セールスフォースCEOマーク・ベニオフ氏とIBMのCEOジニ・ロメッティ氏。
IBM
ワトソンとアインシュタインがタッグを組む。
IBMとセールスフォースの新たなパートナーシップの一環として、両社のAIが連携する。
この連携は、誰もが知っている人物名を冠したタッグチームの誕生というだけでなく、小売企業が顧客の購買傾向、気象データ、業界データなどの幅広く多様なデータをビジネスに活用できるようにすることが狙い。
両社によれば、IBMのワトソンが持つ地域ごとの購買パターン、気象情報、業界データと、セールスフォースのアインシュタインが持つ個人レベルの購入行動や嗜好データを掛け合わせることで、小売企業は自動的にその地域と個人にパーソナライズされた電子メールを送信するといったことが可能になる。
IBMはまた、セールスフォースの顧客に気象データを提供し、天気がビジネスに与える影響を分析できるようにする。
この新しいパートナーシップは、昨年のIBMによるブルーウルフグループ(Bluewolf Group)買収に端を発している。ブルーウルフはセールスフォースのパートナー企業である。2億ドル(約230億円)とも言われたこの買収には、セールスフォースのCEO マーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏も賛同の意を示していた。
この10年で多くの企業がインストール型のソフトウェアからクラウド基盤のアプリケーションに乗り換えるようになり、セールスフォースの成長は加速した。一方、ソフトウェアの導入プロジェクトが収益の大半を占めていたIBMのコンサルティングビジネス(要件定義から、アプリケーション(SAPなど)の導入、ハードウェアのインテグレーション、保守/サポート)のニーズは下落傾向にあった。
だが、クラウドインフラの普及はIBMにとっては必ずしも悪い状況とは言えない。企業はセールスフォースのクラウドアプリを導入する際、自社向けのカスタマイズや既存システムとの統合に巨額のコンサル料を支払うようになっている。ブルーウルフ買収時、IBMはセールスフォース向けプロフェッショナルサービス市場の規模は1110億ドル(約13兆円)まで拡大すると予測している。
セールスフォースおよびアインシュタインの顧客企業に虎の子のワトソンとの連携機能を提供するのは、彼らに対抗するのではなく、懐に入り、その巨大なコンサルティング市場を取りにいくというIBMの決意の現れだと言える。
[原文:Salesforce will be using IBM Watson to make its Einstein AI service even smarter(IBM, CRM)]
(翻訳:太田禎一)