がっちりと握手を交わす楽天の三木谷浩史社長とウォルマートのダグ・マクミロン社長。
国内のeコマース(EC)市場でシェアNo.1を握るアマゾン・ドットコムとし烈な競争を続ける楽天。会長兼社長の三木谷浩史氏は2018年1月26日、楽天とウォルマート・ストアーズ・インク(本社:米アーカンソー州ベントンビル)が日本とアメリカにおける戦略的提携に合意したと発表した。
提携の第一弾として、楽天はウォルマートの子会社である西友と共同で日本市場において、ネットスーパー事業「楽天西友ネットスーパー」を運営する。2018年第3四半期(7〜9月)の事業開始を目指す。
楽天西友ネットスーパーは3つの価値の提供を柱としている。「配送の拡大」は既存の西友店舗からの配送に加えて、2018年内にネットスーパー専用の配送センターを設ける方針。
記者発表の会場に展示された、楽天西友ネットスーパーの配送ボックスのイメージ。
アメリカとイギリス市場で首位の座を獲得し、日本でも勢いを強めるアマゾン。楽天はウォルマートと連合を組むことで、ジェフ・ベソスCEO率いる「ECの巨人」を制することができるのか?
楽天は2016年、国内のeコマース(EC)市場で20.1%のシェアを獲得したが、首位のアマゾン・ドットコム(20.2%)に僅差で敗れた(日本貿易振興機構・JETRO報告書)。アメリカで33%のシェアを誇るアマゾンは、イギリス市場においても26.5%を占め首位の座を守っている。
マイクを持ち記者からの質問に答える、ウォルマート・EコマースUSのマーク・ロアCEO。中央のウォルマート・マクミロンCEOの横に座る三木谷・楽天社長。
ウォルマートCEOのダグ・マクミロン氏は記者会見で、「未来の小売りはデジタルと実店舗のコンビネーションになる」とした上で、楽天が得意とするテクノロジーを活用することで、相乗効果が期待できると話した。一方、三木谷氏は、「ビジネスのスケールと品揃え、そして実店舗とデジタルのハイブリッド型を進めることが、より効果的だ」と述べ、ウォルマートとのパートナーシップの意義を強調。
協業を始めるネットスーパー事業で両社は、関東地方を中心に配送センターを設けて、配送能力を拡大していく。生鮮食品や日用品だけでなく、カット野菜や半調理食品などの簡易食品の品揃えも拡充させる。
ウォルマートがアメリカでKoboを売る
楽天とウォルマートは電子書籍(e-book) 事業でもアライアンスを組み、アメリカ市場で拡大を図る。楽天グループの「Rakuten Kobo Inc.(本社:カナダ・トロント市)とウォルマートは、アメリカ市場における楽天 Koboの量販店としてウォルマートが独占販売を行うことで合意。2018年中に、楽天 Koboが取り扱う電子書籍やオーディオブックを「Walmart.com」の利用者に販売していく。
楽天が2017年11月に発表した1〜9月期の連結決算を見ると、売上収益は前年同期比21%増加し6765億円。営業利益は59%増の1202億円と好調だったが、国内EC事業における営業利益は7%減少し、苦戦を強いられた。楽天は、販促活動を積極的に行うことで新規ユーザーを獲得しながら売上収益の拡大を図っていくとしていた。
2017年3月、米ワシントンで開かれた航空宇宙産業のイベントに出席したアマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏。
REUTERS/Joshua Roberts
アメリカでは2017年、アマゾンによる驚異的な買収が経済全体にインパクトを与えた。アマゾンは食料品スーパーマーケット・チェーンを展開するホールフーズ(Whole Foods Market Inc)を137億ドル(約1兆5000億円)で買収した。Business Insiderによると、買収後にアマゾンは、ホールフーズで販売している商品の値下げを決行。結果的に、クローガー(Kroger)などの競合企業にとっては大きなプレッシャーとなった。
また、アマゾンによる買収の余波は、ウォールマートや小売大手のターゲット、グーグルなどにも広がった。ウォルマートとターゲットがグーグルを経由したショッピングを可能にすると、アメリカのメディア各社は、「アマゾン対アマゾン以外の競争が始まった」と報じた。
楽天・本社で開かれた記者会見のステージに立つ三木谷氏は、「強力的なタッグを組むことができた。歴史的な提携である」と話し始めると、「モバイルを含めてインターネットが生活のインフラになってきている。日用品、食品を含めて(ネットで)買う時代がきている。世界を見ると、(デジタルと実店舗の)ハイブリッド化が起きている。ウォルマートが最適なパートナーであることは間違いない」と語った。
(文・佐藤茂、写真・伊藤有)
(編集部より:記事は、アマゾンによる2017年のホールフーズ社の買収と、その影響に関する詳細を加えて、更新しました)