Facebookの「10年ロードマップ」から考えるスマホ時代の「次」とは?

グーグル、アマゾン、マイクロソフト、Facebook、アップル。アメリカを本拠とするこの大手テック企業5社は常に動向が注視される業界のリーディングカンパニーだ。その1社のFacebookの「今後の10年」のロードマップと、マーク・ザッカーバーグCEOの戦略はどんなものなのか?

イノベーションカンファレンス「Industry Co-Creation(ICC)カンファレンス KYOTO 2017」(ICC KYOTO 2017)のパネルセッションでのFacebook Japanの横山直人氏の語りをもとに彼らの戦略を見ていこう。

(この記事は、ICCが公開しているカンファレンスレポートの一部をBI Japan編集部が独自に再編集したものです)

2017年9月5-7日開催

ICCカンファレンス KYOTO 2017「大激論 ポストスマホ!いよいよAR時代到来!」より

スピーカー:

荒木 英士 グリー株式会社 取締役執行役員
國光 宏尚 株式会社gumi 代表取締役社長
横山 直人 Facebook Japan 執行役員 新規事業開拓 兼 パートナーシップ事業部

モデレーター:

尾原 和啓

尾原 それでは、VR、ARの基礎的なところから入って、皆さんの業界にどういうインパクトがあるのかということについてお話することにしましょうか。

國光 今年になって、シリコンバレーの各大手が、グラス(メガネ型端末)がなくてもスマートフォンでARができるという製品を出したというのが、まずは走りというところです。

横山 激動の2017年でしたね。

尾原 そのことについての包括的なアップデートが、横山さんと荒木さんからありますので、まずは横山さんにFacebookから見たARをご紹介頂きましょう。

荒木 そうですね。

尾原 まずは見て頂いた方がイメージして頂き易いと思います。

横山 いかにこのARがホットトピックかというのを、ご紹介しようと思います。

Facebookが明らかにした「10年ロードマップ」

facebookロードマップ

横山 これはFacebookの10年ロードマップです。

今まで、10年プランを公表することなどありませんでしたから、すごいことですよね。

昨年くらいに始めたところで、これから3年間くらいは「Facebook」、「Instagram」をよりエコシステムのプラットフォームとして作っていきます。

そして5年後に向けて、「WhatsApp」や「Workplace」や「Messenger」などあらゆる繋がり方をサポートする製品に注力します。Facebookのグループ機能では、現在、グループをまとめるコミュニティのリーダーの役割を担う管理者をサポートする機能に注力しています。

そして、今後10年間かけて、我々は通信・インターネットをより普及させていきます。

同時に、AI、VR、 ARというイノベーションに注力し、新しいつながりの形を生み出すことをサポートしたいと思っています。

VR

尾原 でも、日本では、なぜかVRやARについてあまり語られませんよね。

國光 思いつきで「Snapchat」をパクっている訳ではないのですね?

横山 (笑)。

荒木 でも、基本戦略として「Snapchat」を超えるということがありますよね?

横山 それはどうなのでしょう(笑)。

荒木 全くよいと思うのですが。

尾原 個人的には、もっと戦略的にやっているところが多いと思っていて、それについての動画を見て頂いてからの方が、ご説明し易いかと思います。

横山 そうですね。

國光 このスライドは極めて重要です。

やはり、シリコンバレーのApple、Facebook、Google、Amazon、Microsoftなどが作っていくプラットフォームが、ITの大きい変革を支えていますよね。

ですから、こういった大手の戦略を知り、彼らがいつ何を仕掛けてくるか、だからこそ自分達は何をやっていくべきなのかを考えることが、スタートアップにとっては非常に重要なのではないかなと思います。

尾原 そうですね。

人の動きに合わせたエフェクトを表示

AR

横山 今回、ARに関しては幾つか動画を準備させて頂いていますが、これはブルーノ・マーズ(Bruno Mars)というミュージシャン/アーティストが作ったミュージックビデオです。

非常にお洒落でハイセンスな、いいプロモーションビデオに仕上がっています。

これと同じ世界観を一般の方にも同じように味わって頂くために、Facebookには「Camera Effects Platform」というARテクノロジーがあります。

このプラットフォームはデベロッパー (開発業者)向けに2017年4月にリリースさせて頂いたもので、例えばオジサンが踊っている場面を、先ほどのブルーノ・マーズのような世界観でデザイン・描写できるというものなのです。

Camera Effects Platform

尾原 人の動きに合わせた輪郭や、周囲を飛ぶダイヤなどが、簡単に設計できるということですよね。

Camera Effects Platform

横山 そうですね。

顔や体を認知して、そこにデザインを被せていくというものです。

Facebook rolls out augmented-reality camera platform(CNET)

それ以外にも、特に若い方がInstagramの「ストーリー(Stories)」で動画や写真の投稿をされていますが、色々なIP(Intellectual Property=過去の作品やキャラクター)をARカメラで重ねてフレームとすることで、我々のMessengerやFacebookのカメラで使うことができます。

こういったテクノロジーを外部の方々にも容易に使って頂けるようになったことは、この「Camera Effects Platform」の大きな特徴ですね。

Facebookは、こういった形で第三パーティーにARテクノロジーを開放し始めています。

尾原 他のパーツも、色々と開放されていますよね。

GAMING

横山 これは将来的なイメージビデオになりますが、ARのテクノロジーを使ってゲームの世界をこういう形で。

Facebook rolls out augmented-reality camera platform(CNET)

(開始1分55秒付近をご覧ください)

尾原 このすごいところは、机の面は何で、コップの鏡面は何でということを一旦認識したら、カメラの位置がずれたり、人が触ったりしたことをきちんと判定しながら、まるで現実世界上にデジタルなものがあるように動くというところですよね。

荒木 これは、将来的にできますよね。

國光 Appleの「ARKit」でできます。

荒木 今年の末くらいに、沢山出てくるのではないでしょうか。

横山 そうですね。テクノロジーの発表がありましたから、今頃恐らくデベロッパーさんと我々の開発チームが一緒に進めていっているところだと思います。

シリコンバレーの巨人が競いながらARが普及する

國光 今年のAmazon「AWS re:Invent」をはじめ、「Facebook F8」や、「Google I/O」や、「Apple WWDC」などの開発者イベントは、今、全てネット上で公開されています。

こういったARのテクノロジーが可能になったのも、AIのテクノロジーの裏付けがあるからですよね。

「Tango」のような特殊なカメラを使わなくても、既存のiPhoneなどで人の顔の認識や、空間の深さの測定ができるようになってきたというのが、大きな技術的進歩です。

対談の様子

尾原 そうですね。

実際のところ、皆さんはVRやARの進歩に時間がかかると思っておられるかもしれませんが、先ほども申し上げたように、Gartner社のハイプ・サイクルでは、遂に幻滅期を抜けているとされています。

端的に言うと、iOS11になることで、世界中の6億台の端末で、今この映像でやっているくらいのARができるようになってしまうのです。

更にGoogleの追随発表で1億台くらいが追加されるので、世界中の7億台の端末でこういったことができる環境になります。

そして、今は言えないかもしれませんが、更にFacebookが何かを仕掛けてくると、OS依存がない世界になるのではないでしょうか。(横山さんを見て)

荒木 (笑)

すごい振り方をされますね。

國光 FacebookがせっかくARで抜けた感じになりかけたところでAppleが「ARKit」を出してきました。何だかもうFacebookのARが目立たなくなった感じになってしまいましたよね。

(登壇者 笑)

横山 我々は、OSに依存しない形でテクノロジーを供給し続けていきたいと思っています。

デべロッパーズカンファレンスはお勧め!

國光 ですからやはり、デベロッパーカンファレンスというのは面白いですよね?

荒木 面白いですね。

國光 どんなテクノロジーを使って何ができるようになったかというのが、5年前はこれ、3年前はこれ、2年前はこれ、1年前はこれというように順を追って説明してくれるので、技術についてほとんど分からない文系の人が見ても分かるくらいまとめてくれています。

荒木 結構色々な会社さんのものをご覧になられていますか?

対談の様子

國光 全部見ていますよ。

特に「Facebook F8」で「AR Studio」について説明された時には、どういうAIを使ってこれが実現したのかがすごく分かり易かったですね。

AIはバズワードになっていますが、結局のところAIは目的ではなくて手段なんですよね。

例えば、自動走行車を実現するためにAIがあるとか、「Amazon Echo」のような音声的なことを実現するためにAIがあるといった背景を見ておくことができるので、お勧めですね。

荒木 そうですね。

役に立つセッションですね(笑)

横山 尾原さんからは、ライブで連絡が来ます(笑)。

FBはデベロッパー側の素材を全て押さえる!?

尾原 ライブで実況中継するくらい、今回の「Facebook F8」には痺れましたね。

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尾原 一番大きかったのは何かというと、これは「Google I/O」でのまとめ方が上手いなと思ったのですが、結局iPhoneの革命とは、ユーザーインターフェースをキーボードやマウスといったタイピングのものから、指という直感的なものにしたということだったんですよね。

それが、今度はスマートスピーカーなどで声が操作の対象になるということはあるのですが、実は、人間の情報処理の7割から8割は視覚が担っているんです。

この「目」というものをどのように新しいUI(User Interface)にしていくかということが、これからのARの本質で、Facebookというのはいつもズルいから、それを素材を作る側からおさえたい。

しかも、先ほどの「Snapchat」のように顔を変えるようなものや、机上で楽しむゲームのようなものや、もっと実用的に美術館で絵の説明が出るといったものまでを一揃えで提供することで、Facebookは、現実をオーバーラップさせるためのデベロッパー側の素材全てを牛耳ろうとしているんですよね。

横山 (笑)

牛耳ろうとしているのかな。

國光 Appleが先行しそうな感じですけれども。

横山 でも、ARにしてもVRにしても、Facebokのエンジニアがかなりの工数をかけて作ったテクノロジーを、まずは社内で広げていきたいです。

(Facebookが買収した)Masquerade Technologies社(※)の動きはまさにそうかなと思うのですが、そういったものをどんどん社内の製品に埋め込みながら、第三者に広げていくというフェーズが来れば出していっていますね。

※Masquerade Technologies…自撮り動画用フィルタアプリ「MSQRD」を手がける

「テクノロジーを民主化する」とよく言いますが、その活動の一つだと思って頂ければと思っています。

ICCパートナーズより転載(2017年12月12日公開の記事)

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