スペースXが日本時間31日、ブースターを再利用したロケットの打ち上げに挑戦

スペースX(SpaceX)にとって、それは歴史的な瞬間となる。

米国時間3月30日午後6時(日本時間31日午前7時)、イーロン・マスク氏が設立したスペースXは、昨年4月に打ち上げ、回収したロケットのブースターを再利用したロケットを発射する。

今回、再利用されるブースターは、2016年4月8日に人工衛星を地球周回軌道へ送り届けるため、スペースXが初めて打ち上げた全長229フィート(約70m)のファルコン9ロケットのものだ。燃料を使い切った後に切り離され、高速で地球に落下したこのブースターは、プログラムにより自ら体勢を制御して、太平洋に浮かぶドローン船の甲板上へ自動着陸した。

今回の再利用ロケットの発射が成功すれば、マスク氏がかねてより公言してきた、宇宙輸送のために必要とされる莫大なコストの大幅削減への第一歩となる。

これはいまだかつてない試みだ。ロケット部品は打ち上げ後、海へ墜落し、回収されることなく放置されるのが常であった。多段式ロケットの最も高価な部品であり、時に数千万ドル(数十億円)ものコストがかけられるブースター部分も例に漏れず、海の底に捨て置かれてきた。

スペースX社のCEOであるグイン・ショットウェル(Gwynne Shotwell)氏は、ブースターを再利用することで、人工衛星の打ち上げや宇宙ステーション用物資の輸送にかかる打ち上げ費用は約6200万ドル(約69億円)にまで抑えられ、約30%のコスト削減につながると話す。

スペースX社の軌道ロケットシステムは、すでに世界で最も安価なサービスだが、この試みが成功すれば、顧客となる企業は1回の打ち上げで1800万ドルものコスト削減が見込める。

米国ジョージワシントン大学宇宙政策研究所所長で国際宇宙政策の専門家、また歴史学者でもあるジョン・ログスドン(John Logsdon)氏は「革命的な試みとなる可能性がある」とBusiness Insiderに語った。同氏によると、「宇宙進出において、再利用は長きにわたって探求されてきた至上命題」であるという。

ログスドン氏が「可能性」という言葉を使ったのは、使用済みブースターの回収に成功しているとはいえ、スペースXは現状、ブースターの再打ち上げ、再着陸に成功していないからだ。今回の打ち上げは、まさにこの現状を打破する“可能性”がある。

中古ロケットの信頼性

フロリダのケネディ宇宙センターにある、39Aロケット発射場からほど近いハンガーには、回収された使用済みブースターが並べられている。

フロリダのケネディ宇宙センターにある、39Aロケット発射場からほど近いハンガーには、回収された使用済みブースターが並べられている。

今回のようなデモンストレーションを兼ねた打ち上げは、ロケットが意図された性能を発揮できることを証明するためにも重要だ。しかし、新しい試みには失敗の危険性がついて回る。

そのため、デモンストレーションを兼ねた打ち上げでは、数百万ドルもする周回軌道衛星など、高価な貨物の積載を避ける傾向にある。しかし、ルクセンブルクに本拠を置く通信会社で、スペースXと長年の取引があるSESは、再利用されたブースターを使った初の宇宙輸送に意欲的だ。今回のデモンストレーションでは、中南米の大部分でインターネットとテレビ放送の配信を行う、同社の通信衛星SES-10を打ち上げる。

SESのグローバルコミュニケーションディレクター、マルクス・ペイエ(Markus Payer)氏によると、今回の打ち上げに関する契約は2016年8月に締結されており、本来であれば2016年内に打ち上げが行われるはずだった。しかし9月1日、別の打ち上げにおいてスペースXの無人ロケットが爆発事故を起こし、4カ月間にわたって行われた事故調査のあおりを受け、予定されていたSES-10の打ち上げに遅延が生じたという。

エアバス・ディフェンス・アンド・スペースによって製造されたSES-10通信衛星。地球周回軌道に乗った後、SESの所有物として運用される

エアバス・ディフェンス・アンド・スペースによって製造されたSES-10通信衛星。地球周回軌道に乗った後、SESの所有物として運用される。

「我々はリスクを恐れない。そうでなければ、衛星を打ち上げようなんてことは考えない」

ペイエ氏に、過去の爆発事故を気にする様子はない。

「私たちは長年この事業に従事してきた。こういうこともある。(爆発事故後も)スペースXに対する我々の信用は揺らがなかった」

SESはスペースXに対して支払った費用について明らかにしなかった。また、スペースXも、SESへの請求額を回答しなかった。

ログスドン氏は、「今回の打ち上げがデモンストレーションであることを考慮すれば、SESは30%程度の割引を受けているか、もしくは一切の報酬を支払っていない可能性すらある」と語った。

スペースX:Flickr

スペースX:Flickr

スペースX社は、当初から再利用を前提にブースターの設計を行っている。そして、数千万ドルという建造費の大部分が一段目のブースターにつぎ込まれた。

一方、(灯油の一種である)RP-1燃料と(燃料を燃焼させるための)液体酸素の再注入にかかるコストは約20万ドル程度であるとマスク氏は言う。

ログスドン氏は「ブースターというのは、補助的な部品ではない。1段目のブースターには9つのロケットエンジンが搭載されている。2段目のブースターに搭載されたロケットエンジンは1つだけだ。そして、このロケットエンジンこそが、最も高価な部品だ」と話す。

「この事業は打ち上げを行い、修復し、低コストで発射台に乗せ、また打ち上げるという理想像に近づきつつある」とログスドン氏は期待を込めた。

スペースXは再利用ロケットの打ち上げをライブストリーミングする予定。

[原文:SpaceX is about to try something "potentially revolutionary" in the history of space travel

(翻訳者:忍足亜輝 )

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