふられたこと。

大学では資格取得にハマったほか、社会学やジェンダー論をむさぼるように勉強した。6歳年上の彼女に「就職せずにもう少し勉強しようかと考えている」と伝えると、あっさり別れを告げられた。早く結婚したいのだという。

「日本人女性は“諭吉”と結婚するのかと、衝撃を受けました」

けれど、彼女ではなくやはり「彼女をそうさせる社会構造に問題がある」と考えた。女性が社会保障や周囲のサポートを受けて、子育てしながら働き続けられる社会ではないからだ、と。

「男女がお金ではなく愛情でつながりたいというニーズを満たすには、互いに経済力を持つしかない」

大学卒業後、いくつかの職を転々とした後、民間企業の財務経理や経営企画の責任者を経て、転職のためにプログラミングの職業訓練学校に通っていた頃。2012年末からコツコツと書き続けていた個人ブログのジェンダーがらみの記事がたびたびバズり、編集者から連絡が来るようになった。

扉を開いたテクノロジー

2017年は、ジェンダーにまつわる話題に対する社会の意識が、大きく動いたことを感じているという。

「私のTwitterのフォロワーの属性は本当にさまざまです。会社員も主婦も学生もエリートも風俗嬢もいる。支持者の3割は男性です」

近年、これまでジェンダーについて語って来なかった人からも、フェミニズム寄りの発言が増えたとみる。関心を持つ層は広がっている。現在、ウェブやテレビ、雑誌でコメンテーターとしても仕事する傍ら、働く女性の健康管理支援の会社を共同経営する勝部氏はそう話した。

こうした変化は「ブラック企業問題のそれと同じ」とみる。扉を開いたのはテクノロジーだ。

「インターネットが普及して、一つの会社だけでなくよりコミュニティー間の移動が自由になり、いい意味で置かれている状況を客観視できるようになった。 既存のピラミッド的な権威や信用の尺度が、実は空虚なものだと気付き始めているのだと思います 」

今日も届くアンチの声に、勝部氏はこうつぶやいている。


勝部元気:1983年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。 働く女性の健康啓発事業を行うソーシャルベンチャー「株式会社リプロエージェント」代表。ジェンダー論、現代社会論、各種人権問題を専門に、 ウェブメディア、雑誌・テレビなどでコラムニストやコメンテーターとして活動。所持資格数は70個にのぼる(2017年12月現在)。著書に『恋愛氷河期』。

(文・滝川麻衣子、撮影・竹井俊晴)



【イベント決定!】MASHING UP Women’s Empowerment Global Conference

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勝部さんも登壇予定のカンファレンスMASHING UPを2月に開催します。

MASHING UPは、女性が強くしなやかに活躍できる社会を創出するビジネスカンファレンスです。全ての参加者が新しいインスピレーションを得て、次の一歩を踏み出し、ビジネスや働き方に役立つ化学反応を促します。

近年、企業でも行政でも、女性活躍推進の取り組みが著しく増加しています。しかし、多くのコミュニティは業種別、年齢別、国籍別で分けられ、お互いに交わる機会は限られています。女性のみで構成されることも多く、女性以外を十分に巻き込めていない点も、「多様性」を真に社会の活力としていくうえで、重要な課題であると考えています。

MASHING UPは異なる性別、年齢、国籍、業種、業界を混ぜ合わせ(マッシュアップして)、新しい対話を生み出し、ネットワークだけでなく、新しいビジネスを創出できる場を目指しています。各業界の“ゲームチェンジャー”をスピーカーとして招聘することで、参加者の皆様が次のステップを踏み出すきっかけを提供します。

初開催となる今年のテーマは「Unleash Yourself」。ジェンダー、年齢、働き方、健康の問題……。私たちの周りにある見えない障壁を、多彩なセッションやワークショップを通じて解き明かしていきます。

Women’s Empowerment Global Conference 「MASHING UP」

  • 日時:2018年2月22日(木) 〜 2月23日(金)
  • 会場:TRUNK(HOTEL)東京都渋谷区神宮前5-31
  • 主催:株式会社メディアジーン
  • 詳細、チケット購入はこちらまで。Business Insider Japan特別割引チケット15000円 → 14000円。※上記チケットお申込みページでプロモーションコード【MashBI】をご入力ください。

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