北朝鮮ミサイル報道がアメリカのニュースを席巻した理由

米CNNは12 月27日、アメリカ政府関係者の話として、数日、あるいは数週間をめどに北朝鮮が新たな弾道ミサイル、あるいは人工衛星の発射に向けた準備を進めている初期の動きがあると伝えた。

CNNのベテラン国防総省(ペンタゴン)担当、バーバラ・スター記者のリポートを、MSNBC、FOX News などのケーブルニュース局や主要メディアが一斉に後追いした。

北朝鮮ロケット

2017年11月30日に北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)が発表した写真。新しく開発された大陸間弾道ロケット火星15号の打ち上げと見られる。

REUTERS/KCNA

夕方になると、各ニュース番組が、専門家から電話や中継でコメントを取るようになり、放送時間が増えていった。25日のクリスマス休日までの長い週末、翌26日のネタに事欠いた日々とは、異なる緊張感が走った。

CNNによると、関係者は「北朝鮮が機材を動かしている複数の兆しがある」と指摘。北朝鮮の新たな動きは、韓国紙・中央日報が26日、韓国政府関係者の話として、北朝鮮が新たな人工衛星「光明星5号」を製造し、打ち上げる計画があると報道している。CNNの報道は、これとも整合しているようにみえる。

CNNのスター記者はまた、別の米政府筋の話として、韓国や日本との軍事的な合同訓練に関する情報について、トランプ政権は、詳細な公表を差し控えることを検討していると報道した。トランプ政権は従来、訓練による軍事力誇示によって、北朝鮮にプレッシャーをかける戦略をとっているとみられていた。合同訓練の時期や規模などを情報公開しないということは、外交的解決に向けて、対話の機会を増やしたい狙いだとしている。

「アメリカの問題になったのです」

しかし、CNNの報道通りに事が進むのかは、疑問だ。

通常の対話機会という姿勢を繰り返してきたティラーソン国務長官の発言を、ホワイトハウスは正式に否定しているからだ。国務長官の更迭予測が数カ月も続いているのも、北朝鮮問題の行方を不透明にしている。

米韓軍事演習

2017年12月4日から韓国で行われた米韓空軍の合同軍事演習。

REUTERS/Kim Hong-Ji

北朝鮮のミサイル問題について、微に入り細に入りといったアメリカの主要メディアの報道は、この数カ月続いている。

アメリカで北朝鮮問題がニュース番組のメインストリームになったきっかけは、2017年8月29日、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが北海道の上空を通過し、太平洋に落下したことだった。

日本でも、テレビ各局が特別ニュースを流したが、アメリカの報道も切羽詰まっていた。

筆者は、MSNBCの女性アンカーがこう言ったのを覚えている。

「北朝鮮の弾道ミサイルは、すでにワシントンやニューヨークを射程にする可能性があると言われています。北朝鮮のミサイル開発問題は、アジアの問題ではなく、アメリカの問題になったのです」

うかつとも取れる発言だが、確かにアメリカ人にとって、北朝鮮の脅威は、遠いアジアにとどまる問題だった。

しかし、もはやそうではない。

トランプ大統領のツイッターや発言も、恐怖感をさらにあおっている。

トランプ氏は8月上旬、北朝鮮は「炎と激怒」に見舞われるだろうと発言。さらに、北朝鮮の金正恩・最高指導者を「リトル・ロケットマン」と呼ぶという、およそ国家首脳の発言とは思えない行動に出ている。

政府高官まで先制攻撃の可能性示唆

これが、アメリカ人の半分を占めるとされる反トランプ派の危機感をあおっている。

一方、ニューズウィークによると、リンゼー・グレアム上院議員は、アメリカが北朝鮮を先制攻撃する確率が30%あり、次に北朝鮮が核兵器実験を行えば70%に跳ね上がると、メディアに語っている。タカ派議員の発言は、これまでであれば、ごく一部の意見とされていたが、トランプ氏の行動が読みにくい上、 一部の政府高官が年末に、北朝鮮に核を使わせない唯一の策は先制攻撃だと発言し始めた。

同ニュースサイトによると、「北朝鮮の話をするトランプ政権の様子は、イラク戦争を前にしたジョージ・W・ブッシュ政権に薄気味悪いほど似てきた」と、ブッシュ前大統領政権で国家安全保障会議のメンバーだったコリー・シャキー氏が指摘しているという。

10月に行われたクイニピアック大学の調査で、46%の共和党支持者、つまりトランプ支持者の半分近くが、北朝鮮に先制攻撃を仕掛けることを支持している。これを見ても、アメリカ市民の一部では、北朝鮮との間で「戦争もありうべし」という予感が高まっていることもわかる。

予感を先取りした主要メディアが、北朝鮮問題に多くの時間を割くのもわかる。日本とは異なり、アメリカは、多くの兵士がその影響を受けることになるからだ。相撲の話題が情報番組を席巻し、高視聴率を取る日本とは異なり、2018年に向けアメリカにとって北朝鮮との「臨戦」状態は、より身近なニュースとなっている。

(文・津山恵子)

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