トランプ「ロシアゲート」疑惑に迫るFBIと議会

FBI Director James Comey Jr.

下院の情報特別委員会で米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官は「トランプ氏の選挙陣営とロシアの関係について、昨年7月から捜査している」と初めて明かした。

Chip Somodevilla/Getty Images

トランプ政権のホワイトハウスは誕生からわずか70日あまりで、トランプ版ウォーターゲート事件「ロシアゲート」という疑惑の中心となった。ロシアが昨年の大統領選挙で、トランプ氏が勝利するように干渉した可能性が急に現実味を帯びてきた。

その引き金は3月20日、米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官が議会で行った「爆弾発言」だ。

5時間半におよんだ下院の情報特別委員会でコミー長官は、「トランプ氏の選挙陣営とロシアの関係について、昨年7月から捜査している」と初めて明かした。同長官は、大統領選挙の終盤で、ヒラリー・クリントン氏が国務長官時代に私用のメールサーバーを使い続けた問題で捜査を再開すると公表。数日で捜査の終了を発表したが、「eメールゲート」騒ぎはクリントン氏の敗因につながり、同長官は「トランプ寄り」とみられていた。

「プーチンはクリントンが嫌いだった」とFBI長官

Mural Depicts Donald Trump And Vladimir Putin

Sean Gallup/Getty Images

しかし、同じ人物が、今度はトランプ氏の「ロシアゲート」捜査を率いている。以下は、議員の質問に対する長官の答弁のうち、重要なものだ。

Q. 事件の焦点は?

「ロシア政府が2016年大統領選挙に干渉しようとした試みについて捜査している。それは、トランプ選挙陣営に関わった人物と、ロシア政府の間にあった全ての出来事も含む。トランプ選挙陣営がロシア政府の狙いに加担したかどうかも含めた捜査だ」

Q. ロシア政府は、なぜ選挙に干渉をしたかったのか。

「プーチン大統領は、クリントン元国務長官が嫌いでしょうがなかった。コインの裏側ということで、大嫌いな人物の対立候補をプーチンは明らかに好んでいた」

Q. ロシア政府は敵国か。

「イエス」

(*注:これは、トランプ氏が選挙戦中、プーチン大統領を讃える発言を繰り返していたため、民主党議員が改めて確認をしたもの)

Q. トランプ大統領の側近とロシア政府関係の捜査が、なぜ重要なのか。

「アメリカは、真に丘の上に輝く街だと私は信じている。アメリカが世界で輝いているのは、時に混乱もあるが、自由で公正な素晴らしい民主主義と、それを支える選挙制度があるからだ。だから、外国が民主的なアメリカの選挙に干渉し、破壊し、汚すのは、とても深刻な問題だ。これはアメリカの存在を脅かす行為でもある。したがって、外国によるアメリカへの干渉に米国人が加担しているのであれば、これほど重大な事態はない。FBIはこのために『誰が何をしたのか』を解明しようとしている」

Q. 現トランプ政権の要職にある人物で、ロシアに通じているものはいるか。

「言えない。捜査は常に犯罪行為があったかどうかも調べる」

コミー長官は、神聖な民主的選挙が外国政府の手を借りたアメリカ人によって犯されることが重大な問題であること、トランプ氏側近に違法行為があった可能性も捜査していることを明らかにした。これが、選挙参謀ではなく、トランプ氏本人であれば、大統領自身が犯罪捜査の対象となる。これが、ニクソン大統領の「ウォーターゲート」事件にちなんで、「ロシアゲート」と言われる所以だ。

この爆弾発言で株価は大幅に下落、トランプ氏の支持率も就任以来最低の37%にまで落ち込んだ。

女婿と側近が議会で事情聴取

果たしてロシアゲートが本当の「事件」になるのか、捜査がいつ終わるのかについて、コミー長官は明らかにしなかった。しかし、もう1つ、「ロシアゲート」を調査している機関がある。連邦議会だ。

ホワイトハウスは27日、トランプ氏の娘婿で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏が、上院情報委員会で、大統領選挙とロシア政府の干渉について、証言することを確認した。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ホワイトハウスの当局者が、同委員会で聴取されるのは初めて、という異例な事態だ。

また、下院情報委員会は、昨年夏までトランプ陣営の選対本部長だったポール・マナフォート氏を召喚したことも公表している。マナフォート氏は2005年から4年間、プーチン大統領の利益を膨らますための情報宣伝活動を提案し、ロシアの富豪から年間1000万ドル(約11億円)の報酬を得ていた。

オンラインメディア「Axios」のマイク・アレン氏は、3月23日の早朝のメルマガでこう指摘した。

「1000万ドルもの報酬は、根性が小さくては払えない。敵をめちゃくちゃにするために支払う金額だ」

上下院の情報委員会での宣誓の下、トランプ氏側近が行う証言で、一体何が出てくるのか。トランプ氏の側近かトランプ氏本人が、選挙で有利になるような情報活動をロシア政府に依頼したのであれば、まさに世界はひっくり返る。政権の正当性にも大きな疑問符がつく。

トランプおろしと#clause8

さらにFBIと連邦議会のロシアゲート追及以外に、トランプ大統領おろしの動きとして、合衆国憲法第1条第9節第8項に定められた「報酬条項違反」というものが浮上している。第8項を意味する「Clause 8」は、Twiterでハッシュタグができたほどだ。

第8項は、米首脳や要職にある者が、議会の同意なく、国王や外国政府から報酬などを受けるのを禁止したもの。トランプ氏は世界中に豪華ホテルやゴルフ場を経営しているが、外国政府要人や外交官が利用すれば、トランプ企業=大統領に収入が生じるという解釈だ。トランプ氏は事業を全て、2人の息子に移譲すると発表はしたが、持ち株などを放棄したのかなどは、全く不明だ。

27日現在、約92万人の署名を集めている非営利団体「Impeach Donald Trump Now」も、「大統領が事業からの撤退を拒否していることは、すなわち報酬条項違反だ」と主張している。

ドキュメンタリー映画監督のマイケル・ムーア氏は、ソーシャルメディアでこう要求した。

「民主党は、国家非常事態宣言をするべきだ。アメリカ史上初めて、大統領とその側近がスパイ活動の調査を受けた。そしてそれをトランプびいきのFBI長官が発表した。これはオレたちの民主主義に衝撃を与えるものだ。上下両院の民主党首脳は、この重大犯罪の容疑者ドナルド・J・トランプの名のもとに行われる全政府業務を停止させなければならない」

3月27日現在、非常事態宣言には至っていない。しかし、アメリカが世界の金融や経済に与える影響を考えると、異常に緊迫した状態にあることを意識していなければならない。

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