次世代通信5Gで東京から南三陸に「ワープ」 ── KDDIとJR東が公開実証実験中

KDDI主催JR東日本協力の5G VRイベント

KDDIは東日本旅客鉄道の協力のもと、5GとVRを組み合わせた参加型イベントを実施している。

最近、「5G」という言葉をよく聞くようになった。5、6年前からスマホを使っている人であれば「4G(もしくはLTE)」という言葉は身近なものになっているだろう。5Gはその4Gに続く次世代通信規格で、国内3キャリアは2020年での商用化を目指して開発を進めている。

5Gで現地映像を同時配信、 VRで「瞬間移動」

そんな取り組みの一環として、KDDIは東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)と共同で、1月25日から27日までの間、JR上野駅で5Gの実証実験を兼ねた体験イベントを開催している。

このイベントは、宮城県南三陸町の「南三陸志津川さんさん商店街」にいる各店の従業員と店の様子を360度カメラ映像と4K映像で撮影し、ほぼリアルタイムで上野駅の会場へ伝送、上野駅ではVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用してあたかも南三陸町に「瞬間移動」したかのように体感できるというものだ。

VR体験の様子

デモの様子。体験者はVR HMD「HTC Vive」で現地からリアルタイムで配信している360度映像を見ている。マイクもつながっているため、互いにコミュニケーションが可能。

イベントの概要スライド

今回の実験の概要。5Gは商店街の撮影班と基地局の間の無線通信で利用されている。上野駅側では有線でネットワークにつながっている。

宮城産直市

ちなみに、現地でオススメされた製品は同会場の「宮城産直市」で購入可能。本イベントの体験者には産直市で使える500円分のクーポンがプレゼントされる。

5Gは、最大20Gbpsの「高速・大容量な転送速度」、1平方キロメートルあたり最大100万端末もの「多接続性」、最速1msの「低遅延性」(いずれも理論値)が特徴の規格だ。

今回の実験では、360度映像および4K映像という大容量のデータを、高速かつ遅延がない、つまりほぼリアルタイムで送れるかどうかが主目的だった。

KDDIによる5Gの解説スライド

3つの「5G」の特徴。

KDDIによるとその結果は、下り1.7Gbps、上り200Mbpsでの通信速度が計測できたという。遅延速度は300〜500ミリ秒ほどと、4Gの仕様である100ミリ秒と比べるとやや遅く感じるが、これは映像のエンコード(圧縮)とデコード(復元)に加え360度映像の整形(スティッチング)処理も含めたため。仮に同じことを4Gの環境で行えば、さらに遅延が発生するとのこと。

デモの実演では、南三陸の商店街の店員と上野駅のモデルが会話をしていた。このイベントで5Gを使っているのは南三陸からの配信のみで、上野駅側は有線LANで受け取っている。とはいうものの、実演では挨拶をほぼ同時のタイミングでできており、大容量通信にもかかわらず遅延しているような雰囲気はなかった。

5Gは身近な利便性や安全性に役立つ可能性も

イベントを担当するJR東日本IT・Suica事業本部の高島昭治課長は、今回の取り組みの狙いについて「駅や列車の中で乗客に快適な通信環境を提供するため」と語る。同社は、2017年10月にもKDDIと組んで試験車両「MUE-Train」を使った5Gの通信実験を行っている。

KDDI JR東日本の実験スライド

2017年10月にKDDIとJR東日本は5Gの実証実験を行っている。

東日本旅客鉄道 IT・Suica事業本部課長 高島昭治氏

JR東日本 IT・Suica事業本部課長 高島昭治氏。

また、JR東日本としては利用客だけではなく、自社のICT化にも5Gを活用しようと考えているようだ。

Business Insider Japanの取材に対し、高島氏は乗客の利便性以外の狙いについて「業務の革新、鉄道のICT化も進めていきたい」と答えた。鉄道はエリアが広く、沿線を含めた各地の見える化が非常に重要で「映像を用いて現地を確認するというニーズは常にある。映像がリアルタイムかつ高精細で入手できれば、保守・点検のレベルが上がる」(高島氏)と鉄道の安全性向上への期待にも言及する。

5Gは次世代スマホの高速化や自動運転技術、スマートホーム、ロボットなどの遠隔操作(テレイグジスタンス)などへの利用が代表例とされる。

もちろん、そういった技術も今後は展開されていくだろうが、JR東日本のように既存事業の効率性や安全性を高めるために活用できる技術、という側面もあるわけだ。

(文、撮影・小林優多郎)

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