アップルストア、バッテリー交換を求める人で混雑

アップルストアの様子

Grant Robertson/flickr

  • アップルは現在、iPhoneのバッテリー交換プログラムを通常より大幅に安価な29ドル(日本では3200円)で提供している。
  • 多くの人がこの機会にバッテリー交換を希望しているが、アップルストアのバッテリーの在庫数は十分ではなく、交換には数日、あるいは数週間かかっている。
  • だがバッテリー交換を希望している人の多くは、実際にはバッテリー交換は不要とアップルストアのスタッフは語った。

アップルストアは、今回の特別なバッテリー交換プログラムでiPhoneを復活させようと考えているユーザーの急増に直面している。

バッテリーが古くなったiPhoneのパフォーマンスを意図的に遅くしているという事実が明るみに出た後、アップルはバッテリー交換の価格を大幅に引き下げた。価格の引き下げ以降、顧客の購買体験を向上させるためにシンプルかつ注意深く調和が保たれたアップルストアは、iPhoneを手にした人たちで混雑している。

一部の店舗では、専門スタッフがいる「ジーニアスバー」の待ち時間が数時間にも及んでいる。多くの店舗では緊急対応として、専用の場所やテーブルを設置している。

来店者数の想定外の増加により、アップルストアでは交換用バッテリーの在庫がなくなっている。そのため、すぐにバッテリーを交換するのではなく、ストアはバッテリーを発注し、およそ1週間後、バッテリーが納品された後にユーザーに連絡するという流れになっている。

しかもアップルにとっては不幸なことに、交換用バッテリーの多くは、実際は新しいバッテリーを必要としない人たち、つまりバッテリーを交換しても、iPhoneのスピードは改善しない人たちに渡っているとアップルストアのスタッフは語った。

新しいバッテリーは不要との診断結果を信じないユーザーも

「実際に新しいバッテリーが必要なiPhoneは10%以下だと思う」とアメリカ中西部のアップルストアで働くジーニアスはBusiness Insiderに語った。

「実際に新しいバッテリーが必要な人たちにとって、状況は悪くなっている。アップルがバッテリーの“セール”を行っていると考える人たちの影響で、待ち時間が長くなっている」と同スタッフは続けた。

アップルの技術者は、バッテリーを交換する前にバッテリーの“老朽レベル”をチェックする。つまり、バッテリーの充電回数、および充電能力がどれくらい残っているかを測定する。

だが診断結果に基いて、アップルの技術者がバッテリーの状態は良好とユーザーに伝えても、多くのユーザーはそれをバッテリーを交換することへのスタッフのちょっとした落胆と受け取り、バッテリー交換を求めている。

アップルストアのスタッフ、およびユーザーの話によると、 交換用バッテリーはおおよそ1週間程度で届く。だが、アップルストアのスタッフによると、iPhone 6 Plus用のバッテリーは不足しているようだ。

MacRumorsによると、iPhone 6 Plusはすでに製造されていないため、iPhone 6 Plus用のバッテリーは3月、または4月まで入荷しない模様。また、iPhone 6およびiPhone 6S Plus用のバッテリーは2週間待ちとも伝えた。「すぐに手配できる交換用バッテリーには限りがある」とアップルの広報担当者は12月末、Business Insiderに語った。

これまでの経緯

アップルストアに並ぶユーザーたち。

アップルストアに並ぶユーザーたち。

AP

長年にわたって多くのアップルユーザーは、アップルが新しいiPhoneを発表する時期になると、なぜか自分のiPhoneが遅くなったように感じていた。「計画的な陳腐化」という陰謀説、つまり新商品を買わせるための姑息な手法なのではないかという説も数多く浮上していた。

著名な「ベンチマーク」テストの開発者が2017年12月に公開したデータが、この仮説をほぼ立証したことを受け、iPhoneユーザーの怒りは爆発した。

アップルは、古いiPhoneのパフォーマンスを意図的に制限している場合があることを認めた。だが、その理由は買い替えを促すためではなく、単にリチウムイオンバッテリーの機能上の問題と説明した。

古くなったバッテリーはiPhoneのプロセッサーがピーク時に必要とする電力を供給できない場合があり、その結果、突然、iPhoneがシャットダウンすることがある。突然のシャットダウンを避けるために、アップルが取った解決策はバッテリーが古くなったiPhoneのプロセッサーの最大速度を引き下げることだった。

この決定に関する謝罪の中で、アップルは複数のiPhoneのバッテリー交換の費用を通常の79ドルから引き下げ、29ドル(日本では3200円)で提供することを発表した。だが、ユーザーの混乱は続き、今回の措置に対して、議員から質問が出され、数件の訴訟が起こされた。

ウォール街はバッテリー交換プログラムにより、iPhoneの買い替えを先延ばしにするユーザーが増えることを懸念している。バークレイズのアナリストは、仮にバッテリー交換の対象となるiPhoneユーザーの10%が新しいiPhoneの購入ではなく、バッテリー交換を選択した場合、2018年のiPhone売上台数は1600万台減少し、アップルは100億ドル(約1.1兆円)以上の売り上げを失うことになると試算した。

まずはバッテリーをチェック 

iPhoneのバッテリー

iFixit

この機会にバッテリー交換を検討しているユーザーは、バッテリーの老朽化時期を考慮し、今年後半までを視野に入れて考えると良いだろう。29ドル(3200円)でのバッテリー交換は2018年12月まで実施される。

アップルが行っている正式なバッテリー診断テストを自宅で行うことはできないが、アップルは今後のソフトウエアアップデートで、新しいバッテリーが必要かどうかを判断できる機能を追加する予定だ。

また、アップルのウェブサイト、またはアプリを通じて、アップルのサポートチームに連絡し、新しいバッテリーが必要かどうかを調べることも可能。だが、サポートチームは通常、ユーザーのバッテリーの状態についての詳細は明らかにせず、バッテリーが「良好」か否かだけを告知する。

またiPhoneのプロセッサースピードテストをダウンロードし、バッテリーが古くなったことでiPhoneが遅くなっているかどうかを調べることもできる。

1つ注意しておくと、29ドル(3200円)でのバッテリー交換は、1台につき1回のみ。今回、29ドル(3200円)でバッテリーを交換した場合、同じiPhoneで次に交換する際にはこれまでの料金79ドル(日本では8800円)が適応される。

[原文:Apple stores are slammed because of the $29 battery replacement offer — but not everyone needs a new battery

(翻訳:まいるす・ゑびす/編集:増田隆幸)

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