「AIが秘めている力を開花させることができれば、誰でもそれが生み出す巨額の富を手に入れることができる」(マーク・キューバン氏)
Brian Snyder/Reuters
億万長者の起業家であり、バスケットボールチーム、ダラス・マーベリックスのオーナーでもあるマーク・キューバン(Mark Cuban)氏は、世界初の「トリリオネア(1兆ドル長者)」になりたいなら、AI産業に携わるべきだと言う。
キューバン氏は、テキサス・オースティンで開催中のサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)で、「AIが秘めている力を開花させることができれば、誰でもそれが生み出す巨額の富を手に入れることができる」と語った。
「世界初のトリリオネアは、誰も思いつかないような形でAIを現実世界に応用した人物がなるだろう」とキューバン氏は話す。
現在公開されている資産記録の中で最もトリリオネアに近いビル・ゲイツ氏さえ、1兆ドル(約113兆円)には9150億ドル(約103兆7800億円)も足りていない。ただし、ある研究は、2040年代半ばまでにビル・ゲイツが資産運用のみで初のトリリオネアになると予想する。
キューバン氏は自分の考えについて、以前にも「一般教養がキャリアにおける成功の鍵」と語っている。お金の出入りについて学ぶよりも、今後数十年は「批判的思考と問題解決能力」の方がはるかに重要になってくると彼は考える。
キューバン氏は当時、「今は会計士になりたいとは思わない。それよりも哲学を専攻したい」と語る一方で、コンピュータ・サイエンスを学ぶことの重要性についても触れており、「今何を学んでいるかにかかわらず、ディープラーニングやニュートラルネットワークのような新しいAIに関連した技術についても追いついていかなければ、いずれは取り残され負けてしまうだろう」と付け加えている。
他のIT起業家たちも、トリリオネアの誕生は必然だと話す。シリコンバレー最大のベンチャー育成学校Y Combinatorの代表サム・アルトマン(Sam Altman)氏は、「不公平に見えるかもしれないが、我々はトリリオネアが何人も存在する世界を覚悟しておかなければならない」と2016年6月、Business Insiderに話している。
不平等について研究を行う税務専門の弁護士ボブ・ロード(Bob Lord)氏は、まだ存在していない技術による富の急成長が25年から30年以内に起こると予想。
「誰も見たことがない、全く新しいものを生み出す人が現れるだろう」とBusiness Insiderに語っている。
キューバン氏はSXSWの会場の参加者に対して、労働市場で起こると予想されているAIによる雇用喪失にいかに対処するかを考えるように促し、講演を終えた。
キューバン氏は最近多くの支持を集めているベーシックインカム制度について異を唱えている。ベーシックインカムとは富を再分配し、人々の雇用状況にかかわらず給料を支給する仕組みで、AIが引き起こす雇用喪失に対処できる方法として注目を集めている。
しかし、キューバン氏はベーシックインカムではなく、より効率的な政府や雇用創出をサポートするAmeriCorps(アメリコー:米国政府から支援を受けて活動するボランティア団体)のような社会支援サービスが必要だと主張している。
[原文:Mark Cuban thinks the world's first trillionaire will work in artificial intelligence]
(翻訳:Satoru Sasozaki)