Snap上場1カ月、先行き占う3つの課題

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Drew Angerer/Getty Images

Snapchatを運営するSnapが上場してから1カ月が経過した。アナリストたちは同社に好意的だ。

複数の投資銀行は目標株価を20ドル台後半とし、同社の株を「買い」と評価した

だが、UBSアナリストらは慎重な見解を保ち、今後12カ月の目標株価は24ドル(約2700円)と中立的な評価を下している。

「Are Ghosts Real?(ゴーストはいるのか?)」と題した調査書の中で彼らは、今後1年間で同社の先行きを左右する3つの疑問を提示した。

1. 3年以内にDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)を2500万人まで引き上げることができるか

Snapはさらなるユーザーの獲得に注力しており、優れた広告チームを有していることから、UBSのアナリストらはこの目標は達成可能と見ている。

ユーザーのスマートフォン使用時間は増加傾向にあり、通信にかかる費用も下がりつつあることが追い風となっている。Snapchatの原点である「モバイルファースト戦略」が当たっている。

下記のグラフは北米、ヨーロッパ、そしてその他の地域における過去のユーザー数とUBSによる成長予測だ。

ユーザー数のグラフ

Snap Inc. company reports, UBS estimates

目標達成には、35才以上のユーザーの獲得が鍵となる。

Snapは若年層から大きな支持を得ている(若年層の方がアプリの使用時間が長く、デジタルコンテンツへの適応が早い)。しかし、広告主にとっては、より年齢が高い層の購買力も大きな魅力だ。

下記のチャートはSnapchatユーザーの年齢分布。

年齢分布のグラフ

Snap Inc. company reports, UBS

UBSは、競合サービスの増加も同社の成長に影響をおよぼすリスクとして挙げている。FacebookはSnapchatに対抗し、ストーリー機能を導入した。

Snapはユーザー体験を重視しており、急速な成長とは一線を画そうとしている。UBSはSnap創業者エヴァン・シュピーゲル氏が上場のプレゼンテーションで発言した「大きいことが必ずしも良いことではない」というコメントに注目している。ユーザーは、現在、snapchatを1日あたり25分〜30分使っている。

2. 50〜100億ドルの広告収入を3年〜5年で達成できるか

UBSはこれも達成可能と見ている。UBSはSnapchatを、マネタイズの余地が大きいプラットフォームだと考えている。これは広告主にとっては魅力的な話であり、広告面でのイノベーションが生まれる可能性がある。

広告出稿がテレビからインターネットの動画コンテンツにシフトしていることもSnapには追い風だ。

広告代理店SMI USのデータによると、インターネット上の動画メディアでの広告出稿額はここ最近、2桁成長を続けている。一方でテレビCMの伸びは1桁台に落ち込んでいる。

下記のチャートはUBSによるSnapの今後5年の広告収入の増加予測。

今後5年の広告売り上げ予測

Snap Inc. company reports, UBS

同社の売り上げの96%は広告によるもので、UBSによるとSnapの広告収入はスポンサードクリエイティブツールとSnap広告の二本柱となっている。

スポンサードクリエイティブツールは、カスタマイズされた写真フィルター、または人の顔や周りの環境に重ね合わせることができるインタラクティブレンズで、広告主はユーザーに自社をアピールできる。Snap広告はユーザーのストーリー内へ戦略的に広告を配置する。

Snap広告の特長は、(広告の)60%が音も一緒に再生されることだ。(音の存在によって)広告主は広告の魅力的を顧客に伝えることができる。UBSは、Snap広告がより重要で、広告収入の軸となると予測している。

3. いつ黒字化するか

UBSはSnapが2020年までには黒字化を達成すると予測する。

UBSは、Facebookなどの競合サービスと同様、Snapがインフラを自社構築せず外部にアウトソースしているため、利益率がかなり抑え込まれていると指摘した。

「具体的に言うと、同社は今後5年間で Google Cloud に20億ドル、アマゾンウェブサービス(AWS)に10億ドルを支払うことになる」

こうしたビジネスモデルでは、コストカーブが安定するまでにしばらく時間がかかる。下記のグラフを見てもらえれば分かりやすいだろう。

利益カーブ

Snap Inc. company reports, UBS

同社が基盤を固め、ユーザー数をさらに拡大することができれば、ユーザー1人あたりの売上原価は小さくなり、利益率は大きくなっていくとUBSは予測している。

別の言い方をするなら、Snapは2020年から利益を生み始める。FCF(キャッシュフロー)およびEBITDA(減価償却前営業利益)の今後5年間の予測推移は下記の通り。

キャッシュフローと減価償却前営業利益

Snap Inc. company reports, UBS

上記の3つの要素を踏まえ、UBSは今後12カ月の投資判断を「中立」とした。

Snapの現在の株価はここから

[原文:UBS says Snap Inc. needs to rise to 3 critical challenges

(翻訳:まいるす・ゑびす)

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