「M&AはITバブル期並み」 ゴールドマン・サックスのテクノロジー担当が解説

ゴールドマン・サックスの入り口

Carl Court/Getty Images

ゴールドマン・サックスのテクノロジー担当バンカーたちは記録的な取引案件を扱っている。この勢いは衰えそうにない。

同社のテクノロジー・メディア・テレコムM&Aチームのサム・ブリトン(Sam Britton)氏は「マクロ経済関連のボラティリティを除けば、IT分野のM&Aにとってはコンストラクティブな状況が今後も続くだろう」とBusiness Insiderに語った。

「(現状は)昨年の状況の延長線上にあると感じる。ただ、より忙しく、より顕著になった」

衛星サービス会社インテルサットによる衛星通信ベンチャー・ワンウェブの130億ドル(約1兆4900億円)の買収からシスコ・システムズによるアップ・ダイナミクス(AppDynamics)の37億ドル(約4200億円)の買収まで、ゴールドマン・サックスのテック・メディア・テレコムM&Aチームは、2017年1月と2月の2か月間で18件、300億ドル(約3兆4300万円)近くの取引を手掛け、取引数で2000年以来最も忙しい年はじめとなった。

背景には、工業系を含む非IT企業が自社のテクノロジー、中でもソフトウェアに関して、注目を集めたいという意欲の高まりがある。この流れは1年半~2年前に始まったものだが、ここ数四半期で急激に加速していると同社のグローバル・テクノロジー担当のライアン・リマイ(Ryan Limaye)氏はBusiness Insiderに語った。

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ライアン・リマイ氏

Goldman Sachs

リマイ氏は「広域経済が成長する中、IT業界は長きにわたって経済成長の最も著しい業界だった」といい、「その結果、IT系企業以外の多くの企業が自社のポートフォリオの中にテクノロジーを入れたいと考えるようになった」と指摘する。

非IT系企業の案件は「急増している」とリマイ氏は話す。

事実、多数の非IT系企業がIT系のアセットを求める状況に、リマイ氏は2001年のITバブルの崩壊につながる異常なほど活発だった1998年、1999年、2000年の状況を想起する。

リマイ氏は市場における最も重要な指標の1つは、工業系もしくは非IT系企業によるベンチャー投資数だという。GMやIBM、キャンベル・スープまでもが独自のベンチャー・キャピタル(VC)ファンドを持っている。

「エンタープライズ」に対する見方

2017年これまでの動きの多くはエンタープライズ(もしくはビジネスに焦点をあてたテクノロジー)とソフトウェアのセクターで起きていて、こうした流れは昨年から続いている。

「クライアントは(今年に入って)非常に大胆かつ積極的に考えている」とリマイ氏。「彼らはM&Aやそれに準ずる動きに高い関心を寄せている」

エンタープライズ関連でもっとも関心を集めているのがクラウドだ。2016年はオラクルによる93億ドル(約1兆600億円)のネットスイート(NetSuite)の買収や、サムソンによる80億ドル(約9200億円)でのハーマン(Harman)の買収、シマンテックによる47億ドル(約5400億円)でのブルーコートシステムズ(Blue Coat)の買収など、この分野の関連取引が増加した。このトレンドは続くとリマイ氏は見ている。

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キャンベル・スープのVC「エーカー・ベンチャー・パートナーズ」

Acre Venture Partners

リマイ氏は、人工知能(AI)や機械学習を扱う企業に対する関心も非常に高いが、アセットの数は多くはないという。

インターネットを介して乗り物や倉庫の設備といったデバイスをつなげるIoT(Internet of Things)の技術も同様だ。

「こうした新しい技術は非常に魅力的だ」とリマイ氏はいう。しかし、アセットはここでも不足している。つまり買収された企業は、より高額で買われているということだ。そして買収する側の企業にとっても、アクハイヤー(Acqui-hiring、訳注:「買収(acquire)」と「雇用(hire)」をかけ合わせた造語で、企業買収を通じて経営陣や技術者など有能な人材を獲得することを指す。人材獲得競争が激しさを増すアメリカのIT業界を中心に近年使われるようになった)や大量採用など、買収の魅力が増している。

アマゾンのウェブサービスやマイクロソフトのAzure、グーグルクラウドなど、主なクラウドサービスの提供企業は新たなサービスの開発を続けるだろうとリマイ氏はいう。新たなサービスが開発されれば、競合企業のプレッシャーも増す。

「昨年とは雲泥の差」

マクロ経済の明るい見通しを背景に、最近のIT系M&Aの多くは非常にスムーズに進んでいる。前出のブリトン氏は「マクロ経済に関する最近のデータは状況の良さを示している」という。

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サム・ブリトン氏

Goldman Sachs

ただ、1つ注意点がある。トランプ政権による税制改革や現金を自国に戻す動きを考えると、企業買収をするかどうかの判断は少し待つことが必要かもしれない。

ブリトン氏は、IT系M&Aのマーケットにとって現金の自国還流は、総合的に見ればポジティブに働くだろうと言うが、これは具体的な売買が、政策の詳細がもう少し明らかになってから動き出す可能性も示唆している。今後の流れに注目だ。

IT企業による大規模な買収は最近行われていない。IT業界の5大企業グーグル、アップル、Facebook、アマゾン、マイクロソフトの中では、マイクロソフトのみが昨年大きな買収を行った。

毎年2月にゴールドマン・サックスが開催するテクノロジー・カンファレンスに、今年は800人超の投資家や数百の企業を含め1000人以上が参加したとリマイ氏はいう。

彼がカンファレンス会場に姿を見せたのはランチが足りているかどうかを確認しに来た時のみだった。「今の状況は去年の同時期とは雲泥の差がある」とリマイ氏は語った。

[原文:Goldman Sachs tech bankers say we're at dot-com-level dealmaking — and here's where it's coming from

(翻訳:編集部)

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