「70億円男」CASH光本代表が語る“ノールック買取り”ビジネス最前線

BANK光本社長

ノールック買取りアプリ「CASH」を運営するBANK社の光本社長。2017年2月にBANKを創業し、1年以内で70億円の売却を実現させた手腕はスタートアップ界隈でも評判になった。

撮影:伊藤有

2017年末話題となった、スマホで売りたい物の写真を撮るだけで査定して現金化できる、いわゆる「ノールック買取り」アプリ。この市場を作り出し、最前線を走っているのが買取りアプリ「CASH」の運営元BANK社を率いる光本勇介氏だ。

CASHは買取った商品を選別して中古として流通させるという点でいわゆる「二次流通ビジネス」の新形態と言える。この新規分野に参入したのが2017年6月。サービス開始後16時間で3億6000万円もの不用品が現金化され大注目を浴びたかと思えば、問い合わせ殺到によるサービスの一時停止と再開を経て、2017年11月21日にはDMM.comが70億円で買収を発表し、ネット界隈を騒然とさせた。

国内の競合には、C2C(個人間売買)アプリの巨人、メルカリの「メルカリNOW」(2017年11月27日参入)という大きなライバルも出現している。

「マスのサービス」にするためDMMグループ入り

サービス運営を再開して2カ月弱で70億円もの大型買収事案となったBANKのDMM.comグループ入り。売却を決心した理由について、光本氏はこう語る。

「サービスをリリースした時の反響が大きく、大資本を持つ企業が参入するかも、という噂は聞いていた。それなりの自己資本が必要になると考えていた時に、DMM.comから打診があった。(これまでも)『お金を出したい』と言って頂ける人はたくさんいたが、何度も資金調達をしていくにはそれなりの時間が割かれる。(誰もが知っていて誰もが使うような)『マスのサービスにする』ことが僕の一番の目標であり、興味。資金調達よりも売却の方がその実現の確度が高いだろうと

DMM.comに事業売却した時の社員・スタッフ数は5人。DMMグループに入ったことの意味を尋ねると、一息でこう語る。

「DMMグループは、現代の総合商社で、金融や水族館、AIの研究チーム、倉庫の子会社まである。それに3000人ぐらいの社員がいて、人員や技術支援も受けられる。何でもやっているからこそ、必要なものを満遍なく提供してもらえる体制や余力がある

直近の競合は?

「メルカリさん。メルカリは一大インターネット帝国で、数百人の人員がいる。DMMグループに入ったことで、大規模な企業が参入してきても対等に戦える体制ができた

Mitsumoto

売ろうと思ってCASHを作ったわけではない、と語る光本氏。

撮影:室橋祐貴

DMM.comには、会長の亀山敬司氏、代表取締役社長の片桐孝憲氏という2人の有名人がいる。この2人の経営者に惹かれた部分も大きいという。

片桐氏については、「同年代でもあり、昔から友達で、すごく尊敬していた。自分が9年ぐらい運営していた(オンラインストア作成サービス STORES.jpの)ブラケット社はずっと自己資本でやっていて、片桐さんが創業したピクシブも自己資本。外部から資金調達せずに、会社を成り立たせるのは本当に大変なこと。最初から稼がないといけないし、赤字だと(文字通り)死ぬ。片桐さんはそれ(自己資本による運営)を実現できる手腕があって、感覚的にも合っていた」

一方、会長の亀山氏については、「亀山さんは当時数回しか会ったことがなかったが、ずば抜けて頭がいい方だなと思っていた。そう感じられる経営者は少ない。(ZOZOTOWNを運営する)スタートトゥデイの前澤さんもすごいと思ったが、久々にそう感じる方だったので、一緒に仕事できたら面白そうだなと」語る。

差別化は「売り先」と「買取り価格」

ノールック買取り市場はまだ立ち上がったばかりで、ビジネス手法もまだ確立されていないように思える。立ち上がりのこの時期に、すでに競合にあのメルカリがいる。「ビジネスモデル」と「差別化」の両方を同時に構築していく必要がある。光本氏は買取り価格と売り先が重要になる、と説明する。

Business Insider Japanから光本社長への16の質問。「メルカリNOWが始まった!最初に思ったことは?」の回答は1分19秒付近をどうぞ。

「CASHのビジネスモデルは、仕入れた価格よりも1円でも高く売ること。買い取ったものをどこで売るかがキー。二次流通市場は大きく、さまざまなプレイヤーがいるが、利益と効率の観点から今は独自の販売チャネルを開拓しているところです」

メルカリは、買い取った商品をメルカリ内で販売できる点を強みとするが、CASHは自社で売るか別の業者に任せるか、いろんな手法を試していると語る。二次流通で問題になる「偽物」のチェックについては、「企業が買い取って実物をチェックするため、査定で偽物は二次流通の場に戻らないようにすることができる」と自信を見せる。

CASH

2017年6月CASHをリリース後、申し込みが殺到し過ぎてわずか16時間でサービスを2カ月ほど停止。その16時間で3億6000万円分の「キャッシュ化」がされた。

出典:CASH

買取り価格で差別化をしていく

CASHといえば、メルカリNOW開始直後、即座に「最低査定価格1000円」をうたって価格対抗を仕掛けたことも印象的だった。CASH・メルカリNOWの比較記事「『メルカリNOW』対『CASH』の激突、熱気帯びる”ノールック買取り”サービス」で言及した通り、価格は大きな差別化ポイントと言える。

しかし、2017年12月7日以降はキャンペーン対象者を「新規会員のみ」に変更している。光本氏は変更の理由について、24時間サービスを提供するためだと語る。

「想定以上に利用者が多く、(最低査定額)1000円だと当時の1日の買取り価格の上限である1000万円に(当日の営業開始後)1時間程度で達してしまう状況だった。今は上限価格をもっと増やしているが、それでも新規ユーザーの方に対してサービスを提供できない状態が続いた。これではサービスとして成立していないので、“最低査定価格1000円”の対象者を一時的に新規ユーザーに限定した」

cash

2017年12月7日にユーザー向けに配信された「最低買取り1000円」変更のメッセージ。初回のユーザーのみ1000円という形に改められた。

“査定対象商品ならなんでも1000円で買い取る”というのは一見乱暴な話にも聞こえるが、Webサービスのマーケティングにおける顧客獲得単価の考えからすれば、これは一種のプロモーションフィーと見ることができる。実際、光本氏自身も、「実際の売り価格が1000円以下の商品も存在するが、まだ即金買取りサービスの利用者はマスではない。だから、まずは体験してリピートしてもらいたい。(最低1000円はそのための)プロモーションの要素が大きい」と認める。

DMMグループ入りしたCASHは今後、新たな二次流通の創出にどんなビジョンを描いているのだろうか?

「モノを売る行為を究極的に簡単にしていきたい。まだまだ圧倒的に簡単にできると思っている。例えば、今は写真を撮った後に、どのブランドなのか、どういう使用状況なのか、選ばないといけない。今あらゆる商品の査定をしていて、毎日データベースが蓄積されている。それらを分析していけば、ブランドをユーザーが埋めなくても、自動で判別できるようになるかもしれない」

買取り価格については、将来的には株価のように随時変動させたいと考えている。光本氏は言う。

今は二次流通の価格を参考にしながら買い取っているが、商品の需要は(本来)日々変動する。それをリアルタイムに参照したり、需要を予測したりしながら買い取る。適切なものを適切な価格で買い取るようにしていきたい

(聞き手・伊藤有、木許はるみ、構成・室橋祐貴)

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