就活現場を変える「AI採用」最前線 —— SNS分析スカウト、高度なAI面接、機械学習で適職マッチ

転職に就活に、AI採用時代がやってくる。

履歴書と面接の“人力”で合否を判断するのではなく、採用に関する企業や求職者の行動データなどインターネット上の情報を機械学習したAI(人工知能)が、企業と人材をマッチングさせたり、面接にまで登場したり。背景にあるのは人手不足による採用コストの抑制だ。さらに若手社員の離職に悩む企業が多い中、データの裏付けによる採用ミスマッチの防止も期待されている。

Aiロボットと握手

shutterstock

自宅で一次面接

東京都新宿区の早稲田大学近くにある、エン・ジャパンの学生向けイベントスペース。カジュアルなパーカー姿の男性が、テーブルの上に立てかけられたスマートフォンと向かい合っている。耳にはイヤフォンをし、真剣な面持ちだ。

イヤフォンから流れてくる質問はコンピューター音声。

「ゼミや部活、サークル活動、アルバイトなどで、とても苦労したことや困難な状況を乗り越えたという経験はありますか?『はい』か『いいえ』でお答えください」

「その苦労や困難はどのような状況だったのですか?」

男性は、言葉を選びながら、丁寧に答えていく。

これはエン・ジャパンが就活生サポート事業の一環として、2019年卒採用向けから始めたAI面接体験会の風景だ。採用支援事業を行うタレントアンドアセスメントが開発したAI採用面接メソッドを導入し、希望する学生向けに実施している。

「これから企業の本格導入が広がると見込んで、本番で戸惑わないようにという狙いです。企業は人手不足の中、大量のエントリー全てに対し面接をすることは不可能。けれど一次選考としてAI面接を使えば、エントリーシートで取りこぼしてきた層にも、いい人材がいればすくい上げることができる

Ai面接

AI面接体験会の様子。場所も細かな時間も服装も問われない。

撮影:滝川麻衣子

エン・ジャパンの新卒事業開発室長、林善幸さんは導入の背景を、そう説明する。

アプリをスマートフォンにインストールすれば、自宅でも“一次面接”を受けられるため、遠方の会社を受けたい学生にも助かる。面接時に、場所も時間も服装も問われないのだ。

開発したタレントアンドアセスメントによると、同社のAI面接サービスでは、これまでの採用支援事業で蓄積して来た面接のパターンをAIが機械学習し、面接での質問の引き出し方を習得。

これを元に、受験者に対しAIが質問を重ね、職務に必要な行動データを収集する。行動データの収集方法は、ディープラーニングを用いた独自技術という。

その行動データを「バイタリティ」「柔軟性」などの11のキーワード別に、出現頻度や相関性などから指数化する。この評価レポートを元に、採用企業は自社に合った人材を選ぶことになる。

AI採用は無駄のない就活につながる?

大量エントリーが起こりがちな新卒採用領域では、AI採用の導入は急速に広がりつつある。

「自分を採ってくれる可能性のある企業に絞って面接に進めるので、無駄に動かなくていい」

都内の私立大学法学部4年の男性は、2017年の就活で「OfferBox(オファーボックス)」という就活サービスを使った。

年齢、性別、大学や学部名、留学経験や部活動などの個人情報はじめ、やりたい仕事などのあらゆる情報を個人ページに登録。企業の採用担当者は、採用を検討したい学生の条件をOfferBoxで検索して、ヒットした学生にオファーを出す。学生は興味があればオファーを承認し、選考に進めばいい。近年はインターンの申し込みに使われることも多いという。

offerBox

OfferBoxの個人ページには、企業向けにアピールポイントを公開して、あとは待つ。

アイプラグのイメージ画像より

オファーボックスは、エントリーシートの選別にAIを使うのではなく、学生と企業のマッチングそのものに機械学習を使う。いわば「AI就職エージェント」だ。

採用側の企業のオファーボックスでの行動履歴、その企業の行動に近い他企業の行動履歴、そうした企業がオファーを送った学生に似た学生や、その学生の動きといった、行動データを機械学習させて、学生をリコメンド。学生17万人、約3400社分のデータを元に、採用に至る確率の高そうな企業と学生の組み合わせを、AIが選び出す。

運営会社のアイプラグは、2014年卒向けからサービスを開始。急スピードで成長し、2018年卒の学生では、就活生の7人に1人に相当する、前年比1.7倍の6万8千人が利用したが、2019年卒では10万人の利用を見込む。

公開情報から優秀エンジニアをヘッドハント

AI採用が進むのは新卒市場だけではない。

SNSにブログと、今やネット上には履歴書に近い個人データがあふれている。

2016年5月創業の「scouty(スカウティ)」は、SNSの情報などからAIが“履歴書”を作り、企業のヘッドハンティングに活用するサービス(ベータ版)を2017年5月に始めた。導入社数は約35社、採用決定人数は10数人、2018年内に正式にサービス開始する。

スカウティのサービスは、まずはエンジニアに特化。エンジニアたちは、自分が書いたプログラムのソースコードを、開発者向けのプロジェクト共有サービス「GitHub」などで共有し、プロフィールや連絡先も掲載しているケースが多い。スカウティは、GitHubの実績と、エンジニア向けのブログサイト「Qiita」やFacebookやTwitterなどのSNSの情報を組み合わせることで、優れた能力を持つエンジニアを割り出して、声かけをする。

スカウティ代表。

「旧来の就職活動は最適な手段だと思わない」と語る、スカウティ代表の島田さん。

撮影:木許はるみ

履歴書には、職歴や得意分野、「技術力」「ビジネス力」「ソーシャルインフルエンス」のスコアなどを表示する。業種ごとの退職年数分布と職歴やSNSの情報から、転職可能性の高さも載せる。履歴書は、スカウティのユーザー企業が閲覧できる。

あるエンジニアが「仕事を辞めたい」とTwitterでつぶやくと、「〇〇のソースコードの投稿を見ました」というようなスカウトメールが、舞い込むようなイメージだ。

個人の状況、キャリアに合ったスカウトメッセージを送ることで、「一般的にスカウトメールの返信率は数%と言われているが、スカウティを導入した企業は返信率が約30%、うち面談に進んだ割合は約60%と高い」と島田寛基代表は説明する。

スカウティは現在、GitHubやFacebookなど、約10種類のソースから情報を集めており、表示可能なエンジニアの情報(連絡先とスコア含む)は、3万6000件に上る。今後は、対象の職種・業種を広げ、論文やイベントの発表状況も情報源に加える方針だ。

転職希望者は本来、自身でエージェントや求人サイトに登録するが、この仕組みにより、企業の人事担当者は「転職潜在層」にもアプローチできる。

ネットワークイメージ

「人材業界は変革期にある」

AIを活用した人材支援サービスには、クラウド名刺管理サービスのSansanも2017年に参入した。「Eight Talent Solitions(エイト・タレント・ソリューションズ)」は、Eightユーザーが転職や進路についてSansanの担当者に相談できる、キャリア支援サービスだ。

Eightでは、1年間に1億枚以上の名刺が取り込まれているという。そこで得られた、登録者のつながりのある企業や業界、名刺交換の頻度などのビッグデータを、相談者の了承を得た上でAIが解析。この解析データを元に、転職をするしないも含めたキャリア支援を行うという。

Sansanの担当者は「日本の採用は、どうしても経験者の勘や知見に頼る面がありますが(Eightのサービスは)『こういうキャリアの人は、こういう転職でキャリアアップしている』といった、ビッグデータを根拠にした支援ができる。11月のサービススタートから約200人が相談に訪れています」という。

急速に広がりを見せつつある、AI採用。注目が高まるのには、従来型の採用手法への課題感があるようだ。

スカウティ代表の島田さんは、起業のきっかけを、ある友人のエピーソードを交えて紹介した。

「デザインが得意でブログを書いていた優秀な友人が新卒で広告代理店に入り、毎日深夜0時半ごろまで、エクセルの仕事をしていた。本人は『修行だ』と言っていたけど、すごくもったいないと思った。そこにデザインのスカウトが来ていたら、彼は転職していたと思う。人は自分の選択肢の中で意思決定をしがち。すると、ミスマッチが起きる。旧来の就職活動は、人と企業をマッチングさせる最適な手段だと思わない。人材業界は変革期にある

(文・滝川麻衣子、木許はるみ)

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