直る可能性もなくはない。
Thomson Reuters
- アメリカのトランプ政権の内幕を描いたとされる、マイケル・ウォルフ(Michael Wolff)著『Fire and Fury(炎と怒り)』は、トランプ大統領が自身の見識が他の誰よりも優れていると信じていることを示唆している。
- リーダーシップの専門家は、こうした行動は非生産的だと言う。
- だが、こうした自身の傾向を自覚することで、克服することはできると指摘する。
ジャーナリストのマイケル・ウォルフ氏は、トランプ氏の大統領就任までを描くことで、この比較的経験の少ない、しばしば能力を欠くかのようなリーダーの姿を浮き彫りにした。
今回新たに出版された暴露本『Fire and Fury』からの抜粋を紹介した雑誌ニューヨーク・マガジンによると、トランプ氏は特に大統領になりたかったわけではなく、明らかに準備不足だったという。
大統領就任直後のトランプ氏のマネジメント・スタイルを最も象徴する、興味深い記述の1つは、ウォルフ氏が元大統領次席補佐官のケイティ・ウォルシュ(Katie Walsh)氏やその他の取材源へのインタビューに基づく、次の発言だ。
「彼(トランプ大統領)は自身の見識が —— どんなに微々たる、見当違いのものであっても —— 他の誰よりも優れていると信じていた」
ウォルフ氏は、トランプ氏に意見することは難しく、大統領は何かを決めるときは主に自身の直感を頼りにすると書いている。
リーダーとして、誰よりも自身の見識が優れていると信じることは、何を意味しているのだろうか? Business Insiderでは、アップルやグーグルで働いた経験を持つコーチングのプロで、2017年に出版されたマネジメントに関する著書『Radical Candor(徹底した率直さ)』を書いたキム・スコット(Kim Scott)氏に話を聞いた。
ただし、スコット氏はリーダーシップの専門家だが、トランプ氏を個人的に知っているわけではない。ウォルフ氏の記述 —— 誰に聞くかによって、正しいかもしれないし、間違っているかもしれない —— とスコット氏自身によるこれまでの観察に基づいて、大統領のマネジメント・スタイルを分析していることを明記しておきたい。
スコット氏によると、リーダーにとって最も重要な行動の1つは、「決断を現実に落とし込む」ことだ。つまり適切な知識と見識を持つ人々に決断を任せることだ。
ウォルフ氏の記述とスコット氏自身の観察から、これはトランプ氏のマネジメント・スタイルとは異なると、スコット氏は言う。
「権力を持つ人はしばしば、(当該分野に詳しい人に任せず)全ての決定を自身で下そうとする」
「しかし、良きリーダーは自ら決定を下すことはせず、最もその情報に詳しい自身のチームに意思決定を任せる」スコット氏は続ける。「リーダーシップとは、『自分の決定は、他に比べて優れている。なぜなら、他ならぬわたしが決めたのだから。例え自分が何も知らない、もしくは他人よりもよく知らないとしても』などと言って、傲慢になることではなく、謙虚さを忘れないことだ」
一方で、マサチューセッツ工科大学(MIT)リーダーシップ・センターのハル・グレガーセン(Hal Gregersen)氏は、Business Insiderのメール取材に応じ、トランプ氏のような起業家は、そうでない人々に比べ、自信過剰バイアスに陥りやすいと語った。このバイアスに陥ると、「リーダーが自身の考えや貢献を過剰に評価した結果、現実が許す以上に自信たっぷりに行動してしまう」と言う。
こうした考えを持つ専門家は、グレガーセン氏だけではない。スタンフォード大学経営大学院の組織行動学の教授、ジェフリー・フェファー(Jeffrey Pfeffer)氏は、これを「自己高揚バイアス」と呼んでいる。
こうした思考パターンに覚えがある場合、改善の余地はあるとグレガーセン氏は言う。「トランプ氏に限らず、ホワイトハウスにいる起業家は誰でも、それに気づきさえすれば、こうしたバイアスを克服し、全く異なるデータセットに基づくもう1つの世界観に直面したときも、自身の経験をより適当に生かすことを学ぶだろう」
[原文:Trump may be making a huge management mistake]
(翻訳/編集:山口佳美)