レックス・ティラーソン国務長官
Reuters/Jessica Rinaldi
レックス・ティラーソン(Rex Tillerson)国務長官が、エクソンモービル(Exxon Mobil)のCEOだった当時、別名のメールアドレスで同社上層部と気候変動リスクに関する内容を含む重要案件についてメールのやり取りを行っていたことが明らかになった。ニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン(Eric Schneiderman)州司法長官から州裁判所判事宛てに送られた書簡についてブルームバーグが13日月曜日(現地時間)に報じた。
エクソンモービルの気候変動リスク管理をめぐる議論は、ニューヨーク州当局の同社に対する捜査の焦点となっている。州司法省は、2008年から2015年までの少なくとも7年間にわたり、ティラーソンが「ウェイン・トラッカー(Wayne Tracker)」という別名アカウントを用いていたことを明らかにした。ウェインはティラーソンのミドルネームだ。
シュナイダーマン州司法長官は、州司法省に提出されるべきだったこの情報が提出されていないと指摘している。同社のシステム上にはこのアドレスから発信された60通以上のメールがあったにもかかわらず、エクソンモービルはそれについて申告していなかった。
同州司法省は、エクソンモービルが気候変動リスクを隠ぺいしているとして捜査を行っている。
シュナイダーマン長官の書簡は「およそ60通もの『ウェイン・トラッカー』名義のアドレスから発信されたメールが発見されたにもかかわらず、エクソンもその弁護団も、この別名アカウントはティラーソンがエクソンモービルとの通信に使用していたものだったことを公表しておらず、このアカウントからはこれまでに何も回収されていない」と指摘している。
気候活動家や環境活動家のグループは、この件に対して怒りをあらわにしている。
環境活動家団体「350.org」の広報担当は「これは大問題だ。ティラーソンが隠しアドレスを使っていたという事実は、我々がこれまで述べ続けてきたことの正当性を裏付けるものだ。つまり、エクソンは自社製品が気候変動を引き起こすことを知っていながら、利益を守るために真実を葬ってきたのだ」
さらに同広報は「何も隠すことがなければ、秘密のメールアカウントを使う必要はない。この発見によって、例えばカリフォルニア州のザビエル・ベセラ(Xavier Becerra)州司法長官のように、州司法省長官がいっそう踏み込んだ捜査を行うことを願う。『ウェイン・トラッカー』の存在は、巨大な氷山のほんの一角に過ぎず、その下にはさらに多くのごまかしがあるだろう」と述べた。
また、環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)の広報担当は「レックス・ティラーソンはエクソンモービルのCEOとして気候変動を疑問視したが『ウェイン・トラッカー』は気候変動のリスクを極めてよく理解していたようにみえる。では、その『ウェイン・トラッカー』とは誰なのか? ニューヨーク州のエリック・シュナイダーマン州司法長官によると、これは気候変動のリスクに関するメールを送信するために、エクソン時代のティラーマンが使った偽名だ」と語った。
さらにグリーンピースの広報は「これは、エクソンが気候変動について何をどのタイミングで知っていたのか、そしてどんな手を使ってそれを隠ぺいしたのかを明らかにするシュナイダーマンの捜査において極めて重要な進展だ。レックス・ティラーマンはエクソンにとって気候変動リスクが危険だと感じていたのか? それとも自社の株主や世間一般にそれが暴露される危険を懸念していたのか? その両方なのか?」とコメントした。
ティラーマンの別名アカウントが明るみに出たことで、米司法省はニューヨーク州裁判所のバリー・オストラガー(Barry R. Ostrager)判事に書簡を送り、エクソンに対し、過去の活動に関する透明性を改善し、すでに提出済みの資料に加えて、すべての関連資料を作成するよう裁判所からの命令を求めた。
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(敬称略)
(翻訳:まいるす・ゑびす)