株価上昇に沸くウォール街。この好景気は本物なのか?
Peter MacDiarmid/Getty Images
「トランプ相場」が続くなか、市場関係者たちは株価上昇が続く理由を懸命に探している。
そんな中、シティグループは最悪とも言える「解説」を発表した。
「しばらく算数は忘れよう」。そんな見出しを掲げ、以下のように続けた。
アメリカの財政バランスは元々帳尻が合っていない。2016年の連邦政府の赤字は5870億ドル(約66兆9000億円)で、借入金は7590億ドル(約86兆5000億円)に増大した。何らかの策を講じない限り、今年も同様の状況になるだろう。そして、今年の政府の債務上限は1917年当時の109倍に上昇する。
トランプ大統領は国防費を大幅に増額することと、「公的金融と民間金融」を支えに1兆ドル(約114兆円)規模のインフラ投資を進めることを繰り返し、宣言している。これは、通常の国家予算計画に基づくなら、向こう10年単位で考えていると思われる。
シティの言い分を改めて検証してみよう。
シティはこうした予算の数字はもはや問題ではないという。なぜなら、何にどのくらい予算をかけようが結局は同じことで、これまでもうまくいった試しがないからだ。
赤字が増えても関係ない。
収入以上に消費しても、もちろんプラマイゼロ。
収支均衡の必要はない。言い換えるなら、昨年より赤字が増えても問題はない。すでに赤字が山積みなのだから。税収が減っても問題ない。どうせ十分に徴収してこなかったのだから。
冗談じゃない。「問題を解決する最善策は、問題をさらに大きくすること」だとでもいうのか。シティは恥を知るべきだ。
わたしたちは、財政バランスを均衡させる試みと、合理的で歳入率の高い税制の導入を諦めてはいけない。
もちろん、シティはリスクがあることを認識している。「景気回復がまだ不十分で、景気循環の波にさらされることなく、一本基調で景気が上昇するという見方には、我々は賛同しかねる。だが、たとえそうであったとしても、まずは好景気であることが重要なのだ」
好景気のその先を彼らが見ていないのは明らかだ。見通すためには論理的な計算(=算数)がいる。今はとりあえず算数を忘れていようとアナリストたちが考えているなら、株価が上昇を続けているのも納得だ。
[原文:This is how hard Wall Street is playing itself right now]
(翻訳:十河亜矢子)