ストリーミングサービスが変えるテレビの未来

ジョン・ホデュリク(John Hodulik)率いるユービーエス(UBS)のアナリストチームは、アメリカ国民のテレビ視聴習慣がこの先数年間でがらりと変わるだろうと予測している。

彼らは顧客向けのメモで、そのきっかけとなるのはディレクTV・ナウ(DirecTV Now)、スリングTV(Sling TV)、ユーチューブTV(YouTube)のような新しいTVライブストリーミングサービスだとした。

これら新興サービスの提供内容はごくシンプルで、従来視聴者がケーブルや衛星を経由して購読していたテレビ番組チャンネルがスマートTV・ラップトップPC・スマートフォン経由で提供されるというものだ。既存の有料テレビに加入していない若い視聴者にとってこれら柔軟なパッケージが魅力的に映るだろうというのが、背後にある考え方だ。

UBSはこのモデルがうまくいくと考えている。アナリストは、2020年までに1500万人がこういったストリーミングテレビサービスに加入すると考えている。この分野に参入するとされる事業者には、公式に発表済みのHulu、噂レベルのアマゾン、そして常にあいまいなアップルがいる。数字的には米国の全世帯人口の13%の市場となる。

以下のグラフはUBSによる今後数年間のマーケット成長予測だ。

スクリーミングTVの視聴者数

だがここで疑問が生じる。こういったサービスが数年でこれほどまで視聴者を獲得できるとして、なぜそれが今すぐ起きていないのだろうか?

UBSはそこに3つの阻害要因があるとする。

  • ライブストリーミングの品質。これはスリングTVやディレクTV・ナウのようなサービスの大きな弱点だ。月額料金に含まれるチャンネル数の多さでお買い得感を打ち出していても、そのパフォーマンスは現状で満足のいくものとは言えない。ケーブルテレビのスムーズな体験に慣れている視聴者にとって、テレビはつけたらいつでも見られるものだという期待に反し、時々調子が悪くなるサービスは受け入れがたい大問題だといえる。だが、ストリーミングテレビが不安定だという評判は今後変わるかもしれない。わたしたちはまだそれが実際に証明されたところを目撃していないが、ユーチューブ(YouTube)とHuluはともに大規模なオンラインビデオ配信を扱う力量を強調する。UBSはこの点について「彼らのこれまでの実績と強いブランド力を考慮し、わたしたちは2017年第2四半期にグーグルとHuluが提供開始するサービス、そして2018年にアマゾンが提供すると噂されるサービスは、これまでのストリーミングサービスにつきものだった品質問題の多くを解決し、ストリーミングテレビが再び注目を浴びるようなものとなると予測する」としており楽観的だ。
  • チャンネル数。これはストリーミングテレビサービスにとってのもろ刃の剣だ。この種のサービスの長所は「スキニー(痩せた)バンドル」という、従来の有料テレビと比較して少数のチャンネルを月額35〜40ドル(約4000〜4500円)という低価格で楽しめるというもので、これは月額100ドル以上かかるケーブルテレビ料金に二の足を踏む若い世代にとっては魅力的に映る。一方で低価格と引き換えにチャンネル数では我慢を強いられる。たとえばユーチューブTVは月額35ドルだが、CNN、TBS、TNT、ヒストリーチャンネル、AMC、A&E、コメディ・セントラル、HBOといった人気チャンネルは含まれない
  • 消費者の意識。これは上記の新サービスが市場に投入され人気を獲得するにつれ、改善するものと見られる。

データ転送料ビジネス

このストリーミングテレビ革命は、既存の有料テレビ事業者にどのような影響を与えるのだろうか?

これら新規サービスに共通する積極的な低価格設定は、事業マージンが極度に薄いことを意味する。マージンを厚くとっている既存の有料テレビと比較すればそれは明らかだ。つまり誰かがケーブルテレビをストリーミングテレビに乗り換えるたびに、ケーブルテレビ事業者は収益を(ときとして大幅に)失うことになるわけだ。だがUBSは、その多くがインターネット接続サービスも提供しているケーブルテレビ事業者は、逸失したビジネスをストリーミングテレビの視聴に不可欠なデータ転送への課金で取り返すことができるだろうと予測する。

「多くの場合、視聴者がストリーミングテレビに支払う金額は既存有料テレビの半額以下だ。だがケーブル事業者のビジネスはブロードバンド通信料と、より高速な接続プランからの収入で上向きとなるだろう。投資家は新しいストリーミングテレビサービスがケーブル事業者に与える経済的打撃を憂慮しているが、私たちはその影響は対処可能な範囲内だと考えている」

UBSは、衛星テレビ事業者にとっての状況はそこまで楽観的ではなく「打開は困難」だとする。唯一出口が見えそうなのはディレクTVを擁するAT&Tで、彼らはワイヤレスでテレビを配信する通信基盤として5G無線通信ネットワークを確立し、この困難を乗り切ろうとしている。それが実現すれば、データ転送に課金できるケーブル事業者と同じく有利な立場に自身を置くことができるからだ。だが5GテクノロジーがAT&Tが思い描くようにワイヤレステレビ規格の王者として君臨することができるか、判断を下すのは時期尚早だろう。

[原文: 15 million Americans could flock to disruptive live-TV packages from Hulu, YouTube, or even Amazon

(翻訳:太田禎一)

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