ハーベイ・マッド大学。卒業生の10年後の収入は、ハーバードやスタンフォードの卒業生を上回っている。
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カリフォルニア州クレアモントにあるハーベイ・マッド大学(HMC)は、リベラルアーツを学べる小さな大学だ。この小規模大学はエンジニアリング、科学、数学の求人市場で注目されている。 事実、卒業生の10年後の収入は、ハーバードやスタンフォードの卒業生を上回っている。 さらに、現在注目されている「STEM教育(science、technology、engineering、math)」において優秀な卒業生を輩出していると評判だ。また、同大学は、アート系の卒業生も輩出している。 HMCは約800人の学生たちに、リベラルアーツを身につけることを義務づける。ここでは、科学だけでなく人文学の科目も数多く履修しなければならない。 HMCはその主要プログラムのことを「数学、物理、化学、生物学、コンピュータサイエンス、そして工学などSTEM教育における学術的集中トレーニングであり、文章の書き方や批判的思考の強化の場でもある」と説明する。またこの取り組みは、労働市場に大きな影響を与えている自動化社会に対応できる学生を育成するために、専門家の助言を反映させたものでもある。たとえば、自動運転カーは何百万人ものアメリカ人トラック運転手の職を脅かし、コンピュータの金融アドバイザーは資産管理会社の人間に取って代わっている。
数学、物理、化学、生物学、コンピュータサイエンス、そして工学などSTEM教育における学術的集中トレーニングであり、文章の書き方や批判的思考の強化の場でもある
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人材募集の効率化に人工知能を活用しているオンライン求人サイトHiringSolvedのCEOション・バートン(Shon Burton)は、「コンピュータサイエンスをある程度理解できることは価値があることだ」と、Business Insiderに語っている。 バートンは同時に「ロボットができない批判的思考を身に着けるために、学生はもっと人文科学を学ぶべき」とも指摘した。
HMCのコンピュータサイエンスのプログラムは非常に優れており、STEM教育に特化した他のエリート校に参考にされるほどだ。2016年に「仕事の現場で通用する卒業生輩出率が世界で最も高い」と評価されたカリフォルニア工科大学(以下Caltech)はHMCの教育者をキャンパスに招き、学生のコンピュータサイエンスへの興味を引き付けるような講義のトレーニングを行っている。
HMCでコンピュータサイエンスを担当する教授のジム・ボーアコール(Jim Boerkoel)は「 成功の一因はHMCが十分に練られた教育カリキュラムを構築していることだ」と語る。ボーアコールによるとHMCの学生は、リベラルアーツの大学には珍しく、コンピュータサイエンスのクラスを必ず履修しなければならない。
「コンピュータサイエンスの入門クラスは、プログラミングだけでなく、論理、ソフトウェア開発、人工知能など多岐にわたっている。また、議論を独占してしまいがちな学生が、コンピュータサイエンスに詳しくない学生を脅かさないように、入門コースを用意した」(ボーアコール)
こうした改革は、学生の男女比率にも影響を及ぼした。Computing Research Associationによると、全米における4年制大学のコンピュータサイエンス専攻の学生は、84%が男子だが、HMCのコンピュータサイエンス専攻では昨年、女子学生が初めて過半数を占める学年が卒業した。
(敬称略)
source:Forbes、Computing Research Association、 Harvey Mudd College
(翻訳:日山加奈子)