ニーノ・ロータ、エンニオ・モリコーネに続くイタリアの巨匠、ルドヴィコ・エイナウディが、是枝裕和監督の最新作『三度目の殺人』の音楽を担当することが決定した。
第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『そして父になる』の是枝監督と福山雅治が2度目のタッグを組む『三度目の殺人』は、監督のオリジナル脚本で描く法廷心理ドラマ。福山は勝利にこだわる弁護士・重盛を演じ、彼が弁護することになった殺人犯・三隅を是枝組初参加となる役所広司が演じる。
音楽を担当するエイナウディは、世界でもっとも愛されているクラシック作曲家の1人。CDの世界セールスは150万枚を突破、楽曲の再生回数は5億4000万回以上を記録している。今回は是枝監督の熱烈なラブコールを受け、初めて日本映画の音楽を手がけることになった。
2月下旬にはエイナヴティが来日し、映画を撮影中の都内のスタジオで是枝監督と初対面を果たした。本作の制作にあたり、ずっとエイナウディの音楽を聴いていたという監督は、スタジオ内のモニターで撮影中の映像を見せながら、シーンの意味や、そこに求める音楽の意図を熱く説明した。世界的なクリエイター2人は初対面だったにもかかわらず、すぐに意気投合したという。スタジオでは主要キャストとも対面し、わずかな時間ではあったが挨拶を交わした。4月にはコンサートのために再び来日し、撮影完了後の映像を確認しながら音楽制作に入る予定だ。
『三度目の殺人』は9月全国公開予定。ほかにも広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功ら豪華キャストが出演する。
是枝裕和監督のコメント:
この半年、脚本を書きながら毎日エイナウディさんの音楽を聞いていました。自分が書いたストーリー、撮っている映画と、彼の音楽が自分の中では完全に一体化しています。エイナウディさんの音楽は凄く「映像の浮かぶ音楽」なんですよね。そこが今回選ばせていただいた一番の理由です。
勝手なぼくのイマジネーションなんですけど、彼の音楽「四次元(four dimensions)」を聴いていたら「雪景色」がまず浮かんで。雪の風景がすごく最初に出てきて、主人公ふたりの故郷を北海道という雪の街に設定したんです。なにか「火」とか「水」とか、そういう非常にシンプルなんだけどイメージの強いものを喚起させられる音だったんです。
今回の映画では「人間が人間をさばけるのか」とか、けっこう難しいテーマに取り組んでいるのですが、ヴィジュアルのイメージとしては「火」だったり、雪の「白」だったり、血の「赤」だったりと、すごく明快に、と思っています。そこにエイナウディさんの音楽がすごくフィットするのではないかな、と思っています。
ルドヴィコ・エイナウディのコメント:
このプロジェクトに関わることができて大変嬉しいです。是枝監督のことを尊敬しておりますし、是枝監督の過去の映画も、とても素敵だと思っておりましたので非常に光栄です。日本映画の音楽を手がけるのも、日本の監督さんとのコラボレーションも私の人生で今回が初めてですが、日本のことが大好きですし、本当に嬉しいです。
今回は撮影スタジオに伺って、実際に映画の映像を見ることができて、是枝監督の求めている音楽のバランスや求められている部分がわかったのでよかったです。映画の中には雪のシーンがありましたが、雪の中では周りの音があまり聞こえなくなって、自分の中にある気持ちや感情を感じさせてくれると思いますが、そのような部分を音楽で表現できたらと思っています。
(敬称略)