「フランス勢に続け」CESの日本ベンチャー出展に“団結”の動き、求められる「JAPANブランド」:CES2018

merchari

CES出展企業の1社、tsumug社のブースで初展示されたメルカリのシェア自転車「メルチャリ」のプロトタイプ。

その年の技術トレンドをうらなうイベントであるCESには、毎年、世界中からスタートアップ企業が出展する。中でもここ数年存在感を増しているのが、フランスが国をあげて支援している「French Tech」(フレンチテック)と呼ばれる一団だ。

CESのスタートアップ出展エリア「EUREKA PARK(エウレカパーク)」には2018年、270以上と過去最大規模の「La French Tech」ブースが並んだほか、英国やイスラエルなどの他国でも、フランスに続けとばかりに国単位でアピールする姿が目立った。

「国をあげたスタートアップ支援」が一大勢力となるなか、日本でも一部企業の呼びかけで、今年初めて「JAPAN TECH」としての出展が行われた。CES常連組の日本のハードウェアスタートアップCerevo、そのブースに隣接する形でDMM.make AKIBA系のスタートアップ数社が共同出展。さらに国内外の取材メディア向けのイベントも開催するなど、技術や製品を世界へ売り込もうという、スタートアップの熱を感じることができた。

「日本ブランド」を打ち出すベンチャー支援の必要性

JAPAN TECH

「JAPAN TECH」でも、海外メディア向けのイベントを開催。出展社によるプレゼンテーションが実施された。

「JAPAN TECH」は、CESを主催するCTA(Consumer Technology Association)のメンバーであるCreative Visionの呼びかけで、今年初めて実現したもの。フジ医療器、リコー、江崎グリコ、Makuakeなどのほか、選考会を経て選出されたスタートアップ数社もCESへの初出展を果たした。

代表の加藤浄海氏によると、このプロジェクトのきっかけも、実はフレンチテックだと語る。CESをステップに急成長していく他国のスタートアップを横目に、日本の遅れに対して危機感を抱いたことから、「日本のスタートアップにも、こうした展示会を経験できる場が必要だと考えて、3年前からプロジェクトがスタートした」と言う。

一方、起業家同士で団結する動きもある。LTE内蔵のコネクテッド・ロック「TiNK」を展開するtsumugを中心に共同出展をしていたのは、DMM.make AKIBAを拠点とするハードウェアスタートアップ勢だ。会期前には、tsumugの呼びかけに対して手を上げた3社に加えて、「JAPAN TECH」参加組なども加わり、メディア向けに初めての出展企業による日本メディア向けの合同説明会「CES2018 Startup Japan Lounge」も開催された。

JAPAN TECHブース

「JAPAN TECH」のブースには、12社が出展。共同出展することで、展示ブースを大きく確保し、アピールできるメリットもあるという。


DouZen

DouZenは、クラウドコンテンツやスマートホームを直感的に操作できる、ボール型のUI「Hale Orb (ハレ オーブ)」を出展。


「VAQSO VR」

VAQSOは、VRヘッドセットにセットし、コンテンツと連動した「臭い」で、よりリアルな体験ができる「VAQSO VR」を紹介した。


Scentee

Scenteeは、インテリアに溶け込むデュフューザー「Scentee Machina」を開発。サブスクリプションサービスの展開を目指す。


BOCCO

ユカイ工学はクッション型セラピーロボット「Qoobo」と、コミュニケーションロボット「BOCCO」を出展。


全巻一冊 北斗の拳

本という形にこだわりながら、中身は電子書籍で全巻持ち運べ、しかも多言語対応をめざした読書ガジェットも。Progress Technologyの「全巻一冊 北斗の拳」。

DMM.make AKIBA系の出展が存在感

tsumugブース

tsumugを中心とした共同出店出展ブースは、Cerevoのブースに隣接。

今回「CES2018 Startup Japan Lounge」の発起人となったtsumugは、LTEに対応したコネクテッド・ロック「TiNK」を展開する。2017年11月には日本国内でもTiNKの発表をしている。

「TiNK」はインターネットを通じて各種データをやり取りするIoTプラットフォームに、さくらインターネットの「sakura.io」や米Afero社の「afero」を採用し、スマートフォンやNFCのほか、テンキーやジェスチャーを使った解錠が可能。鍵のシェアや入退室の見守り、さらにデバイス連携などさまざまなサービスとつながることができる。「CES2018 Startup Japan Lounge」では、より幅広いサービスとの連携を目指す取り組みとして、デベロッパーキットを提供開始もアナウンスされた。

CES2018 Startup Japan Lounge

「CES2018 Startup Japan Lounge」では、木製のカバーが施された高級感のある「TiNK」の最新モデルも紹介された。

tsumug代表取締役の牧田恵里氏

「CES2018 Startup Japan Lounge」で開催概要を説明するtsumug代表取締役の牧田恵里氏。

tsumugにはメルカリらも出資している。メルカリが今年サービスインを予定している、自転車シェアリングサービス「メルチャリ」のスマートロックにtsumugの技術が使われることが発表されている。tsumugブースでは、メルチャリの実機(プロトタイプ)が一般向けに世界初披露された。

担当者によるとサービスインは2018年のなるべく早いタイミングを目指したいとのこと。おそらく東京都ではない都市部からのスタートになりそうだ。

メルチャリ

プロトタイプながら、自転車のデザインはほぼ最終形。カラーはメルカリのロゴに寄せたものだという。


BRAIN MAGIC

BRAIN MAGICは、クリエイターの使用頻度の高いソフトウエアのショートカットキーを押す、倒す、回すといった直感的な操作に割り当てられる入力デバイス「O2」を提供する。


ORPHE TRACK

なおCESでは独自にブースを構えるno new folk studioも、「CES2018 Startup Japan Lounge」に参加。モジュール型スマートフットウェアのプラットフォーム「ORPHE TRACK」を発表した。


PLEN

PLEN Roboticsは音声操作や見守りが可能な箱形ロボットアシスタント「PLEN CUBE」を出展。「TiNK」との連携の可能性も示唆した。


Arblet

Arbletは血中酸素濃度や心電図、血圧などさまざまなバイタルデータを取得、解析できる独自のウエアラブルデバイスを用いて、収集したバイタルデータの解析プラットフォームを展開。

隣接するCerevoのブースでは剣型スマートトイに注目が集まる

Cerevoブース

「Sans Expos」会場入り口に近い好立地だったCerevoのブース。

tsumugにブースの一部を提供する形で、隣接しての出展となったのは、日本を代表するハードウェアスタートアップのCerevo。同社のCESへの出展は6年目。昨年はアニメ「攻殻機動隊 S.A.C」に登場する多脚戦車を再現したスマートトイ「1/8タチコマ」が話題を集めたが、今年の目玉は、ライトノベル「ソードアート・オンライン」で主人公キリトが使う剣を再現したスマートトイ「エリュシデータ」だ。

2000個のLEDと6軸センサーを搭載し、持つ人の動きにあわせて光と音を発するだけでなく、音声認識機能も搭載。必殺技を口にすると、効果音と光を使ったド派手な演出が再現される様子に、多くの人が足を止めていた。

同社がユニークなのは、この技術を他作品にも横展開可能なプラットフォームとして売り込もうとしている点だ。代表の岩佐琢磨氏によれば、実際にブースを訪れる世界各国の人々の中には「ソードアート・オンライン」や「エリュシデータ」を知らない人もいるが、デモを見て「あの作品のあの武器にも応用できるのではないか」といった提案を受けることが多いという。プラットフォーム化に向けての手応えを感じたと語っていた。

エリュシデータ

「エリュシデータ」のデモ。ピークの時間帯には多くの人だかりができていた。

またCerevoブースでは、CESに合わせて発表した、CtoCでの無人販売を可能にする小型の自動販売機「Qvie」も展示。3G/4Gのモバイル通信機能とバッテリーを搭載し、省電力な電子ペーパーを採用した専用のディスプレイデバイスを使って、QRコードまたはNFCでの決済および自動解錠を実現する。

Airbnbなどの室内に設置することを想定したデバイスで、コードレスかつインテリアにマッチするデザインも特徴のひとつ。ぱっと見ただけではその用途がわかりにくいデバイスだが、米国では日本よりもAirbnbが浸透していることもあり、「来場者の理解も早く、反応も良い」と岩佐氏。ブースにはさらに、昨年からコンセプトを一新した、VR向けの触覚フィードバックデバイス「Taclim」の体験コーナーなども設置されていた。

Qvie

水やワインを提供するのにちょうどいい「Qvie」。複数のボックスの解錠を1つのディスプレイデバイスで制御できる。

さらなるスタートアップ間の出展連携や国の支援に期待

今回実現した「JAPAN TECH」も「CES2018 Startup Japan Lounge」も、Japanという名前は背負っているが、政府またはそれに準じる団体からの支援は一切受けていない。いわば草の根的に立ち上がったプロジェクトで、それゆえ規模も小さく、同じ日本の記者としては少し寂しく感じる部分もあった。

Creative Visionの加藤浄海

「JAPAN TECH」を呼びかけた、Creative Visionの加藤浄海氏。

たとえば「JAPAN TECH」のブースがあったのは、CESのメイン会場であるラスベガス・コンベンション・センターの最も奥という、立地的には決して良いと言えない場所。Creative Visionの加藤氏は「政府に任せていたのでは遅いと民間でできることから始めたが、一方で民間だけの力ではできることに限界もある」と話す。


jetro

JETROが支援するエウレカパーク内の日本のスタートアップのブース。他国のように目立つ看板がないのは、フレンチテック勢を見たあとではどうしても少し寂しい印象がある。

日本のスタートアップ数社の出展を支援したJETRO(日本貿易振興機構)の担当者によると、CES2018では先にエウレカパークへの出展を決めていたJETROと、「JAPAN TECH」側のタイミングがあわず、連携が適わなかったという。

他国のようにエウレカパーク内に「日本」ブースを構えられるのが理想的だが、同会場は参加可能なスタートアップに対する要件が厳しい。また、他国に比べそもそもスタートアップの数が少ない日本では、規模を確保すること自体も難しいという事情もあると語る。

そうは言うものの、スタートアップを支援したいという同じ志を持つ動きが、結果的に分散してしまうのは、少々もったいなく思える。草の根からの動きを大きく増幅していくには、やはりフランスのように国をあげての支援や出展交渉は少なからず有効なはず。来年のCESでの進展にぜひ期待したい。

編集部より:初出時、アパマンショップホールディングスをtsumug社の資金調達先としていましたが、正しくは販売提携先です。お詫びして訂正いたします。 2018年1月15日 19時45分)

(文、写真・太田百合子)


太田百合子:フリーライター。パソコン、タブレット、スマートフォンからウェアラブルデバイスやスマートホームを実現するIoT機器まで、身近なデジタルガジェット、およびそれらを使って利用できるサービスを中心に取材・執筆活動を続けている。

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