「世界で一番女性に優しい国」に選ばれたスウェーデンの取り組み

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さまざまな世界ランキングで上位に登場するスウェーデン

Dominic Ebenbichler/Reuters

スウェーデンといえば、子育ての環境環境への配慮親切心など、さまざまな分野で世界ランキングの上位に登場する。

BAV Consultingとペンシルバニア大学ウォートン・スクールは最近の調査で、スウェーデンを女性にとって世界最良の国に選んだ

スウェーデンの子ども・高齢者・男女平等大臣 オーサ・レグネール(Asa Regner)氏 は、その結果は偶然もたらされたものではないと言う。スウェーデンは、女性の権利を擁護し、職場と家庭の両方において女性を支援する仕組みを何十年もかけてつくりあげてきた。

2014年から大臣を務めるレグネール氏によれば、複数の大きな要因が現在の成功につながったようだ。

個別課税

北欧の代表的な統治モデルと言えば、所得税だ。税率はかなり高い。しかし、レグネール氏によれば、スウェーデンの女性の社会進出の成功の秘策は税金のかけ方にあるようだ。

「かなりドライで仕組み的な話をすれば、個人単位の課税が鍵だ」

彼女はBusiness Insiderにそう語った。スウェーデンの所得税は1971年に、個人単位での申告になった。既婚者であろうと、一家全体でなく個人のニーズに応じて社会保障が給付される。

「わたしたちは性別にかかわらず、個人を対象に課税している。そのような考え方を持ち、1970年代に導入した政策を今も意識しているということは、政治にとって良い循環だ」

育児休暇

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Swedish Pavilion at Shanghai Expo 2010 via flickr Creative Commons

スウェーデンは育児休暇制度が世界で最も充実している国だ。子供が8歳になるまで、合計480日を両親で分け合うことができる(給料の8割が支給される)。また、父親はそのうち90日間の使用を保証されている。

この制度はスウェーデン人に他の国にはないワークライフバランスをつくりあげることを可能にした。それぞれの家族にとって、職場と家庭で過ごす時間の配分が簡単になり、出産したての母親などは特に、子どもとたっぷりと時間を過ごすことができる。

多くの研究はこのような仕組みが女性の労働力を増やすために理想的であることを示している。

多くの場合、母親が働くことには代償が伴う。出産のために仕事を離れることを懸念され雇用の機会が減り、産休から戻った女性でさえも、産休前と同じ給料を受け取ることは難しい。

レグネール氏は、「スウェーデンはこのような苦悩を取り除いた」と語る。最近の彼女の最大の使命は、父親の育児休暇の比率を増やすことだ。2014年、480日の育児休暇のうち父親が取ったのはたったの25%で、母親が75%だったが、レグネール氏の目標はこの割合を半分ずつに近づけることだ。

監査

レグネール氏が現在取り組んでいるのは、「対等の仕事に対する対等な賃金を」というスウェーデンの法律を企業に順守させることだ。

2008年、スウェーデンは新たな差別禁止法を採択し、25人以上の企業を対象に男女の賃金差について毎年調査を実施することを義務付けた。賃金の性別格差が大きく、その差を埋めようとしていない企業は罰金を科されるリスクがある。

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Stefan Lins/Flickr

レグネール氏は、この法律は大きな貢献をしているという。しかしもっと難しいのは、看護や高齢者介護など、主に女性が担う仕事の社会での評価を変えることだ。彼女が解決しようとしているのは、考え方の違いだ。

これまで、女性の仕事が男性に比べて過小評価されている業界に政府の資金を投入してきた。給料を支払う側であるビジネスリーダーがこのような重要な仕事の領域を認識することを彼女は望んでいる。

レグネール氏はまた、新たな課題として「移民」を挙げる。2015年にはシリアとアフガニスタンから多くの移住者が流入したが、彼らの多くは男女の役割について異なる価値観を学んで育ってきた。しかし、女性の権利、暴力防止、国から国民への期待などに関する教育は、確実に効果を上げているという。

レグネール氏と彼女の同僚が、男女の条件をもっと平等にするために議論している一方、他の多くの国はいまだに、育児休暇義務や同一賃金といった基本的なサービスを提供することに苦労している。

スウェーデンが現在向き合っている問題も、世界で一番進んでいるのだ。

〔原文:Sweden is the best country in the world for women — here's why

(翻訳:一柳優心)

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