1月12日、東京・神田で仮想通貨をテーマにしたアイドルユニット「仮想通貨少女」が誕生した。デビューステージにはTBSやテレビ朝日などの国内大手メディアのほか、ロイター、フィナンシャル・タイムズ、AFP通信を始め、多くの海外メディアも詰めかけた。
「音楽的要素が加わると予想していた」
仮想通貨少女は、2016年から活動しているアイドルグループ「星座百景」の派生ユニットとして結成された。8人のメンバーはそれぞれ、ビットコイン、ビットコインキャッシュ、イーサリアム、リップル、ネム、ネオ、モナ、カルダノの8種類の仮想通貨を「推している」とされる。
デビューステージでは、仮想通貨について説明した「月と仮想通貨と私」など3曲を披露したほか、メンバーたちが自分が担当する仮想通貨についての自己紹介もした。
仮想通貨少女のメンバー。左から成瀬ららさん(ビットコインキャッシュ担当)、白浜妃奈乃さん(ビットコイン担当)、南鈴々華さん(ネオ担当)。
このニュースをこぞって報じたのが海外メディアだ。
ロイターは1月13日の記事で「仮想通貨は世界、特に日本を席巻している」と報じ「日本のポップグループがビットコインの流行に乗った」と論じた。
ビジネスインサイダー(アメリカ版)でも日本版に先がけて1月13日に記事が掲載されている。仮想通貨少女の服装について「女子学生・セクシーメイド・メキシカンレスラーの奇妙なマッシュアップ」とし「もみあげの部分に白いファーと、耳の上にポンポン玉がついている。このマスクは日本のカルチャーである“カワイイ”の流れを受け継いでいる」と詳しく伝えた。
記事を書いたゾーイ・バーナード氏(Zoë Bernard)は「Jポップ + 仮想通貨」という組み合わせがとても奇妙で魅力的だと語る。
「『仮想通貨少女』はいい意味で非常に奇妙(なコンセプト)です。まだ多くの人が仮想通貨に対して警戒心を抱いていますが、10代の少女が歌うことによって少しだけ親しみやすくなっているように思えます」
SNS上でも広く拡散し、コンピュータセキュリティ企業・マカフィーを創業したジョン・マカフィー氏(John McAfee)も「仮想通貨は日本でメインストリームになっている」とコメントした。
「仮想通貨は日本でメインストリームになっている。私は(仮想通貨に)音楽的要素が加えられると6カ月前から予想していた」
4割が海外からアクセス、最も多いのは韓国
仮想通貨少女のマネージャーは「このプロジェクトが始まってから、立ち止まる時間もないくらい多くの問い合わせをもらっている」と話す。英語のほかロシア語での取材依頼もあり、専門知識も必要なことからやりとりの難しさを感じることもある、という。
デビューイベントには、ファンのほか多くの取材陣もつめかけた。
公式ウェブサイトも4割程度が海外からのアクセスだという。アメリカ、イギリス、オーストラリア、中国など世界各国から訪問者がいるが、日本以外で最も多いのは韓国で、全体の1割ほどを占めているという(1月13日時点)。
FTは「日本はリベラルな立ち位置」
フィナンシャル・タイムズは1月12日、「日本のガールバンドが仮想通貨に声を与えた」という見出しで報じた。
海外大手メディアも「仮想通貨少女」について大きく報じた。
参照:フィナンシャル・タイムズ
この記事を書いたフィナンシャル・タイムズの東京特派員、レオ・ルイス氏(Leo Lewis)は「世界で起こっている仮想通貨をめぐる現象を理解するために、日本は注視すべき非常に重要な国だ」と語る。
その理由としてビットコイン取り引きの40%が日本円によるものだというデータが出ていること、中国や韓国などで仮想通貨の規制が進められている点をあげた。日本は仮想通貨においていわばリベラルな立ち位置を占めている、とルイス氏は分析する。
会場に貼られていたポスターには、書き換え可能な形でそれぞれの仮想通貨の時価総額ランキングが表示されていた。
フィナンシャル・タイムズの記事ではステージ上での自己紹介の様子が伝えられている。ビットコインを担当するメンバー(白浜妃奈乃さん)が、ビットコインキャッシュを担当するメンバー(成瀬ららさん)から挑戦を受けるというシーンだ。
ルイス氏はこの部分について「複雑な概念をシンプルにして伝える手法が面白いと感じた」と説明した。
「私たちもハードフォーク(編集部注:新旧の互換性がないアップグレードのこと。2017年8月、ビットコインからハードフォークしてビットコインキャッシュが生まれた)についての記事を掲載したことがありましたが、技術的な知識も必要で時間もかかり大変でした」
「日本では以前から、マルクス主義や国際関係についてわかりやすく説明する漫画やテレビ番組などもあります。そう考えると『仮想通貨少女』のようなアイドルユニットの誕生はうなずけるものです」
(文・写真、西山里緒)