メルカリの「戦略」を知る5つの質問、研究組織「R4D」が目指す“世界の当たり前”とは?

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過去何度となく「上場」の噂が囁かれてきたメルカリ。12月22日に発表した初の研究開発組織「R4D」では、R&Dではなく、4つのD(Development・開発/Design・設計/Deployment・実装/Disruption・破壊)という意思を込めた独特のネーミングをつくり、その目的として「社会実装をする」ことを掲げている。端的に既存の日本企業にはない風土を感じる。

日本にとどまらずアメリカ、イギリスに打って出た彼らが、研究開発組織をつくろうと考えた着想と意図を、担当役員であるメルカリのチーフ・プロダクト・オフィサー(CPO)濱田優貴氏に聞いた。

(1)初の研究開発組織「R4D」を立ち上げた意図は?

—— 「R4D」はメルカリの初の研究開発組織だそうですが、そもそもこれまでの社内の研究開発チームは、どういう形だったのでしょうか。

メルカリ濱田氏

メルカリのチーフ・プロダクト・オフィサー(CPO)の濱田優貴氏。戦略担当として、メルカリのプロダクトと将来のビジネスを見ている人物だ。

濱田:研究とプロダクトの垣根があいまいになっているという現状があります。例えばディープラーニング(深層学習)を使ってプロダクトをつくったり、ディープラーニング用のプラットフォームを作ったりとか、研究に近いものも実際あるんですが、社内的にはあまりR&Dと位置付けてはいなくて。基礎研究よりも、もうちょっと先の研究という感覚なんですね。そこで改めて、組織をちゃんとつくって始めたというのがR4Dなんです。

(2)メルカリが研究開発組織を持つ、という意味は?

濱田:まず、既存の事業とあまり関係のないところに組織を置いておくことが重要だ、ということです。既存事業だけを見ていると、世の中の大きな動きとか最新の技術に気づけないことが多かったりするんでです。

例えば、普通に事業をやってると「量子コンピューターで何かを解析しよう」ってまずやらないですよね。でも、実は量子アニーリングという手法を使うと、今やってる処理が一瞬で終わる、とかいうことをR4Dを通じて発掘していきたい。

組織をはっきりと分けて、彼ら(R4Dのメンバー)は(メルカリ本体の)事業を見なくて良いという状態をつくることによって、新しい発見が生まれることを期待しています。

大関真之氏

記者説明会の後に行われたトークセッションの模様。研究パートナーでもある、量子アニーリング研究者の大関真之東北大学准教授(中央)も登壇した。

—— メルカリのR4Dは、一般の研究開発組織とは、「体の作り」が違うような印象を受けます。メルカリの考え方の「3〜5年くらいで結果を見極める」というのは研究のなかでも結構短いスパンで、さらに基本的に社会実装をする、と。さらにその組織を見ているのが、メルカリの戦略を見てきた濱田さんだと。

濱田:まずR&Dをそろそろ立ち上げないと、という話になった中で、誰がやる?となるわけです。R4Dには(オフィサーの)木村もいますが、やっぱり組織をつくって(メルカリらしい研究開発の)土壌をつくっていくまでは、僕がちょっと見ていたいなと。

それは、(役員として)世の中にアウトプットすることにコミットしていくという意味です。

(なぜ社会実装を重視するかといえば)アマゾンなんかが良い例ですけど、何でもかんでも、技術が完成する前から社会実装するじゃないですか。ああいう組織ってクールだなと思ってるんですよ。 突然ドローン宅配やりますとか、無人店舗のAmazon Goを始めるとか、R&Dなのか、事業なのかってもうよくわからない。そういったカルチャーがしっかり社内に根付いたら、そこからは(研究開発組織だけで)自走できるんじゃないかと思ってます。

—— なるほど。濱田さん自身は、ある種の立ち上げ屋としてこの新しい組織をドライブしていくわけですね。

濱田:そうです。(記者説明会で言及した)初年度の予算の数億という規模は、ハードウエアを買ったりってことはほとんどないだろうと考えると、ほとんどが人件費ということになります。R4Dには、かなりの人を入れて行きたいなと思っています。

(3)R4Dで「社会実装」を重視する理由

メルカリR4Dのコンセプト

R4Dはそのコンセプトとして研究開発するだけではなく、社会実装もすることが含まれている。その後、事業の芽が見えればメルカリの全事業領域を使って事業化も検討するという。

—— 「社会実装をする」前提の研究開発組織についてもう少し深掘りさせてください。動機は何だったんでしょう。

濱田:世の中には、できるのに事業化していない、あるいはできない理由をつくってることが多いように見えて。

たとえば今回発表した共同研究分野の1つの「無線給電によるコンセントレス・オフィス」にしても、技術はもうあるんです。(東大の)川原先生に「できるんじゃないですか?」って聞いてみたら、「できますね、ただ結構高いですよ」と。そういうものを、「じゃ、やりますか」みたいな温度感で(どんどん世の中に)出していけたら面白いと思ってるんですよね。

今って、テクノロジーの進化が速いので、試しているうちにテクノロジーが先に前進していて、気づけば社会実装できちゃった、みたいなことがあり得る時代です。

アマゾンのドローンなどが良い例じゃないですか。出てきた当初は「ドローンでモノなんか運べるの? エイプリルフールじゃないんだから」と思ってた人は多かったですよね。でも、今やドローン見ると「本当に物流に使えそうだよねね」という視線になってるのと同じで。

VRに関しても、やっぱりFacebookがオキュラスを買収して取り組む中で、(当初はPCと有線接続が当たり前だったものが)スタンドアローンでワイヤレスの良いものが出てきたりしてますよね。

こういうことって、逆に欧米企業では結構やってるんじゃないですかね。

(4)パートナー企業や研究者に提供できるメルカリの「価値」とは?

シャープとメルカリの研究開発の取り組み

R4Dの記者説明会に登壇したシャープ側の資料。シャープのアセットとメルカリのアセット、それぞれを融合させて「いち早く実装」することを狙っている。

—— 今回、スタート時点から研究パートナーにシャープが入っています。企業パートナーがメルカリに求めていることって何でしょう?

濱田:僕らはサービスをつくっていくのは得意なので、(一般論としてパートナーの事業領域の)サービス化をするのが面白いと思ってます。まだ今後、協議を進める部分もありますが、イメージとしてやれることがたくさんある、こんなこともやりたい、といろいろ考えています。

—— ご自身ではパートナーに提供できるメルカリの価値とは、端的に何だと考えますか?

濱田:ユーザーベースを持っていて、アプリの接点が高いっていうところが、僕らが持ってるアセットだと思ってます。

(メルカリの主戦場である)C2Cという領域で考えると、日本だけじゃなく世界を見ても、あまり競合は多くない。C2Cのマッチングサービスといえば、民泊のエアビー(Airbnb)や配車アプリのUberなんかもありますけど、Uberも1対1ではないですよね。お客様(利用者)が多くて、提供者は少ない。

でもメルカリは同じくらい両方がいるんです。本当にピュアにC2Cがつながっているサービスっていうのはあまりないので、(社会実装する研究開発の分野としては)「個人間の配送」みたいなものも結構面白いかなと思ってます。

—— なるほど、極端な話、R&Dの分野に「物流」が入ってきてもおかしくないわけですよね。

濱田:そうですね。それを量子コンピューターを使って、(コストとスピードに優れた)最適解をさっと出すとか、リアルタイムでできるとか。それはUberでもまだやっていない領域だと思います。

(5)今後、研究開発の進ちょく発表はどのように?

メルカリ

—— このあとのR4Dの動きってどうなっていくんでしょうか。

濱田:まだ直近で具体的に決まっている動きはないんですが、2018年半ばくらいには、何か1つ出したい(発表をしたい)なと思ってます。

(重要なのは)研究開発組織を立ち上げたはいいけれど、あまりその後何も出てこなくて、ワクワクしない、そんなことにならないようにしたい。僕の中では、(空白期間が)半年空いたら空きすぎかなと思ってるくらいです。(世に問う)ネタを作っていきたいなと思ってます。

—— もし、社内のエンジニアがR4Dに行きたいって言ったらどうなるんでしょうか?

濱田:それはもちろんウェルカムです。グーグルの「20%ルール」じゃないですけど、メルカリのスタッフみんながリサーチャー(研究員)なんだ、っていう文化にしていきたいんです。

すでに、メルカリの「感動出品」機能(商品写真からカテゴリーやブランド、価格などを推定し自動入力する)なども、半分はR&Dみたいなところがあります。

「それが事業なのかR&Dなのか」なんて言う人は誰もおらず、勝手に研究開発が進んでいく、そんな状態になるのが理想だなと思ってます。

(文、写真・伊藤有)

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