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アップルの千年王国計画 —— いかにしてグーグルやマイクロソフトに打ち勝つか

ティム・クック氏

アップルの熱心なファンたちは、同社が目新しさとエレガントさに欠ける製品を開発していることを懸念している。

Getty/Justin Sullivan

アップルのCEOティム・クック氏は2016年の夏、同社は「この先、1000年存在する」というビジョンを明らかにした。

しかし同氏の遠大な見通しは、増え続けるライバル企業や、同社を弱体化させかねないウィークポイントにすでに脅かされているようだ。

何点か具体的にあげてみよう。

また同社の熱心なファンたちは、同社の戦略がずれ、同社が洗練された画期的な製品ではなく、目新しさとエレガントさに欠ける製品を開発していることを懸念している。そして、新しいiPhoneや謎に包まれたApple Car、あるいはスマートグラスなどを熱望する声が広がっている。

これは長期的なビジョンを掲げる同社にとって、あまり安心できる状況ではない。アップルのCEOに就任してから数年も経っていないクック氏にとって、やらなければならないことは多い。

しかし、アップルが魅力を失ったという考えに不安を抱く一方で、一歩引いて、同社がその未来を守るためにこれまでに行ってきたことを見てみる価値はある。1000年には十分ではないかもしれないが、同社が未来に向かってやみくもに進んでいるわけではないと安心できる。

子どもたちに見いだすアップルの将来

短期的には「アップル税」などとやゆされる他社製品よりも高い価格を下げ、より広範囲のユーザーを獲得しようという試みだ。

例えば同社は3月21日火曜日(現地時間)、新たにiPadの低価格版を発表し、また最も安価なiPhoneをアップグレードした。そこには機能ではなく価格でアンドロイドと勝負しようというアップルの戦略が反映されている。

iPadの低価格版は一般ユーザーにとっても朗報だが、同社にとっては「学校」というより安定的な新市場の開拓につながるだろう

iPad

新しいiPadは3万7800円(税別)から

Apple

学校は同社にとって大きなターゲットだ。クック氏はアップルの人気プログラミング言語「Swift(スウィフト)」が、子どもたちがプログラミングに関心を持つ大きなきっかけになってほしいと度々口にしている。Swiftはさまざまなデジタルガジェット用のソフトウェア開発に使えるが、やはりiPhoneやMacとの相性がベストだ。

言い換えれば、同社の短期的戦略は極めて分かりやすい。できるだけ多くの人に同社の製品を使ってもらうこと。特に幼いうちから触れてもらい、そのままずっと使い続けてもらうことに重点を置いている。

iPhoneを越えて

アップルについて最も重要な点は、iPhoneの売り上げ拡大が最優先事項だということ。iMessageからAirPodまで、全てはユーザーにiPhoneを使い続けてもらい、アンドロイドに移行させないために開発されている。

これは短期的には変化しないだろう。理由は非常に単純で、Amazon Echoのような端末が普及しつつあるとしても、今のところ、持ち運びのしやすさと電源供給の問題の最適なバランスは依然、スマートフォンだからだ。

HoloLens

マイクロソフトは将来、家庭の中のスクリーンが同社のホロレンズ(HoloLens)のような端末に置き換わると考えている。

Microsoft

しかし、スマートフォンの優位性は永遠には続かないだろう。クック氏を含め多くの人々が次に来ると考えているのは、AR(拡張現実)だ。

特にマイクロソフトは、ARはスマートフォンを時代遅れのものにすると考えている。必要なすべての情報が直接、視野に投影されるなら、スマートフォンを持ち歩く必要などないだろう。

マイクロソフトやマジックリープ、グーグルなどは、アップルが乗り出す前にこの新しいマーケットを獲得しようと取り組みを急いでいる。

こうした動きは間違いなく、アップルを守勢に回らせている。単なるアンドロイド端末の登場以上に、同社の最大の武器であるiPhone全体を脅かす大きな、そして確かな脅威だからだ。従ってクック氏の抜け目のない動きは、同社のファンや株主にとって安心材料のはずだ。

未来への基盤

アップルはすでに静かに、しかし確実に未来に向けて歩み出している。

ARの利点は欲しい情報を入手するためにスマートフォンをのぞき込む必要がないことで、これは実はアップルが追求してきたことだ。Apple Watchはメッセージの受信や電話の着信などを表示するし、Siriと連携したAirPodは音声で情報を伝える

ホログラム(立体映像)などARが生み出すトリックのような派手さはない。しかし、マイクロソフトとマジックリープの両社が先進的なARヘッドセットを発表しながらもユーザーの拡大に苦心しているのとは対照的に、アップルが今すぐにでも実生活で活用できるテクノロジーに焦点を当てている点は評価できる。

さらにアップルは、グーグルグラスのような独自のスマートグラスを開発中とも伝えられ、完成すればこれまで欠けていたビジュアルデバイスのラインナップが埋まることになる。

Apple Watch

アップルが今すぐにでも実生活で活用できるテクノロジーに焦点を当てている点は評価できる。

ChinaFotoPress / Getty Images

さらに重要な点は、どのアップル製品でも最適な状態で使用するには、iPhoneとの同期が必要という点だ。これはユーザーが新製品を試す際にも慣れ親しんだ環境や使い勝手を提供し、新旧製品の橋渡しとなる。

もしアップルがアマゾンのEchoに似た、Siri搭載のスマートスピーカーを発売したときには、iPhoneへの接続が必要となるはずだ。そして長距離Bluetoothテクノロジーを搭載した同社製のW1チップが使われるだろう。

いつの日かアップルは、同社の製品やサービスを接続するためにiPhoneを使うことをやめるだろう。同社の新世代製品を同期させるためにiPhoneは必要なくなり、iCloudや他のサービスが新しい手段を提供するはずだ。

千年王国

アップルの戦略は不変だ。ユーザーに1つの製品を購入させるのではなく、同社製品で構成したエコシステム全体(しかも安価ではない)に関わらせ、同社製品だけを使わせる。アップルはIT企業であると同時にライフスタイル・ブランドなのだ

iTunes

YouTube/EveryAppleAd

どんな製品も永久に続くものではないことをアップルは理解している。それこそがアップルの遠大なビジョンの極意だ。

新製品や新技術がiPhoneの時代に終わりをもたらすかのように見える中で、アップルは今後も長年にわたってユーザーを自社のエコシステムに結びつけておく巧妙かつ強固な基盤をすでに築いている。

1000年続く企業を作ろうとするなら、好発進と呼べるだろう。

source:Apple、Microsoft、YouTube/EveryAppleAd

[ 原文:How Apple can silence the haters, crush Google and Microsoft, and build a thousand-year empire]

(翻訳:Tomoko.A)

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