森ビルとチームラボがお台場に1万㎡のデジタルアート美術館設立——森ビル新たなコンテンツ戦略へ

お台場に美術館が出現する —— 。

森ビルとチームラボは1月29日、約1万平方メートルの巨大デジタルアートミュージアム「MORI building DIGITAL ART MUSEUM teamLab Borderless」(以下、teamLab Borderless)を東京・お台場にオープンすると発表した。オープンは2018年初夏を予定している。

teamLabBorderless

森ビルとチームラボは2018年初夏、世界初のデジタルアート専門美術館をお台場にオープンさせる。

提供:チームラボ

今回の展示を手がけるチームラボキッズ代表の松本明耐氏と、森アーツセンターに所属し、六本木ヒルズにある森美術館で開かれる展覧会やイベントの企画などを担当している杉山央氏に、ミュージアムの全貌について聞いた。

お台場に“圧倒的”規模のミュージアム

「teamLab Borderless」の場所は森ビルが運営するお台場パレットタウンだ。

六本木・虎ノ門・麻布の3地区を注力エリアとして都市開発を進めている森ビル。なぜ今回お台場という場所を選んだのか?

チームラボキッズ代表・松本と森ビル・杉山。

チームラボキッズ代表・松本明耐氏(左)と森アーツセンターの杉山央氏(右)。

「チームラボさんとは一緒に(ミュージアムを)やりたいね、という話をずっとしていて、2年ほど前から動いてはいたんです。でも場所が見つからなかった」(杉山氏)

体験型のデジタルアートを世に送り出しているチームラボ。それを実現させるために必要なのは、来場者が作品に没入できるだけの広いスペースだった。

探し回った末に見つけたのは、天井高が最大約9メートル、2フロア全てを使える約1万平方メートルの巨大な空き物件だった。

「ここが見つかったことがプロジェクトをスタートさせるきっかけになった」(杉山氏)

チームラボが手がけるアート展示としてこの広さは「“圧倒的”史上最大規模」と松本氏は声に力を込める。杉山氏も森ビルが持つ文化施設として桁外れの広さだ、という。

六本木ヒルズにある森美術館の展示面積は約2000平方メートル。それと比べても、今回のプロジェクトの壮大さがわかる。

(場所が見つかったのは)奇跡、と言えるでしょうね」と杉山氏は言う。

順路も案内看板もないボーダーレスな展示

杉山氏が「日本に来たら必ず訪れなければならない場所にしたい」と意気込む「teamLab Borderless」。一体どのようなミュージアムになるのだろうか。

もっとも大きな特徴は、モニター作品を入れて30点以上にもなる作品群が「作品の境界を超えてつながり、お互いに干渉し合う」(松本氏)ということ。作品は部屋を飛び出し、フロアさえも飛び越えて別の作品に入りこむ。

チームラボはすでに海外で実績をあげている。2016年にシリコンバレーで開催したデジタルアート展には15万人以上が来場、2016年から2017年にかけては台北で20万人以上、2017年には北京で29万人以上の来場者を記録した。海外での知名度は飛躍的に上がった。

2017年に北京で開催され、29万人以上を動員した「teamLab: Living Digital Forest and Future Park」。

動画:teamLab

けれど、と松本氏は付け加える。

「(今回のミュージアムは)来場者の体験としては過去とはまるっきり違う。今までの展示は、チームラボの作品がたくさんある、という位置づけ。今回はteamLab Borderlessというミュージアム自体がひとつの作品になる」

杉山氏は内部の様子をこう表現する。

「順路もなければ案内看板もない。これまでの常識を超える美術館になっているので、いろいろな場面をシミュレーションしながら(導線を)考えています」

不動産競争激化で狙う森ビルの「コンテンツ戦略」

もうひとつ、森ビルにとっての新たなチャレンジがある。今回のミュージアム運営に当たってチームラボと合弁会社「森ビル・チームラボ有限責任事業組合」を作り、広報・マーケティング・事業計画などを合議制で決めているという。

この試みの背景には「ただスペースを貸すだけでは(不動産事業に)新しいものが生まれなくなっている」(杉山氏)という森ビルの危機感がある。

森ビルの連結業績推移。

森ビルの連結業績推移。過去3年の営業収益は横ばい、2017年3月期の営業利益は減少した。

参照:森ビル公式ウェブサイト

過去5年、森ビルの営業収益(売上高に相当する)は横ばいに推移している。2017年4月〜9月期は、営業収益が前年から10%減少する中、営業利益は前期とほぼ同水準の383億円を計上し、苦戦を強いられている。国内の競争が激しさを増す中、ビジネスをスケーリングさせる難しさが数値に現れている。

六本木ヒルズの森美術館やアークヒルズのサントリーホールを始めとして、森ビルは都市の中に文化施設を組み込む街づくりを得意としてきた。現在進めている六本木・虎ノ門・麻布エリアの都市再開発プロジェクトでもオフィスビルと文化施設、ホテルなどの複合開発が中心だ。

同社の営業収益の大半はオフィスや住宅などの賃貸事業によるものだが、魅力的なコンテンツ(文化)を備えた都市開発が賃貸収益にも大きく影響している。

現在進行中の森ビルプロジェクト。

現在進行中の森ビルプロジェクト。注力エリアは六本木・虎ノ門・麻布の3地区だ。

参照:森ビル 2018年3月期 中間決算報告

「チームラボさんの人気を見ればわかると思うのですが、街そのものにあるコンテンツがいま取り合いになってきている。(チームラボと)一緒に事業を営むことで、今まで森ビルがやってきた文化と街づくりをセットにした都市開発をさらに促進させていきたい」(杉山氏)

デジタルアート集団としてのチームラボのこだわりは、集客チャネルにも現れている。新しくオープンする美術館では、予約・発券・入場をスマホで完結させる予定だ。実際に美術館を訪れる前後にもSNSでの拡散などの仕掛けも考えていると言う。サービスの開発には、森ビルが森美術館や六本木ヒルズでのイベント運営で培ってきた見識も活かす。

2020年の東京五輪を控え、五輪会場にも近い「世界初のデジタルアートの専門美術館」は、東京の新たな観光名所となるのか。

(文・写真、西山里緒)

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