夜明けとともに起床、モノは持たない! 「世界で一番幸せな人」が過ごす日常とは

マチウ・リカール

マチウ・リカール。

Jim Brandenburg via Shechen Archive

  • チベット仏教の僧侶でダライ・ラマにも近いマチウ・リカール(Matthieu Ricard)は、幸せに関するプレゼンテーションや著書で世界的に知られている。
  • その瞑想中の脳波の動きから、欧米メディアは彼を「世界で一番幸せな人」と呼ぶ。
  • リカールは写真家でもあり、その作品からは、ネパールのヒマラヤで暮らす彼の生活が垣間見える。
  • 彼は日々、瞑想や慈善活動をしたり、仲間の僧侶たちと過ごしている。

一般的なチベット仏教の僧侶は、喧騒から離れ、主に山の僧院で過ごす。だが、マチウ・リカールは違う。

1946年、フランスで哲学者の父と画家の母の間に生まれたリカールは、ヒマラヤで僧院生活を始める前、かの有名なパスツール研究所で分子遺伝学の博士号を取得。 30歳で僧侶になるまで数多くの師の下で学び、1989年にはダライ・ラマのフランス語通訳になった。

1997年には父親と共著で『僧侶と哲学者 —— チベット仏教をめぐる対話』を出版(編集部注:日本語版は2008年)、年老いた父親との絆作りのために作った本が、フランスで驚くほどのベストセラーとなった。メディアで取り上げられて以来、リカールは期せずして有名人になった。

2000年にはウィスコンシン大学の瞑想に関する研究に協力、そこで記録された脳波の動きは被験者となった僧侶の中で最も活発で、その後、欧米メディアは彼を「世界で一番幸せな人」と呼んだ。ただ、リカール本人はそう呼ばれることを喜んではいないようだ

ダライ・ラマにならい、リカールは自身に対するメディアの注目を利用して、幸福や愛他主義に関する教えを広めている。その活動によって得られた利益は全て、自身が設立した非営利団体「カルナ・シェチェン(Karuna-Shechen)」に入る。

リカールにとって、ネパールのシェチェン僧院こそがホームだ。だが、年によっては、その大半を海外の他の僧院やTEDグーグル、国連といった企業・組織での講演活動に費やしている。

Business Insiderでは、最新作『Beyond the Self(自我を超えて)』の出版に先駆け、リカールに話を聞いた(収録:ポッドキャスト『Success! How I Did It』)。また、カルナ・シェチェンからはリカールの撮影した写真を入手、これらを組み合わせ、ネパールで過ごすリカールの春のある1日をイメージしてみた。著書『Happiness 幸福の探求 —— 人生で最も大切な技術』や『Altruism(愛他性)』も、参考にしている。

(敬称略)


リカールは夜明けとともに起きる。山々を超えて、日がのぼるのを見る。

夜明け

Matthieu Ricard

彼の自宅はシンプルなワンルームだ。わずかな着替えの他には、小さなキッチンと芝生の庭があるだけだ。「シンプルにあることで、心の平穏に至ることができる」と書いている。

ただし、自宅の撮影は許可したことがないという。

新しい1日の始まりに、リカールは村人や同じ僧院の仲間を見つめる。

子どもたち

Matthieu Ricard

海外での講演活動などで忙しいときは、リカールが自宅で過ごせるのは1年のうち2、3カ月ほどだ。

だが、2018年はこうした活動を前半に集中させ、ネパールで過ごす時間を確保したいと語っている。

自身の慈善団体カルナ・シェチェンが作った、近くの村の学校を訪れることも。普段からカメラを持ち歩いている。

カメラを片手に、子どもに囲まれるリカール

Shechen Archive

カルナ・シェチェンは、へき地教育 —— 中でも、これまで教育の機会すら与えられてこなかった、恵まれない少女や女性の教育に力を注いでいる。子どもたちは、リカールに会うのを楽しみにしている。

笑顔あふれる子どもたち

Matthieu Ricard

「利他的な愛と思いやりが、真の幸福の基礎だ」とリカールは書いている。

2000年には、僧院の近くにシェチェン・クリニックという病院を建設、貧しい人々に医療を提供している。

車いすの女性の手を握るリカール

Shechen Archive

リカールは書いている。「他者のための良い行いは、自分の幸せを犠牲にすることを意味しない。結果は正反対だ」

「あらゆる存在は、見つけてもらうことを待っている宝物だ」そう信じるリカールは、ベジタリアンだ。同じ僧院に暮らす、大半の僧侶仲間と同じく、基本的に彼は果物と野菜しか食べない。

やぎを抱くリカール

Matthieu Ricard

僧院に向かう道すがら、リカールとその仲間の僧侶たちは必ず、町にあるボダナート(チベット仏教において、精神的な重要性を持つ巨大仏塔、ストゥーパ)の周りを歩く。

ボダナートの周りを歩く僧侶たち

Matthieu Ricard

僧院から約10分の距離にある。

現在のシェチェン僧院は、ダライ・ラマの師でもあったリカールの師、ディルゴ・キェンツェ・リンポチェ(Dilgo Khyentse Rinpoche)が1985年に建立した。

シェチェン僧院

Matthieu Ricard

精神の浄化を表す火の儀式を含め、ここでは数多くの儀式が執り行われる。

火の儀式

Matthieu Ricard

踊りの儀式は、動きを通じた瞑想の形態の1つと考えられている。

踊りの儀式

Matthieu Ricard

リカールは、こうした儀式を他の観客とともに見学する。こちらの写真で一緒に写っているのは、眼科外科医のサンダック・ルート(Sandak Ruit)博士だ。北朝鮮を含め、世界各地の孤立した、貧しい地域へ個人で赴き、現代医療を提供している。

サンダック・ルート博士とリカール

Shechen Archive

10日間にわたる祝いの儀式の最後に、僧侶たちはバターキャンドルに火を灯し、祈りを捧げる。

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Matthieu Ricard

71歳のリカールは、20代の頃から瞑想を学び、さまざまな形式をマスターしている。

誰でもすぐに試せるお勧めは、マインドフルネス瞑想(気づきの瞑想)だという。5分~10分をかけて、個人や集団の利他的な愛を感じ取ることに集中する。

山に夜が訪れた。リカールは普段、9時もしくは10時には眠りにつくという。

夜

Matthieu Ricard

リカールは1日を通して、1991年に亡くなった師、ディルゴ・キェンツェ・リンポチェのことを考えている。そして彼が、どうリカールに自身の中の幸せを育て、世界へ広めよと教えたか、考え続けている。

リカール

Shechen Archive

「幸福は、わたしたちに起こる何かではない。磨くべきスキルだ」リカールは書いている。これはわたしたちの力の及ばない存在を受け入れ、思いやりある生き方に身を捧げることで、磨くことができる。

「1時間ごとに10秒、誰かの幸せを祈ろう」リカールは言う。「これが変革をもたらす」

[原文:A day in the life of 'the happiest man in the world' — a Buddhist monk who wakes at dawn to watch the sunrise, owns only a few pieces of clothing, and spends hours wishing happiness for others]

(翻訳/編集:山口佳美)

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