アリババは、高齢者に大人気の広場ダンスのリーダーに照準を当てている。
中国最大のEC企業アリババが、「60歳以上、年収35万~40万元(約600~700万円)」の条件で、ネット人材を公募している。「広場ダンス」など、地域の高齢者コミュニティーのKOL(Key Opinion Leader=影響力を持つオピニオンリーダー)を優遇するという。
中国の30歳前後のホワイトカラーの月収は、全国トップの北京でも1万元(約170万円)前後が主流とあって、ネットでは「私より好待遇なんて!」「親を応募させる」など大反響を呼んでいる。
アリババが掲載した60歳以上限定の求人情報。
アリババが自社の求人サイトに60歳以上の求人情報を掲載したのは1月16日。ポジションは「(アリババが運営するECサイト)タオバオ(淘宝)のベテランユーザー研究専門員」としている。具体的な業務として、新規に立ち上げたSNSコミュニティーで、高齢者、未成年などさまざまな層の交流を促進するサービス「親情版」について、高齢者の視点から問題点や改善点をフィードバックし、座談会やアンケートなどを通じてユーザー体験を向上させることと説明している。
応募資格は「大きな影響力」「子どもとの良好な関係」……。
応募資格は60歳以上という年齢のほかに、
- 子どもとの関係が良好であること
- 中高年のコミュニティーに属しており、その中で大きな影響力を持っていること(広場ダンスのリーダー、地域委員などを優先する)
- ネットショッピング経験1年以上(3年以上の経験者を優先)
- 心理学や社会学などの書籍を読むことが好きな人を優先
- 公益、地域活動に熱心に取り組む人を優先
- コミュニケーション能力に優れ、思考の切り替えが得意で、ユーザーの感想を的確に把握し、素早い問題解決を図れる人
と明記されている。
アリババが狙うのは中高年の潜在市場だ。
募集は2人だが、SNSで大きな話題となり、現地メディアによると自薦、他薦での応募が殺到しているという。
アリババが2017年10月に発表した「父親・母親のモバイルネット生活報告」によると、中国の50歳以上のネットショッピングユーザーは約3000万人。中心は80後(1980年代生まれ)、90後(1990年代生まれ)の親世代で、ネットショッピングで子どもの影響を強く受けるという。同報告によると50歳以上のネットショッピング月間消費額は平均5000元(約9万円)弱で、買い物件数は44件。
中国の中高年の間では、公園や広場に集まって集団で踊る「広場舞(広場ダンス)」がこの数年大ブームとなっており、大きな公園では早朝や夜、週末にたくさんのグループがさまざまなダンスを踊っている。ネットユーザー数が天井に近づき、中国EC市場の成長も鈍化に向かう中、アリババは新たな成長源として、中高年コミュニティーのリーダーの発信力や影響力に目を付けたようだ。
(文・写真、浦上早苗)