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東芝は3月29日、同社の原子力子会社であるウェスチングハウス(WH)がアメリカ連邦倒産法11条(Chapter 11)の適用を申請したと発表した。巨額の損失を負うWHを連結対象から外して、海外原発事業から撤退することで、崩壊寸前の東芝は生き残りをはかる。
発表文によると、WHは29日(現地時間)、同倒産法に基づく再生手続きをニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てた。WHと英・東芝原子力エナジーホールディングスが抱える負債総額は、2016年末時点で98億1100万ドル(約1兆900億円)。WHは、2016年度の通期決算より東芝の連結対象から外れる。
2006年のWHの買収では、三菱重工業やゼネラル・エレクトリック(GE)などのライバルに競り勝ち、破格の54億ドルで獲得。当時、WHの原子炉「APシリーズ」を手中に収めた東芝は、アメリカやアジアでの受注を拡大させ、世界の原発市場における覇権を握ろうと目論んだ。140年以上の歴史を誇る東芝は、主軸の一つである半導体メモリー事業を分社化して、その株式を売却するとともに、他のノンコア事業や資産をも売り払う方針だ。今後、「新生・東芝」はエレベーターや水処理などの社会インフラ事業と、火力発電などのエネルギー事業に軸足を置く。
WHは当面、事業を継続する予定。その間の運転資金を確保するため、同社は、DIPファイナンス(Debtor-In-Possession Financing)と呼ばれる方法で8億ドルの資金を調達する。DIPファイナンスは、民事再生法などを申し立てた企業が、申し立て後の一定期間に一時的な運転資金の融資を受ける方法。発表によると、東芝は、そのうちの2億ドルを上限として債務の保証を行うという。
東芝は、WHの非連結化による影響額は確定できていないとした上で、2016年度の純損失が1兆100億円となる可能性があると発表。同社は当初、2月14日に決算を適時開示する予定だったが、発表を延期してきた。東芝は独自の見通してとして、昨年度の純損失を3900億円(2月14日時点)と公表していた。
3月29日の記者会見で話す東芝・綱川智社長
中西亮介
東芝の綱川智社長は29日、記者会見の中で「このような事態になったことに大きな責任を感じている。問題の改善と収拾に全力で取り組んでいきたい」と述べた。 「(WH買収について)今から振り返ると非常に問題のある判断だと思っているが、当時としては仕方がなかったのだろう」と綱川社長は話した。
今月15日、東芝の株式は東京証券取引所の監理銘柄(審査中)に指定された。同社は財務基盤の立て直しを図るため、三井住友銀行やみずほ銀行などの主力行と調整を行っているという。 また、複数の報道によると、東芝は30日に半導体メモリー事業の分社化を臨時株主総会で決議するという。
*この記事は東芝・綱川智社長のコメントを追加し、更新しました。