「低価格戦略」「高級ブランド化」二兎を追うアップル

アップルの広告

他社とは一線を画するアップルの広告。

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アップルユーザーはいつもアップル製品の価格に不満を持っていた。「アップル税」などと呼び、他社の同程度の製品よりも、高いコストをアップルに支払ってきた。優れたデザインと使いやすいソフトウエアを手にするのだと自分自身を納得させて。

これはアップルが成し遂げた成果と言える。同社の製品は他社のものとは一線を画し、高級品として販売されている。2万ドル(日本では230万円以上)で販売されたゴールドのApple Watchを思い出してほしい。

しかしアップルは21日火曜日、新たに低価格のiPadを発表し、また最も低価格のiPhoneをアップグレードして、同社が価格面でも競争力を持ち始めたことを示した。

もし同社が潤沢なキャッシュを生かして、競合製品よりも安い価格を設定し、製品全体の価格を引き下げるようなことになれば、大変な事態が生じる。

21日、アップルは高品質かつ高速で、大型のiPadの価格を330ドル(日本では3万7800円)まで下げた。サムスン、レノボ、マイクロソフトのタブレットよりも低い価格だ。アップルはすでにハイエンドのタブレット市場を独占していたが、ついに競合品の大半を下回る価格の製品を送り込んできた。

iPhone SEはストレージ容量が2倍になった。一新されたわけではないが、同社が最も安価なiPhoneも重要視していることを示した。

アップルに詳しいアナリストのネイル・サイバート(Neil Cybart)氏は、先週、アップルは「製品を低価格化し、ユーザーがより手に入れやすいものにしようとしている」と述べた。前述の2つのデバイスの価格は、同氏の発言を裏付けた。

また彼は、159ドルのAirPodsが、他のほとんどのワイヤレスイヤホンよりも低価格であることや、269ドルのApple Watchが割安(実際にサムスンやFossilなど、他のアンドロイドのスマートウォッチに比べて安価)であることを指摘している。

彼の素晴らしい分析には、アップルの戦略の変化に対する持論も含まれている。例えば、AirPodsやApple Watchといった製品は、同社にとっては、より多くの人にiPhoneを買ってもらうための「目玉商品」なのかもしれない。もしくは同社は、大量生産が得意になっただけかもしれない。

しかし、アップルが低価格化戦略を強力に打ち出してきたことへの、筆者が共感する説は、「CEOのティム・クック氏が高級品戦略も同時に推進させたいから」というものだ。サイバート氏は、以下のように述べた

顧客のセグメンテーション:アップルは製品の価格設定を通して、ユーザー数を拡大しようとしている。まずは、製品を入手しやすいものにするために、低価格帯の製品を整理し、分かりやすくする。一方、高価格帯のユーザーをターゲットとして、ハイエンド製品の価格を引き上げる。高価格帯の製品は、同社の全体的な利益率を高める。

9月の発表が予想されている新しいiPhoneは、より高価格(1000ドル以上)になると噂されている。最新の3Dセンサー、2つのカメラ、有機ELディスプレイなど、これまでよりも高価なパーツが採用されるからだ。

しかしそれと同時に、同社が高級ブランドへと変身を遂げようとしていることも大きな理由だろう。実際、中国では、iPhoneを所有することがステイタスになっている。

アップルの高級ブランド化と、より高価格な製品を展開しようとする思惑は、1000ドル以上もするApple Watchを発売したことからも明らかだ。同社のリテール部門の責任者は、以前、バーバリーのCEOを務めていた。最近のApple Watchのマーケティングは、デルよりも、グッチやルイ・ヴィトンなどの「より感情に訴えかけるような製品」のマーケティングに近い。

高級ブランドへの変身を図るアップル

アップルは低価格化戦略と同時に、高級ブランドへの変身を図っている。

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アップルの立場に立てば、成長し続けることは決して簡単なことではない。同社はすでに世界で最も時価総額が高い企業だ。

同社はインドのような場所も含め、世界中でより多くの製品を販売しなければならない。成長を続けるためには、より手頃な価格の製品が必要だ。

しかし、アップルは高い利益率も維持しなければならない。低価格化戦略と同時に、高級ブランドへの変身を図っているのはそのためだ。iPad Proは600ドルで登場した。今回、新しいiPadに置き換えられたiPad Air 2よりも高額だった。

サイバート氏が指摘するように、これは他のIT企業には真似できない芸当だ。おそらく、マイクロソフトでさえも。しかしアップルの戦略にはリスクもある。ユーザーから単なるはやりの企業として見られたり、今の製品がもうアップグレードする必要がないほど「十分なもの」と思われてしまう可能性もある。

アップルは、エントリーレベルの製品からハイエンド製品まで、あらゆる製品を展開しようとしている。安価なiPadの登場は、アップルの戦略の変化も意味している。

source:Apple

[原文:Apple is abandoning its expensive image

(翻訳:一柳優心)

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