はれのひの異変は11月から。友達のいないやり直し成人式は「意味がない」

成人の日に振袖が届かず、音信不通になった晴れ着のレンタル・販売業者「はれのひ」の問題。東京都八王子市内や横浜市内では、再び成人式を行う支援の動きが広がっている。ところが、被害者の中には、「やっぱり成人の日の行事だから……」と支援に気持ちが向かない人もいる。2017年の11月から、はれのひの“異変”に振り回されてきた被害者は、やや疲れた口調で今の心境を語った。

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支援の輪が広がる中、善意に気持ちが追いつかない被害者もいる(写真はイメージ)。

Yuya Shino/Reuters

支援の動きは、成人式の当日から始まった。はれのひと契約していた被害者に、別の業者が振袖を貸したり、着付けをしたり。素早く手助けの輪が広がった。

成人式の翌日以降も民間の団体が救済を発表、2月の第1、2週は、各地で成人式や記念撮影のやり直しが企画されている。

2月4日は、キングコングの西野亮廣さんが発表した「リベンジ成人式」。横浜市で、「京都きものレンタルwargo」と「アニバーサリークルーズ」の協力を受け、振袖の着付けや撮影、クルーズディナーを贈る企画だ。2月12日は、八王子市の呉服店「きものの西室」を中心とした実行委員会が企画した「八王子市成人式プレゼント」。市内のホールで行う。雑誌を発刊する「VENUS」による振袖撮影会も2月3日に予定されている。

きものの西室の西室真希さんは「協力したいという人は、各部門で50人ずつくらい集まっている」と話し、八王子市の後援も決まった。「市内全体」が応援しているような反響という。

被害の相談が多い横浜市は1月19日に、被害者を支援する団体・企業を紹介する特設サイトを開く。市生涯学習文化財課には、ボランティアの申し出や成人式への賛否などの意見が、1月12日正午までに100件以上、寄せられた。

協力する側の動きは盛んにあるが、「被害者からの声はほとんどない」と市の担当者は明かし、「『そっとしておいて』という声があるとも聞いている。被害者のニーズが分からない」と話していた。

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横浜市は19日に特設サイトをオープンした。

出典:横浜市

親戚の振袖借りても会場に入れず

各地で起こる善意の行動を称賛、歓迎する意見もある。

ただ、はれのひと契約をしていた短大生の女性(20)は救済を求めたり、被害を訴えたりする気になれないでいる。

女性は高校3年生のころ、自宅のポストに入っていた「はれのひ」のチラシを見て、「早くしないと良いのがなくなっちゃうし」と店舗でレンタル契約をした。ディズニーのペアチケットがもらえるキャンペーンもあり、高校3年生の1月ごろ、25万円ほどで振袖や帯、バッグなど一式のレンタル契約を結んだ。

契約からほぼ2年、待ちに待った成人式の当日。新横浜駅前のホテルの着付け会場に着いても、はれのひのスタッフはおらず、自分の振袖もない。

「周りは振袖とか一式を持っている人が多くて、ほかの業者さんに着付けをしてもらえていた。私は何も持っていなくて」

急遽連絡をして、迎えに来てくれた母親は泣いていた。

女性は「その時は、結構テンションが下がってて、もう仕方ないから、式に出なくても」と落ち込んだ。だが、友人らの励ましもあり、親戚を回って、振袖や小物を探した。何とか美容院で髪もセットし、式典会場に着いた。すでに閉会の5分前。もう会場には入れなかった。

「やっぱり一生に一度のことだったので、あり得ないし、怒りを通り越して、悲しい」

被害届もはれのひへの連絡もする気になれず、成人式のやり直しにも「もう行かなくていい感じです」とうなだれた様子。

「 やってくれる気持ちは、ありがたいし、うれしい。だけど、やっぱり、その日(成人の日)の行事だから。友人がいないと意味もない」

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はれのひのサイトでは前撮りの様子も見られる。だが、この女性に前撮りの写真は届いていない。

出典:Yotubeのチャンネル「Webはれのひ」

前撮り前日「台風で届いていない」

女性は成人式の式典が終わった後に、友人らと写真撮影はできたものの、前撮りした記念写真は手元にない。

女性は前撮りを2017年11月18日に予約し、美容院の予約も髪飾りも生花も注文もしていた。しかし、前日の17日に“異変”が起きる。はれのひのスタッフから、女性の母親の携帯電話に「(予約をしていた振袖を)海外で仕立てていて、台風で飛行機が間に合わず、振袖が届いていない」という趣旨の連絡が入り、別日の撮影を提案された。

急な話で『もっと前に言ってよ』と思ったけど、天気の話だから仕方ないか」と感じ、11月18日には撮影会場ではれのひが用意していたほかの振袖を選んで、撮影をお願いしていた。

しかし、当日会場に着くと、「やっぱり届きました」と言われた。ただし、「中の半襟はまだない」。女性は振袖の現物を見ることなく、「いきなり『ある』と言われても」と別の振袖を選んで撮影に臨んだ。

高校3年生の早い段階で、豊富な種類の中から選りすぐったお気に入りの振袖、「本来の振袖で撮りたい」と1月14日に後撮りの予約を入れていた。結局、撮影はできていない。女性の手元には、11月に撮影したデータも届いていない

振袖をレンタル・着付けし、写真撮影するような支援も出てきているが、女性は「(撮影をやり直すことを)ちょっと考えたことはあるけど、今は考えていないかな」と力なく語った。

はれのひの問題から、もうすぐ2週間。被害者の周りでは、多くの人々が救済に励んでいる。被害者にとっては、まだ2週間か、もう2週間なのか。はれのひの実態がわからないまま、被害者は気持ちの整理がつかないまま、社会の流れや時間だけが進んでいるようにも感じる。

(文・木許はるみ)

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