スペースXのロケット打ち上げ成功 ―― なぜ今回のミッションが重要だったのか?

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NASA/Getty Images

イーロン・マスク(Elon Musk)氏が15年来の夢、使用済みロケットブースターの再利用を実現した。

打ち上げ後のライブ配信でマスク氏は「今日は宇宙産業全体にとって素晴らしい1日となった」と述べた。

マスク氏が設立したスペースXは3月30日の18時27分(日本時間3月31日5時27分)、全長約229フィート(約70メートル)のファルコン9ロケットを打ち上げた。この多段式ロケットは、地球周回軌道へ通信衛星を無事送り届け、ミッションを成功させた。

最大の見せ場は、打ち上げの数分後に一段目のブースターが切り離され、地球へと落ちて行く瞬間だった。

ブースターは、ロケットの中で最も大きく「最も高価な部品だ」とマスク氏は話す。この日に使用されたブースターは2016年4月8日に一度打ち上げられ、自動制御で地球へ帰還した、使用済みブースターだ。

そして今回の打ち上げでも、この使用済みブースターはロケット上部から切り離された後、地球へ降下し、太平洋に配置されたドローン船に無事着陸した。

ブースターに限らず、液体燃料を使う商用軌道ロケットの使用済み部品が再利用され、さらなる打ち上げのために再回収されたのは、歴史上初めてのことだ。

打ち上げのライブ配信中、マスク氏は「この出来事は、宇宙輸送にイノベーションをもたらすだろう。ここまで来るのに15年かかった」と話し、短い沈黙の後「言葉がでない」と感慨深げ呟いた。

注目を集めていたのは下部のブースター

今回の打ち上げは、通信衛星SES-10を、約2万2000マイル(約3万5000キロメートル)上空の地球周回軌道にのせ、中南米の広域にわたってインターネット通信とテレビ放送を配信するためのものだ。

しかし、注目を集めていたのは衛星を詰んだロケット上部のカーゴではなく、ロケットから切り離された下部のブースターだった。 ロケットブースターは通常、数千万ドル(数十億円)というコストがかかるが、貨物の周回軌道への輸送を手伝った後は、切り離され、大気圏で燃え尽きるか、海に沈むか、もしくは地表に墜落し、使い捨てられるのが常だ。

一方、ファルコン9ロケットのブースターは、地表や海に配置されたドローン船などの着陸場へ、自動制御で帰還する機能が備わっている。とはいえ、そうして帰還した使用済みブースターが再度打ち上げられた例は今までになく、スペースXの再利用構想は、今回の打ち上げまで実証されてはいなかった。

米国ジョージワシントン大学宇宙政策研究所所長で国際宇宙政策の専門家で、歴史学者でもあるジョン・ログスドン(John Logsdon)氏は、今回の打ち上げは「ブースターの再利用によって膨大なコストを削減するという革命的な試みとなる」と、打ち上げ前のインタビューでBusiness Insiderに語っていた。そして、打ち上げは成功した。

同氏は「宇宙進出において、再利用は長きにわたって探求されてきた至上命題」であるとも話していた。

宇宙輸送費は安価になるのか?

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ファルコン9ロケットシステムを構築するパーツ。この内の一部が再利用可能となる。

SpaceX/Flickr; Business Insider

今回、通信衛星の打ち上げに使用されたブースターは、2016年4月8に、膨張式の宇宙用住居を宇宙ステーションへ送り届ける際に使用されたものだ。

スペースX社のCEOであるグイン・ショットウェル(Gwynne Shotwell)氏は、ブースターを再利用することで、人工衛星の打ち上げや宇宙ステーション用物資の輸送にかかる打ち上げ費用は約6200万ドル(約69億円)にまで抑えられ、約30%のコスト削減につながると話す。スペースX社の軌道ロケットシステムは、すでに世界で最も安価なサービスだが、この試みが成功すれば、顧客となる企業は1回の打ち上げで1800万ドルものコスト削減が見込める。

「今回のミッションは、さまざまな可能性の鍵となるデモンストレーションだ」と打ち上げ直前の動画配信でショットウェル氏は説明していた。「今回の打ち上げは、人類が別の惑星で生活することを可能にするものだ」と彼女は話し、マスク氏の火星移住計画に関する野望についても触れた。

今回の打ち上げを発注した通信会社SES(ルクセンブルク)のグローバルコミュニケーションディレクター、マルクス・ペイエ(Markus Payer)氏によると、この歴史的な打ち上げは、2016年の8月にはすでに契約が締結されていたという。本来は、2016年内の打ち上げを予定していたが、スペースXの無人ロケットが2016年9月に爆発事故を起こしたことで、4カ月にわたる事故調査のあおりを受け、打ち上げに遅延が生じたという。

ペイエ氏は「イノベーションが起こせるのならば、我々はいつでも乗り気だ。この史上初の試みに参加するため、我々は働きかけてきた」と、打ち上げ前のインタビューでBusiness Insiderに語っていた。「我々はリスクを恐れない。そうでなければ、衛星を打ち上げようなんてことは考えない」

ロケットブースターは、海上のドローン船上に設けられた着陸地点の中央へ正確に帰還した。マスク氏は「狙い通りだ」と得意げに語った。

[原文: 'Right in the bullseye' : SpaceX just pulled off a revolutionary rocket launch

(翻訳:忍足亜輝)

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