「シャワーの浴び過ぎ」は皮膚に良くない?

シャワーを浴びる男性

korionov/GettyImages

気温の上昇とともに汗や体臭が気になって、シャワーを浴びる回数を増やす人も多いのではないだろうか。でも、ちょっと待ってほしい。日々のシャワーのせいで、汗よりも不快な状況が生じてしまうかもしれない。

適切な入浴の頻度や手法に関する研究は、実はそんなに存在しない。ただ、日常的にシャワーを浴びることで、皮膚にとって必要不可欠な油分や細菌が取り除かれ、健康や体臭、身体上の防衛システムに悪影響が及ぼされることを示す、説得力のある論拠はある。

実際にシャンプーを使い過ぎるライフスタイルにより、科学がいまだ解明できていない「ヒトマイクロバイオーム(編集部注:人体に生息する微生物の集合体、微生物群ゲノムとも言われる)」の複雑なシステムにダメージを与えることを示す証拠が、相次いで報告されている。


シャワーの浴び過ぎは、身体機能に影響を及ぼすことがある

「マイクロバイオーム」は、細菌やウイルスなど、体の内外に生息する微生物の総称で、健康を保つ上で非常に重要な存在だ。それらがいなければ、免疫システムや消化器、さらには心臓までもの機能が低下したり、完全に停止してしまう。

私たちの生活においてマイクロバイオームが果たす役割は、いまだ完全には解明されていない。しかし、シャワー浴が皮膚上のマイクロバイオームにダメージを与えることを示す、間接的な証拠は存在する。健全なマイクロバイオームがないと、皮膚はそのバランスをうまく保てず、傷や化膿を防ぐことができないようだ。

シャンプーやせっけんを使用してシャワーを浴びると、髪や皮膚から必要な微生物や油分が失われるという説は十分に確立していて、美容業界はコンディショナーや保湿剤でそれらを補おうとしている。それだけに、屋内の(都市的な)殺菌された環境で生活している人々のマイクロバイオームは、より複雑性に欠け、弱いことが多いという。

その一方で、「過去に西洋人と交流した記録がない」とされるアマゾンのヤノマミ族についての研究によると、それまでに調査したどの人口母集団よりも豊富な細菌が、皮膚や口、排泄物から検出された。中には抗生物質に耐えうる種も含まれていた(ヤノマミ族の人々が抗生物質に触れた事実は確認されていないが)。

また、初期の研究では、細菌が皮膚の健康を保つ役割を果たす可能性や、マイクロバイオームが乱れると、ニキビのような一般的な皮膚疾患がもたらされることが分かっている。


におい対策は?

シャワー浴に関する科学的調査がほとんど存在しないのは、長期間入浴しないことに同意してくれる被験者を集めるのが難しいからかもしれない。そのため、シャワー浴の影響について書かれた記事の大半は、個人的な実験に基づいている。これらの記事はシャワー浴を減らすことによって「体臭への対策はどうしたらいいのか? 」という重要な疑問に、エピソード形式で答えている。

マイクロバイオームには、体のしわや関節から漂う悪臭の原因となる化学物質を分泌する細菌が含まれている。それらを洗い落とさなければ、かなり不快な状態になりかねない。しかし、実験を行った人たちによると、問題の原因は私たちのマイクロバイオームが初めからひどく破壊されていることにあるのだという。彼らの理論では、人間の体はシャワーを浴びない生活に順応することが可能で、再調整されたマイクロバイオームが臭うことはないという(少し土のような香りにはなるかもしれないが)。

有名な例としては、2016年6月に発表された「The Atlantic」の編集者ジェームズ・ハンブリン (James Hamblin)氏が毎日の入浴をやめる決断を書いたエッセイが挙げられる。「最初の頃、私は脂ぎった臭い野獣だった」と振り返るハンブリン氏だが、後に状況が改善したことを明かしている。

もし見るからに汚れているところがあれば、洗い流すことにしている。例えばジョギングの後、顔に虫がついていれば洗い落とすなど、社会的なマナーは必要だ。寝癖がついている場合は、シャワーに身を乗り出して髪を濡らすことも。ただシャンプーやボディソープは使わず、シャワー室に入ることもほとんどない。

それでも何ら問題はない。朝起きたら数分で家を出られる。長い1日の終わりや運動の後など、以前なら体臭が気になるようなタイミングでも、今は臭わない。少なくとも自分にとっては。友人たちにも嗅いでもらったが、何も問題はないと言っていた(みんなで結託して、私をだまそうとしているのかもしれないが)

またハンブリン氏は、ニューヨーク・タイムズ・マガジンでシャワー浴をやめるまでの日々を記事化したジャーナリストのジュリア・スコット (Julia Scott)氏を取材した。

スコット氏は、健康的な皮膚上のマイクロバイオームを提唱する「AOBiome」という企業の製品を使用していたという。初めのうちは(少なくとも彼女の一部の友人たちにとっては)タマネギのような臭いがしたが、次第に体が順応していったそうだ。もしシャワー浴をやめたいと考えているのであれば、好印象を与えたい相手からは、しばらく距離を置いた方がいいかもしれない。

また、スコット氏は実験終了後、シャワーを再開してからわずか1週間で、新たに培養されたマイクロバイオームが全滅してしまったことを発見した。

極めて限られた、信ぴょう性の低い証拠を検証した限りでは、せっけんや化粧品を毎日使用する必要はなさそうだ。筆者個人としては、まだシャワー浴なしの生活をスタートする勇気はないのだが。

source:ScienceThe AtlanticNCBI、The McDonnell Genome Institute、ScienceDirect、npr

[原文:You're probably showering way too often

(翻訳:Thumper Jones)

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