マイケル・コースの店頭に掲げられた、値引きの表示。
AP Photo/John Minchillo
- 不況以来、消費者は値引きに夢中だ。
- しかし、大幅な値引きは企業の利益率を低下させ、ブランドイメージを傷つけかねない。
- 売り上げや利益が低迷する中、ラルフローレン、マイケル・コース、ギャップ(GAP)は、こうした値引き率の見直しを図っている。
アメリカの消費者は値引きに夢中だ。だが、一部の有名ブランドは、その見直しを図っている。
小売業界ではここ10年、大幅な値引きが好まれてきた。不況によって価格に敏感になった消費者にアピールするためだ。だが、「40%オフ」は客を呼び込むのに役立つかもしれないが、利益率を低下させ、ブランドイメージを傷つけかねない。
これまで大幅値引きを売りにしてきた一部ブランドは、その見直しを図ろうとしている。
どのブランドが?
ファッションブランドのマイケル・コースでは2014年以来、既存店売上高が低下し続けている。店舗や百貨店などで、終わることのないプロモーションを続けたことで、消費者の目に高級感が失われたように見えたことも影響している。
マイケル・コースは現在、自身のハイエンドなブランドとしての地位を取り戻すべく、これを減らし、デパートから商品を引きあげて市場における希少性を高めようとしている。
「我々にとって、次の3つを徹底することが重要だと考えている。まず第一に、我々のブランドイメージを守ることだ」同社CEOのジョン・D・アイドル(John D. Idol)氏は、2016年の投資家との電話会議で述べた。「ご承知のとおり、プロモーションが増え、我々のビジネスにおいて頭痛の種となっている。利益率が低下しているのも、競争力を維持するために、一定の価格に合わせようとしているためだ。だが、我々のブランドが前に進むためには、これが正しいことだとは考えていない」
2017年11月に行われた同社の直近の収支報告で、アイドル氏は当該四半期の間に行われたセール日数を40%減らしたと述べた。そして、モルガン・スタンレーの投資家向けのメモによると、この戦略の有効性は証明されつつある。女性向けのアクセサリー、フットウェア、既製服の平均卸し価格は、値引きのない正規の価格で購入する意思が顧客側にあることを示している。
コーチ(Coach)とラルフローレンも、デパートでの大幅値引きの影響を受けている。
コーチは2016年、ブランドのステータスを守るため、「値引き率を減らし」、1000以上ある卸売店舗の25%を閉鎖する考えを示した。
同様に、ラルフローレンのCEOパトリス・ルーベ(Patrice Louvet)氏は2017年、百貨店から20~25%の在庫を引きあげた。同氏は、値引きはブランドにダメージを与え、消費者は「エキサイティングな」アパレルにしかお金を使わないと主張した。
「似たような商品をどんどん値引きしたところで、エキサイティングとは言えない」ルーベ氏は2017年8月の収支報告で述べた。
ラルフローレンでは、値引きの対象となりやすい過剰な売れ残りを抱えることがないよう、在庫水準を厳しく設定。直近の四半期では、前の年の同じ時期に比べ、26%減ったと報告している。
ギャップのセール品。
Mallory Schlossberg/Business Insider
ギャップやバナナ・リパブリック、オールド・ネイビーといったブランドを手掛けるギャップ社のCEOアート・ペック(Art Peck)氏は以前、セールを「チキンレース」に例えていた。
そして同社は今、3つのブランドでこれを減らし始めた。モルガン・スタンレーのアナリストのメモによると、2017年10月にはここ6年で最も多かったが、11月と12月は前の年と同水準だった。
ギャップはサプライチェーンのスピードを速めることで、セールを減らそうとしている。そうすることで、流行に素早く反応し、ザラ(ZARA)やH&Mといったファストファッションと競合しようとしている。
2017年初めの収支報告で、ペック氏は商品がデザインの審査から店舗に並ぶまでの時間を、10カ月から10週間に縮めると述べていた。
つまり、在庫水準と商品のデザインが、より需要に合ったものになるということだ。ギャップは顧客が求めるもの、求めていないものに素早く反応し、値引きコーナー行きになる売れ残りの在庫を減らすことができる。
(翻訳/編集:山口佳美)