Oculusの創業者 パーマー・ラッキー(Palmer Luckey)氏
Kevork Djansezian/Getty Images
2014年、当時24歳だったパーマー・ラッキー(Palmer Luckey)氏は、自身が設立したバーチャルリアリティ(VR)企業、Oculusを20億ドル(約2230億円)でFacebookに売却した。以来、Oculusは、Facebook創業者であるマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏の頭痛の種となっている。
OculusがFacebookの傘下になって3年に満たないが、ラッキー氏はFacebookを退社した。それまでに、Oculusは悪い意味でメディアをにぎわせてきた。
- ブログサイト「デイリービースト」によると、インターネットでヒラリー・クリントン氏をおとしめるような書き込みを拡散することを目的とした保守系グループを、ラッキー氏は支援していた。
- ラッキー氏が「タイム誌」の表紙を飾った際、賞賛とともに多数のパロディ画像も流布することとなった。
- Oculusの製品に使われている技術は盗まれたものだと訴えられ、Facebookは5億ドル(約556億円)以上の賠償金を支払うこととなった。
- Oculusは、期待されていたほどの売り上げを実現していない。
- ラッキー氏はOculusの設立者であるが、リーダーとしての立場を奪われてしまった。
多くの人が疑問に思うのは「ラッキー氏は自らの意思でFacebookを去ったのか、それとも解雇されたのか」ということだろう。Facebookのスポークスマンは、これに関してコメントすることを拒んだ。
ラッキー氏の離脱やOculusで起こった一連の出来事を見ると、FacebookのVRへの賭けは、成功よりもむしろ頭痛の種となっているようだ。
ラッキー氏離脱の前に、何が起きていたのか?
2016年9月、ラッキー氏がトランプ大統領の支持団体「 Nimble America」に対して、ひそかに資金援助を行っていたことをデイリービーストが報じた。このグループはインターネット上でヒラリー・クリントン氏をおとしめるような書き込みを拡散していた。
フォーブス誌によると、7億3000万ドル(約813億円)の純資産を有するラッキー氏は、Nimble Americaと関わりがあることを認めた。
ラッキー氏はデイリービーストに「私は十分な資金を持っている。Nimble Americaの活動やそれを支援することが、面白そうだと思った」と語っている。
この一件の報道後、多数の女性がFacebookを退社したと、関係者はBusiness Insiderに語った。
タイムの表紙を飾ったラッキー氏
Time Magazine
デイリービーストの記事が掲載されるまで、ラッキー氏はOculusの対外的な「顔」であり、会社の代表としてメディアへ露出する機会も多かった。2015年8月のタイムの表紙を飾ったこともあるが、そのイメージはからかいの対象となり、フォトショップ加工された多数のパロディ画像が出回ることとなった。それ以来、ラッキー氏は目立たないように努めてきた。
昨年10月に開催された恒例のOculus開発者会議に、ラッキー氏が参加することはなかった。また、12月にOculusの幹部チームが再編成された際、ラッキー氏について言及されることもなかった。
Oculusに潜む問題をあぶり出した訴訟とリーダー交代
ザッカーバーグ氏は今年1月、中国の新興スマホメーカー小米(シャオミ)の役員だったヒューゴ・バラ(Hugo Barra)氏を、FacebookのVR部門のリーダーとして迎え入れた。
ラッキー氏がOculus代表として公の場に現れたのは、2月に行われたダラスでの訴訟が最後となった。ゲームメーカーのZeniMaxがOculusに技術を盗まれたとして訴訟を起こし、ラッキー氏はそこで証言台に立たされた。
陪審員は、Oculusによる特許の侵害や、ラッキー氏によるOculus設立当初の秘密保持契約違反などを認め、Facebookに5億ドル(約556億円)の賠償金の支払いを命じた。ラッキー氏個人に対しても、虚偽表示があったとして、5000万ドル(約55億6千万円)の支払いを命じた。
OculusのVRヘッドセット「Rift」の期待外れな売り上げ
2014年にOculusを買収した際、FacebookはVR産業のリーダーの一員になったと賞賛された。しかし、VRヘッドセットの売り上げは、ザッカーバーグ氏の期待からは程遠いものだった。
2月、Facebookが取り組んでいるVRや拡張現実(AR)について聞かれたザッカーバーグ氏は、「期待していた状態よりも少し遅れている」と答えた。さらに、OculusのVRヘッドセットとタッチコントローラーの出荷の遅れについては「がっかりした」と述べ、その売り上げについて「当分、利益は見込めないだろう」とした。
Facebookは、Riftの販売個数を明らかにしていないが、HTSやソニーといった競合企業は、VRの初期市場で高いシェアを獲得し、Oculusに重圧をかけている。
サムスンは、軽量なVRヘッドセットをこれまでに500万個販売したと、このほど明らかにした。このヘッドセットにはOculusのソフトウエアが用いられている。「スーパーデータリサーチ」が2月に発行したレポートによると、VR産業における2016年からこれまでの累計売上高は18億ドル(約2000億円)で、VR装置の販売個数は630万個にのぼるという。
[原文:Facebook's $2 billion bet on virtual reality has been a fiasco (so far)]
(翻訳:仲田文子)