もやしはなぜ安いのか?

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日本のスーパーでは安い野菜の代名詞とも言えるもやしですが、その安さときたら他の追随を許しません。ですが、そもそも、どうしてもやしはこんなに安く流通しているのでしょうか? 知っているようで実はよく知らないもやしの真実に迫ってみました。

なぜ、もやしはこんなに安いのか?

実際に調べてみると、他の野菜と比較して、もやしが安価なのは大きく分けて3つの理由があります。すなわち、「太陽光がいらない」「土がいらない」「出荷までの期間が圧倒的に短い」というものです。

太陽光がいらない

もやしは太陽光を必要としないため、極端な話、潜水艦の中でも栽培できます。つまり、天気や季節の影響を受けることのない屋内での栽培が可能です。場所や環境に依存しない分、生産にかかるコストを大幅に抑えられているのです。現在、流通しているもやしは、太陽光を完全にシャットアウトされ、理想的な温度と湿度が保たれた環境で計画的に生産されているのです。

土がいらない

もやしは漢字で書くと「萌やし」で、つまり豆が発芽した状態、ということを示しているのですが、もやしは豆の栄養分を使って発芽するため、肥料がなくても水さえあれば育ちます。普段我々が目にするもやしは土がないところで栽培されており、肥料代も不要なため、他の野菜と比べてその分コストが抑えられています。

出荷までの期間が短い

もやしは発芽してから8日程度で出荷されます。つまり、太陽光も土もいらない環境でわずか一週間すごした後、スーパーなどに並び食卓に上がる、という驚異のスピード感を持った野菜なのです。例えば、ほうれん草の場合、種まきから収穫まで夏は25日から30日、冬はおよそ100日、レタスの場合はおよそ60日ほどかかるので、一週間という時間がどれほど短いのかよく分かるかと思います。また計画的な大量生産が可能なので年間を通じて安定供給することもでき、これもコストカットの要因となっています。

もやしの価格は40年前よりも安い

もやしの生産技術が上がり、また年中無休24時間体制での管理体制も比較的容易となり、コスト削減が可能になったという背景もありますが、もやしの価格はなんと40年前と比較しても下がっており、10年前から比較しても1割ほど安くなっています。

しかし、40年前と比較した場合はもちろんのこと、10年前と比較しても生産にかかるコストは値上がりしています。最低労働賃金は20%ほど上がりし、それに追い打ちをかけるかのようにもやしの原料である緑豆の種も10年前の3倍の価格へと高騰しているのです。これにより、かつては230社以上あったもやし生産者もこの10年で100社以上が廃業に追い込まれています。これらの事情だけを見ても、もやしはそろそろ値上げしなくてはならない時期に来ている、というのは明らかです。むしろ10年、いや20年くらい前に値上げしておくべきだったのではないかとすら思えてきます。ちなみに40年前の1977年の物価は、はがきが1枚20円、国鉄初乗りが60円、ラーメン1杯が280円だったので、40年前より値段が下がっているということがどれほど異常なことなのかが伺えるかと思います。

もやしは一種類ではない

もやし、もやし、と一括りにしてしまいがちですが、実はもやしというのは特定の植物を意味する単語ではありません。もやしというのは英語でいうと「スプラウト」であり、つまり、発芽した状態であることを意味します。日本のスーパーに流通しているもやしは主に「緑豆もやし」「黒まめもやし」「大豆もやし」ですが、「カイワレダイコン」や「ブロッコリースプラウト」までも実は同じスプラウト仲間だったのです。植物の種類に関係なく、発芽したばかりの状態、という意味なので、まだそれぞれの植物の個性が発揮されていない状態であるとは言え、大胆なグループ分けであると言えます。スパゲティもペンネもマカロニもリングイネもパスタという総称でまとめられるのと同じようなイメージかもしれません。

もやしは農産物ではない!?

前述したようにもやしは太陽光や土が必要なく、その特性から工場で計画的に大量生産されるため、農産物、というよりも工業生産物に近く、工業型農業に分類されるようです。つまりアナログな農業というよりもデジタルに限りなく近く、楽器で言うとアコースティックギターのような生楽器というよりはアナログシンセサイザーくらいの位置づけになるのではないでしょうか。計画的な大量生産が可能ということは生産量も制御可能なため、作り過ぎなどのリスクもない、ということも価格の安さに反映されているようです。

生き残るためにはイメージチェンジが必要!?

しかし、いかに言ってもその安さゆえにもやし業界はかなり経済的に圧迫されている、というのが現状です。もやし業界は、「安いからなんとなく買う」ではなく「おいしいから買う」「栄養があるから買う」「もやしがなくっちゃ始まらないから買う」という方向性に業界全体のイメージを一新させるような戦略が必要な時期に来ているのかもしれません。

例えば、デビュー前にもやし工場で働いていた、と明かしているイギリスのバンド、ジャミロクワイのボーカル、ジェイ・ケイにCMソングを作ってもらうとか、もやしの表記を漢字表記の「萌やし」に変え、もやしもんなどすでに人気のあるアニメだけでなく、「萌」という漢字に便乗してその他の萌え系のアニメなどとコラボレーションしたパッケージデザインおよびブランディングを行う、またはコンビニなどで自家栽培キットを販売し、消費者の「萌やし意識」や「萌やし知識」を高める、すでに日本語に定着している「もやしっ子」という言葉の示唆するネガティブな要素を逆手に取り、若くて色白でモテる上に話も面白いイケメン男子、というイメージに置き換えていくための策略を練る、など、これまでにはなかったような斬新な切り口の戦略で今回の危機を打破してくれることを期待したいところです。消費者の我々も、もやしイコール安い野菜、というステレオタイプを打破し、違う視点から感謝してあげる必要があるのかもしれません。

より詳しいもやしのお話が知りたい方はこちらのサイトをどうぞ。

(まいるす・ゑびす)

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