ルパート・マードック氏
Thomson Reuters
ルパート・マードック氏が、苦境に立つ血液検査スタートアップ、セラノス(Theranos)の株式1億2500万ドル(約139億円)相当わずか1ドルで売却したとウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
関係者によると、セラノスがマードック氏の株式を1ドルで買い戻した。同紙は、マードック氏がセラノスへの投資を損失として計上し、数百万ドルを節税するとの見方を示している。
一時はヘルス分野のスタートアップとして高い注目を集めたものの、プロダクトの精度に対する疑念で信用が落ちたセラノスにとって、今回の株式売買は新たな課題だ。マードック氏はセラノスの問題を最初に報道したウォール・ストリート・ジャーナルの親会社ニューズ・コーポレーションの会長を務めている。
希望を探して
マードック氏によるセラノス株の売却は、マードック氏が合意しなかった新しい株式制度をセラノスの取締役会が承認した後のことだという。新制度の下、セラノスは同社に対して訴訟を起こさないと約束した投資家にのみ、追加の株式分配を行う計画だ。これらの株式はセラノスのCEOで創業者のエリザベス・ホームズ(Elizabeth Holmes)氏から直接与えられるという。
セラノスのディレクター、ダニエル・ワーメンホーブン(Daniel Warmenhoven)氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、ホームズ氏を「無私無欲で、セラノスの成功に対するコミットメントを反映した品位がある」と称し、同氏保有の株式を手放す今回の決断を評価した。「新しい制度下で彼女の持ち株率が下がれば、セラノスに対するコントロールも低下するだろう」
ただ、マードック氏は、新たに株を受け取るよりも、保有する株式の売却を選択したとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
マードック氏の代理人はコメントを拒否、セラノスからはこれまでに回答を得られていない。
セラノスの問題が表面化したのは2015年10月、ウォール・ストリート・ジャーナルが同社の血液検査の精度に対する疑念を報じたのがきっかけだ。2016年にはカリフォルニア州北部にあったセラノスの検査センターが閉鎖され、ホームズ氏は2年間、医療検査に携わることを禁止された。
セラノスは現在、投資家や患者、そして2016年6月に契約の不履行を訴えられ、関係を解消したかつてのパートナー、ウォルグリーン・カンパニーから訴訟を起こされている。同社は今年1月、スタッフの41%をレイオフした。2016年10月に検査センターを閉鎖した際にも約340人が会社を去った。新制度の下では新たに155人を削減し、同社に残るのは220人となる。
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[原文:Ruport Murdoch reportedly sold $125 million in Theranos stock for just $1 (NWSA)]
(翻訳:山口佳美)