MITメディアラボ所長 伊藤穰一が薦める2016年の必読本5選

Joi Ito/Flickr

2016年の終わりにFacebookは世界中の62人のインフルエンサーに「今年読んでよかった本」をシェアしてくれるよう依頼した。Richard Branson、Arianna Huffington、その他の多くの方が#ReadtoLeadというハッシュタグとともに彼らのお気に入りの本を世界と共有した。今回は、その中の1人であるMITメディアラボ所長 伊藤穰一がピックアップした5冊の本を紹介する。未来はいったいどこへ向かっているのか?


「大切なことに集中する —— 気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」カル・ニューポート(Cal Newport)

色々な音の通知が我々の注意力を求めて随所で谺(こだま)する。「大切なことに集中する —— 気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法」の著者であり、大学教授であるカル・ニューポート(Cal Newport)はそのことを知悉する。ただし、それによって我々が苦しめられる必要はない、とも彼は考えている。この本の中でニューポートは、数多くのリサーチデータを引用しながら、これからの十年で大切になってくるのは(少なくとも生産性という意味では)集中する能力である、とする。この集中する能力のことを彼は「Deep Work」と呼んでいる。この本を読めば読者は絶対的な集中力を生み出す方法を学ぶことができる。少なくとも30秒ごとに携帯電話をチェックすることは止められるだろう。


「Change Agent」ダニエル・スアレス (Daniel Suarez)

2017年4月に発売予定の「Change Agent」は2045年を舞台にしたSF小説。CRISPR遺伝子編集技術が進化し、ブラックマーケットでは任意にDNAを書き換えるノウハウが売買されている。実験用に使う人間を取引する地下組織も存在する。国際刑事警察機構のエージェント ケネス・デュラン(Kennth Durand)はアンダーグラウンドエコノミーで行われているこの種の犯罪を捜査している。しかし、敵にDNAを書き換えられた彼は、(遺伝子上は)彼が追跡していた犯罪者と同じ存在になってしまう。科学とモラルが衝突する近未来の状況を描く。


「The Industries of the Future」アレック・ロス(Alec Ross)

ヒラリー・クリントンの元参謀であるアレック・ロスは2026年の世界がどんな風になるのかを予測している。「未来化する社会」の中でロスは今後10年のビジョンを探求している。ロボットによる自動化、人口知能、サイバーセキュリティー、再生可能なエネルギーは2020年代を定義する重要な要素となるだろう。


「The Seventh Sense」ジョシュア・クーパー・ラモー(Joshua Cooper Ramo)

社会的な関係性、政治、経済……、すべてのものがつながる状況で成功をつかむ人間は、つまり、これらの複雑なネットワークを使いこなせる人間である。「Seventh Sense」の中でラモーは億万長者、インフルエンサー、政治家、軍の指揮官が「何」を「どのように」に選び取るかを観察している。彼らには他人には見えていないものが見えているとラモーは気付く。過去の時代において、つまり、ある業界とある業界が個別に存在していた状態において、成功とはそれぞれの業界でトップに登り詰めることを意味した。だが、ある巨大な1つのシステムの上にすべてが構築された世界において成功を収めるには、これまでとは異なる条件をクリアすることが求められる。


「Wonderland」スティーブン・ジョンソン(Steven Johnson)

イノベーションとは問題を解決するために生まれるもの。ただし、その問題が退屈という場合も往々にしてある。歴史上の画期的なブレイクスルーの多くは「より楽しく遊びたい」という人の欲望の産物である、と「Wonderland」の中でスティーブン・ジョンソンは言う。ジョンソンは魔術、テクノロジー、芸術、探検の世界から様々なストーリーを収集し、「人は純粋な快楽として物事を解明しようとする社交的な動物である」ことの証明を試みている。ソフトウェアエンジニアは「もしこうだったら」と考え、より優れたコードを書き出す。デザイナーは何気ない落書きをアートに昇華させる。天才が必死で努力した結果ではなく、楽しく遊んでいる人たちが何の気なしに作り上げたものがイノベーションであるとジョンソンは考えている。

(敬称略)

[原文: 5 books the head of MIT Media Lab thinks you should read]

(翻訳: Yasuko.K)

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