メルカリの凄すぎる“ゴールデンチーム経営陣”全覧、なぜ業界有名人が集結するのか

日本で有数のユニコーン企業(企業評価額10億ドル以上の未上場企業)と言われるメルカリ。2013年2月の創業から、間もなく5年。急成長を支えてきたのは、多彩な顔ぶれの経営陣だ。顔ぶれを見てみると、インターネット業界を牽引してきたさながらゴールデンチームの様相だ。メルカリの「吸引力」とは何か。

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メルカリの主要役員の経歴図。高解像度を見たい方は画像をクリック。

「え、あの青柳さん?」

2017年秋ごろ、メルカリのミーティングがざわついた。週に1度の定例の全体会議で、青柳直樹氏(38)の役員就任が伝えられたからだ。

青柳氏は、元グリーの取締役常務。ドイツ証券会社を経て、グリーに入社し、CFOとして資金調達、株式上場を主導した。ゲームプラットフォームの立ち上げ、GREE International CEOとして海外事業の拡大などにあたった。2016年9月にグリー取締役を退任すると、「次は何をするのか」とIT業界の関心を引いた。

青柳氏は2017年11月、金融関連の新規事業をする「メルペイ」(メルカリの100%子会社)の設立に合わせ、メルペイ代表取締役(メルカリ執行役員も兼務)に就任した。

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2017年11月にメルカリに入社した青柳直樹氏。

青柳氏はなぜメルカリ入社を決めたのか。

「1年以上前からお誘いいただいていて」

青柳氏は、Business Insider Japanの取材に転職の経緯を話し始めた。グリーを退任した青柳氏に、メルカリの山田進太郎会長(40)からFacebookのメッセンジャー経由でメッセージが届いた。

「お疲れ様」

一緒に忘年会と新年会をやり、その後も「ちょっと会いましょうか」と、2カ月に1度は顔を合わせた。山田氏から「一緒に働けるといいと思うんですよね」と当初から言われていた。青柳氏は「まだ整理できていなくて」と伝えていたが、「悪い気はしないですよね(笑)」

採用にかける思いの強さ

徐々にメルカリのことを考えるようになった青柳氏を、驚かせた出来事があった。2017年8月。上海に中国のビジネスの視察に行こうと思い、

「上海に行こうと思っているんです」

と山田氏に伝えると、猛烈に忙しいはずなのに山田氏からは、

「僕もその日程で上海に行きますよ」

という返事が帰ってきた。一緒にシェア自転車に乗ったりするうちに、「意気投合するときがあるじゃないですか。今後どうするか考え、これは本当に面白そうだな、と」

心が動いた。

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青柳氏の就任は、メルカリ社内や業界を驚かせた。

山田氏の採用にかける思いも肌で感じた。

「私は1年間、ずっと『うん』と言ってないんですよ。この人(山田氏)、すごいな、と。いろんなスタートアップの会社さんも、採用は重要だとおっしゃるんですが、山田さんの採用にかける思いが強くて。多くの人に誘ってもらったのですが、『今はこういう事情で』と言うと、だいたい諦められるんですが、山田さんは諦めないんですよ」

「サービス、事業を作るのは、思いの強い人が実現できていくケースが多いと思います。自分の中で、より大きなものにチャレンジするとき、こういう人とやった方がいいと思いました。当たり前のことなんですけど、当たり前のことをまっとうにやっているのがいいと思いました」(青柳氏)

新規事業の具体的な内容はまだ公表されていないが、青柳氏は「『C2Cの新しいサービスを金融の分野でも実現できたら』と経営陣から聞いて、自分の30代、40代をかけたいと思った」と話す。

入社して数週間で気づいたことがあった。

「新卒の方、ベンチャーを経験した方、この人知っている、この人と仕事したことがある、という人が集まっていて、それぞれの会社のベストプラクティスが集まっている気がしていて、学ぶことが多い。『こういう風にやると生産性が上がるんだな』とか、人事の方法とか。自分もこれまでの10年をアンラーニングして、新しいことを取り入れたい」

ヤフー、FB、サイバー幹部が次々

冒頭の図をもう一度見てもらいたい。スタートアップ界の「ベストプラクティス」が集まるメルカリのメンバーを見てみよう。

創業メンバーは、山田会長兼CEOと、富島寛氏、石塚亮氏の共同創業者の3人。山田氏は早稲田大学卒業後に、インターネットサービス「ウノウ」を設立し、アメリカのソーシャルゲーム大手「Zynga」に売却した。山田氏はスマホ向けゲームアプリ開発「バンク・オブ・イノベーション」を設立した富島氏と、2013年2月にメルカリを創業、同年5月にSNS用アプリを開発する「ロックユーアジア」の石塚氏が参画した。

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メルカリの創業メンバー。石塚亮(左)、山田進太郎(中)、富島寛(右)。

出典:メルカリ

2013年、2014年に小泉文明・取締役社長COO(元ミクシイCFO)、濱田優貴取締役CPO(Chief Product Officer 、インターネットサービス「サイブリッジ」創業者)ら現在の役員4人が加わった。

2014年9月にMercari,Inc.がメルカリUS版をローンチ。その8カ月後、2015年5月には、ヤフーのアプリ開発室の室長だった松本龍祐氏が執行役員に就任。松本氏はアプリ開発「コミュニティーファクトリー」を創業し、世界的にヒットした女性向けの写真加工アプリ「DECOPIC」を生み出した。会社をヤフーに売却する形で、自身もヤフーに参画。メルカリには、「10年に1社の会社になるだろう」と確信して入社したという(Wantedlyより)。

2015年9月に、子会社の「ソウゾウ」を設立。松本氏が代表取締役に就いた。

2016、2017年は、サイバーエージェントからも役員クラスの2人が転職している。同社執行役員だった名村卓氏横田淳氏の2人だ。名村氏は、サイバーエージェントを牽引した主席エンジニア。サイバー時代はアメーバピグ、AWA、AbemaTVなどの新規サービスの立ち上げに関わり、メルカリではUS版の開発を担当した。横田氏は、創業間もないサイバーエージェントに入社し、後にAbemaTV取締役として、動画事業の立ち上げに従事してきた。

2017年3月には、Mercari Europe LtdがメルカリUK版をローンチ。

同年8月、フェイスブックのバイスプレジデントのジョン・ラーゲリン氏が参画。

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元Facebook幹部のジョン・ラーゲリン(右)の就任を伝えるリリース。左は山田進太郎会長。

出典:メルカリ

現在は、取締役CBO(Chief Business Officer)兼メルカリUSのCEOを務めている。ラーゲリン氏は、グーグルでAndroidグローバルパートナーシップディレクターなどを務め、2014年にフェイスブックに転職。東京大学大学院経済学研究科で論文研究をした経歴も持つ。ラーゲリン氏が入社したことで、メルカリUSにグーグルなどから人材が流入した。

現在の役員(創業者含む)のメルカリに参画した年を見ると、2013年が5人、2014年が2人、2015、2016年はそれぞれ4人だが、2017年はもっとも多い7人。

2017年後半に話題になったのは、前出の青柳氏が代表取締役に就任した金融事業を担う子会社「メルペイ」の設立。役員には青柳氏はじめ、LINE Pay事業を担当した曾川景介氏らが就任した。曾川氏は、モバイル決済サービス「ウェブペイ」のCTOを務め、事業をLINEグループに売却した経歴を持つ。

子会社には若手起業家の代表格・もっち氏

メルカリの子会社には、メルペイをはじめ、Mercari,Inc.とMercari Europe Ltdのほか、C2Cマーケットプレイスを提供する「ソウゾウ」がある。

ソウゾウは、ブランド査定付きのフリマアプリ「メルカリ メゾンズ」、本・CD・DVD・ゲーム専用のフリマアプリ「メルカリ カウル」、地域コミュニティアプリ「メルカリ アッテ」を提供、シェア自転車「メルチャリ」(2018年開始予定)の運営も発表している。

2017年は、ソウゾウの役員にも注目の人事があった。16歳で初めて起業、20歳で起業した「Labit」のサービスをグノシーなどに売却してきた鶴田浩之氏(26)が7月、執行役員に就任した。

鶴田氏の通称は「もっち」。若手起業家の間で「20代有数の起業家」と言われている。2017年に、Labitの中核メンバーとともに、メルカリ(ソウゾウ)に参画し、2018年公開のスキルシェアサービス「teacha」を担当している。

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入社の経緯を振り返る、もっち氏。

鶴田氏は、「26歳までに小さな成功、失敗はたくさん経験してきた。もう少し大きな経験をしたいなと思った。自分が就職したい会社がなかったので会社を作ったのですが、今のメルカリは、唯一自分が働きたいと思った会社。心の声というか」と柔らかい物腰で入社の動機を話す。

「元起業家の方や優秀な方々が多い。仕事をすごく任せてもらえて。(メルカリに所属をしても)自分のマインドセットが変わっていなくて、(Labitのメンバーである僕たちは)コワーキングスペースで仕事をしている気分」だと言う。

なぜ、名だたる起業家はメルカリに惹きつけられるのか。その理由を鶴田氏は、

「トップの目線が高いからですよ。圧倒的に違うと思います」

と即答した。

鶴田氏と山田氏との付き合いは2011年から。世界一周旅行を終え、まだメルカリ創業前だった山田氏から「もっちくん、フリマアプリどう思う?」と聞かれた。その時は何もコメントできなかったが、その時のことを鮮明に覚えているという。ほかの起業家も含めて、山田氏とは1年に1度くらいは食事をして、「応援をしてくれた」。

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2017年にメルカリに入社したもっち氏(左)と青柳氏(右)。

2016年に、スタートアップが登壇する「IVS Launch Pad」で、Labitが運営する本のフリマアプリ「ブクマ!」についてプレゼンをした後、小泉氏や松本氏から「その場で『船に乗らない?』と誘ってもらった」という。

その後、山田氏らと話していく中で、入社を決めた。13歳からWebサービスを作り始めたもっち氏は、これまで100万、1000万人と次々とサービスのユーザー規模を増やしてきた。

「次は1億、それを30歳で達成したい。メルカリ経済圏の中でサービスを作るのは、お互いにとっていい」

エナジードリンクおじさん

メルカリへの参画について、「ついにもっちもか」と祝福や驚きの声をかけられたという。山田氏らトップの「目線」に共感した鶴田氏だが、「これだけは伝えたくて」と記者に話し始めたのが、小泉氏(メルカリ社長兼COO)とのエピソード。

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出典:鶴田さん個人のブログ「もっちブログ」

「小泉さんとも縁があって、2012年に突然、会社にピンポーンって、ノーアポで来てくれて。エナジードリンクとカップ麺を片手に、『差し入れ!』みたいな。『俺、今ニートなんだよねー』って。なぜかわからないけど、当時いろんなスタートアップに『エナジードリンクを持ってくるおじさんがいる』って言われていた。この業界ってトレンドはリセットされますが、人のつながりはずっと続くので、縁に恵まれて幸せですね」

続けて、こうも話した。

「エモい話なんですが、初めて仕事でハピネスを感じた。ふと幸せというか。メルカリにパワースポットがあるのかな。起業家でくすぶっている人は、経営陣に相談するといいと思います。アドバイスをもらったり、一緒にやろうと言ってもらえることがあるかもしれません」

山田氏が若手起業家に「種まき」

若手の起業家たちに聞くと、 こんなエピソードも。

「山田さんは、若手にすごい種をまいているって言いますよね。『どんなことをしているの?』と若手に聞いて名刺を渡して、『困ったことがあったら言ってね』と」

あるベンチャー企業の社員は、前職から現在の企業に転職後「大丈夫だった?」と声を掛けてもらったという。

グローバルの採用は海外出身者用の「Global Meetup」などから行う。新卒採用では英米に1週間、学生を派遣して報酬を払うインターンシップも実施。エンジニアの採用のためにわざわざ採用を担当するエンジニアを雇ってリファラル採用(社員の知人、友人を紹介・推薦してもらう)を強化した。海外でハッカソンを開き、優秀な人材にメルカリをアピールしている。

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採用にもさまざまな工夫を凝らし、優秀な人材にアピールしている。

撮影:今村拓馬

メルカリの山田氏は、Business Insider Japanの取材にこう語る。

「技術に投資し、一人ずつ『いい人』が入ってくることで、あの人と働きたいという人(正の循環)が出てきます。会社として『したい』ことがある前提ですが、その人が何をやりたいかをすごく重視しています。初めにこっちが何をしたいかを話してしまうと、相手がちょっと違ってもこちら側に寄せてしまうじゃないですか。無理矢理感があったりすると、結局、お互いに上手くいかない」

経営層の採用へのこだわりと、積極的な情報発信は優秀な人材を惹きつける。社員のやりがいを高めると同時に、人が人に憧れて集まる。正の循環を作り出せたことこそが、メルカリがゴールデンチームを構築できた理由だ。

(文:木許はるみ、写真:室橋祐貴、チャート制作・枝常暢子)

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